2-13 我が家
一時間後、全ての作業を終えた俺は、皆の元に戻る。
流石に魔力を使い過ぎたか。
倒れる程ではないが、結構フラフラだな。
『魔力保管庫』を空にしてもこの有り様。
二年間頑張って貯めたんだが。
そして、地上に戻った俺が、真っ先に目にしたのは、
『………………』
「「………………」」
何故か、全員が向かい合って無言で見つめ合う姿だった。
お見合いか!!
しかも、険悪?ムードだし……。
「えーっと……これはどんな状況かな?」
恐る恐る、俺は声を掛けてみる。
すると、全員が俺に振り向く。
「……ご主人しゃま~」
双子ドライアド(妹)が、涙目で俺を見る。
ディータも、耳が垂れ下がり、プルプル震えている。
他の面々も、萎縮した感じで縮こまっていた。
状況が分からず、俺が困惑していると、バロンがバツが悪そうに苦笑して言った。
「いや、すまんな。トーヤ。ウチの馬鹿者がちとな……」
「……ランダ、悪くないもん」
ランダはランダで、頬を膨らませて、ぷいと顔を背ける。
バロンが言うには、皆が守護獣である二人に自己紹介がてら挨拶しようとした所、ランダが威圧を放って皆を威嚇したらしい。
一応、俺の知り合いと言う事で、『殺気』ではなく、態々『威圧』にしてくれたのは、ランダなりの配慮なのだろうが(守護獣ともなると、気の弱い人間は、殺気だけでポックリ逝ってしまうから)、お陰で十人は完全にそれに飲まれてしまったようだ。
……………………そういや、ランダって人間嫌いなんだったけ。
「あー……悪い。これは完全に、俺の落ち度だな。皆には、少し外で待っててもらえば良かったよ。本当にごめん」
俺は、皆に頭を下げて素直に謝った。
皆は、頭を下げた俺に慌てたが、どうにか許しを貰えた。
「ランダも、バロンも迷惑かけてごめん」
「むぅ。別に、トーヤ悪くない」
「うむ。悪いのは、此奴じゃからな」
「……うっさい、ハゲ」
「ハゲとらんわっ!!」
また二人で漫才を始めそうだったので、俺はそれを止めた。
「お詫びと言ってはなんだけど、面白いのを下に作ったから、一緒に見る?」
「っ見る!」
俺がそう言うと、ランダがパァと顔を明るくした。
表情は変わらないが、雰囲気で何となくそんな感じで。
バロンが、やれやれと首を振っていた。
相変わらずの苦労性である。
俺は、十二人を引き連れて、再び地下への階段を下る。
ある程度進んでから足を止め、俺は振り返る。
後方には、闇が広がっていた。
「……ようこそ。新たな我が家へ!」
ニヤリと笑い、俺がパチンと指を鳴らすと明かりが灯りーー一軒の家がその姿を見せた。
それは、洋風の真っ白い二階建ての家。
天井には、【照明石】と呼ばれる、明かりを点す石が幾つも壁に嵌め込んでいる。
その為、いつでも明るくする事が出来る。
当然、暗くする事も。
家の傍には、大きな池……と言うより、湖(それ位大きい)をちゃんと彼女の為に用意もした。
『…………』
「……わぁ」
「ほぅ……」
その様を見た、俺の奴隷十人はポカンと大口を開け、守護獣二人は、感嘆の吐息を漏らす。
「まだ、完全に出来上がったわけじゃないけど……良かったら中見てみる?」
ぶんぶんぶん。
ランダが、首がもげるんじゃないかと思う位、首を縦に振る。
俺は苦笑しつつ、家の玄関を開けて、「どうぞ」と皆を招き入れた。
足を踏み入れると、そこには何も無い広いホールだ。
その様子に、バロンとランダが首を傾げる。
「……これは、どうなっておるのだ?」
「ふっふっふ。実はね……」
俺は、待ってましたと言わんばかりに、嬉々として説明を始める。
「扉の全てに〈隠蔽〉が施されてて、〈認証登録〉されていない人には、その扉が見えないし、その扉を開ける事が出来ない様になってるのだよ!」
俺は、ドヤ顔で胸を反らす。
しかし、バロンの次の言葉に、ズッコケそうになる。
「………………つまりは、どう言う事じゃ?」
ランダも、意味が分からず、首を傾げていた。
「え、えっと、つまりはね……」
俺は、半笑いしながら、玄関から向かって左側の壁に近付く。
皆からは、きっと何も変哲も無い、真っ白な壁に見えてる事だろう。
その壁に俺が手を触れると、自動ドア宜しく、左に壁がスライドして、その室内が顔を出す。
『おお!』
今度こそ、皆の口から、驚きの声が上がった。
俺は気分を良くして、そのまま説明を続けた。
「この様に、俺には正確な扉の位置が分かるけど、皆にはみえてないでしょ?だから、後で全員に〈認証登録〉してもらう。そうすると、皆にも扉の位置が分かるし、それに、登録してないと扉が開かない仕組みにもなってて……」
「はいはいはい!ランダ、〈認証登録〉する!どうするの?」
俺の説明の途中で、ランダが威勢よく手を挙げ、ピョンピョン跳ねながらアピールする。
普段のマイペースな彼女にしては珍しい。
余程、ランダの琴線に触れたのだろう。
「そうだね。じゃ、先に〈認証登録〉しちゃおうか?今入ってきた玄関先の、両壁に丸石が嵌め込まれてたのに気付いたかな?そこで、登録するんだけど……って……」
言うが早いか、ランダが脱兎の如く、外に飛び出してしまった。
俺とバロンは顔を見合わせて、呆れながらも、ランダの後を追う。
俺達も外に出ると、ランダが石に手を置いて、頬を膨らませて俺を睨む。
「……何も起きない」
俺は苦笑した。
「話は最後まで聞こうね?登録するには、俺も一緒じゃないと意味無いよ?」
そう言いながら、俺は右の壁にある石に、自身の右手を置いた。
「そっちは、そのまま左手を乗せといてね?……行くよ」
俺は石に、『必要魔力量』を注ぎ込む。
多くても少なくても駄目だ。
誤差はプラマイ五。
自慢ではないが、魔力操作は得意なので(赤子の頃からやってたし)、俺にとっては朝飯前である。
俺の魔力を吸収した石が、仄かに熱を帯びて白く発光する。
すると、
ーー〈認証登録〉ヲ完了シマシターー
『っ?!』
無機質な声が、辺りに響き渡った。
因みに、この声の主は、アシスである。
「はい。これで登録完了だよ」
それを聞いたランダは、急いで家の中へと戻る。
「は、はは。もう、何から驚いて良いのやら……」
ディータが、何かを諦めた様に、乾いた笑いを漏らしていた。
その後、全員に〈認証登録〉をし終わった俺達もまた、家の中に入る。
そこで、ヤマトがとある疑問を口にした。
「……おや?そう言えば、階段はないのですか?この家、二階建てですよね?」
「お?気付いてくれた?実はこれにも仕掛けがあるんだよね~」
そういうや否や、俺はホールの隅に歩いていった。
「じゃ~ん♪これな~んだ」
俺は、何処か浮かれた気分で足元を指差して、皆に見せる。
俺の質問に答えたのは、意外な人物だった。
「……………………『転移魔法陣』?」
魔人族の男。
恐らく、喉を潰されていた子。
ここで、初めて声を聞いた。
少し高めの、耳障りの良いハスキーボイス。
他の面々も、これには心底驚いた様に、目を丸くして彼を凝視していた。
「……正解。流石魔人族だね」
俺が褒めると、照れ隠しなのか、首に巻いていたマフラーを口元まで上げて、顔半分を隠し、俺から視線を逸らす。
苦笑しながら、俺は続けた。
「さっきも言ったけど、これは『転移魔法陣』だ。勿論、転移先は……」
俺は、左手で上を、右手で下を、指で指し示す。
「……え?下も?」
「そ。上には部屋が十と、下には訓練場を作ってみたんだ」
「………………十?」
何に引っ掛かったのか、ヤマトが顔を顰めて呟く。
「?部屋は、広さも間取りも、全て均一にしてるから揉める事は無いと思うけど、後で部屋割りは、自分達で決めるといいよ」
説明に一区切りつくと、今の今まで家を探索していた(一階だけ)ランダが、いつの間にか傍に寄ってきて、
「ランダは?ランダのお部屋は?」
いきなりこんな事を言い出した。
「え?ランダもここに住みたいの?」
「うん!住む!」
即答だな。
そんなに気に入ったんだろうか。
「んー……それは困ったな。流石にランダ達を頭数に入れてなかったからな」
「…………駄目?」
ランダが、悲しそうに上目遣いで訪ねてくる。
俺はクスリと笑う。
「駄目じゃないよ。この家は、俺の力で、幾らでも改築する事が出来るから」
その言葉に、ピクリとヤマトが反応する。
「ただ、ランダはいいの?皆と同じ屋根の下は……」
「うっ……」
「あはは。なら、この隣に二人専用の家を建てようか?流石に今日は魔力が危ないから無理だけど、後日でいいなら」
コクコクコク。
高速で首を振るランダ。
まるで壊れたカラクリ人形みたいだ。
俺とランダの話が一段落したのを見計らい、ヤマトが口を開いた。
「……少し、宜しいでしょうか?」
「ん?何?」
「先程、後日なら幾らでも改築出来ると言ったのは本当ですか?」
「うん。本当だよ。よっぽと変なのじゃなければ、ある程度は問題ないけど…………何?何か気に入らない所でもあった?」
「い、いえ!そう言うわけでは!」
ヤマトが、慌てて俺の言葉を否定する。
冷や汗をダラダラ流しながら……。
いや、別に俺は殺気も威圧も放ってないよ?……俺は、ね。
「……ランダ?」
「……つーん」
ランダがそっぽを向く。
俺は、軽く溜息を吐く。
「ごめんごめん。それで?」
「あ、はい……先程、二階にある部屋は十室と言いましたよね?」
「うん。言ったね」
「………………トーヤ様のお部屋は?」
『……あ』
言われて初めて気付いたと言わんばかりに、他が驚きの声を出す。
その中には、俺も含まれていた。
「ま、まあ、別に俺はここに住むわけじゃないからね。偶に顔は出すけど……」
「……は?一緒に住まないのか?」
俺の言葉に、皆が面食らった顔をする。
「……まさか、まだあんな所に住まわれると?」
「え?え?何で?」
「一緒に住みゃいいじゃねぇーかよ」
「ですね。我々だけ、ここに住んでも意味無いですし」
「んだ。つか、奴隷が主人から離れてたら意味ねぇべ?」
それには皆が頷いて同意する。
「んー……でもなー……」
皆の言い分も、分からなくはない。
俺とて、出来る事なら、一日でも早くあの国を出たい。
「……何か気になる事でも?」
俺が渋っていると、ヤマトがそう聞いてきた。
「まあ、気になると言えば気になるかな?」
「……そっか。ま、それを決めるのはあんただ。俺達は、それに従うだけだしな」
「そう……ですね。出来れば、お傍に居てお仕えかせて頂きたいのですが……我々は、トーヤ様の意思を尊重します」
「………………うん。ありがとう」
俺もそろそろ、覚悟を決める時かもしれないな。
俺は、取り敢えずはそれを、頭の片隅にしまい込んだ。
一応、忍者屋敷的な感じと、テクノロジー?的なものをイメージして考えてみたんですが……如何でしょうか?(ー∀ー;)
間取りは次話で軽く出しますが、作者の貧相な頭では、今の所あれが精一杯(><)
でもでも、今後も改築?やらなんやらしていく予定です!
あくまで予定ですが(笑)
少しでも面白いと感じて下さったら、ブクマや評価をお願いしますm(_ _)m
更にやる気が上がりますので♪




