表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/25

2-5 初依頼

本日二話目。

「いや……あんたに頼みがある」

「頼み?」


 これからどうするのかとディータに聞いてみるが、ディータは彼女の元には戻りたくないと言ってから、そう切り出してきた。

 俺は首を傾げ、聞き返す。


「ああ。本来なら、こんな事を頼むのは筋違いだし、助けて貰って厚かましいし……何より、子供のあんたに頼むのもどうかと思うが……」

「前置きが長い。先ずはその頼みとやらを聞かないと、僕も返答のしようがないんだけど?」

「あ、ああ。そうだな……」


 ディータは、一拍間を開けて、息を吐いてから、真剣な眼差しでその願いを口にした。


「……あの女をあんたに殺して欲しい」

「ふーん」


 俺は、気のない返事をする。


「ふ、ふーんって……それだけか?」


 逆に、ディータの方が面食らった顔をした。


「だって、冗談で言ったわけじゃないんだよね?」

「そ、そうだが……少しは驚かないか?」

「まあ、これでも一応は驚いてるんだよ?ただ、予想の範囲内だったからね」

「……そうなのか?」

「目が、ね。全てが覚悟の上だと物語っていたから。分かってるよね?あなたに刻まれた【隷属紋】は、一定の距離から離れただけでなく、主人が死ねば、同様に奴隷のあなた達も長くは生きられない。そっち(・・・)の【隷属紋】の筈だ。それを承知でそんなお願いをするって事は……大方、せめて最期位は、彼女に一矢報いようって腹積もりかな?」

「………………あんた、本当にただの子供か?」


 ディータは図星だったらしく、驚きとも呆れとも取れない顔で、俺を凝視する。

 俺は、その質問に苦笑で返した。


「けど、その頼みを聞いて、僕にメリットは無いよね?」

「っ?!それは……」

「それに、あなた一人が勝手にそれらを決める権限はないんじゃないかな?他にも、奴隷の人達居るんでしょ?その人達は?」

「…………あいつらも、俺と同じ気持ち、の筈だ」

「本当に?ちゃんと確認した事あるの?」

「………………」


 俺の度重なる質問に、ディータが押し黙る。


「貴方が、どれだけ彼女を憎んでるのか知らないし、それは貴方の勝手だけど、勘違いで他の人まで巻き込むのはどうかと思うよ?」

「っだったら!だったらどうしろって言うんだっ!!」


 とうとう、我慢の限界に達したディータが、血が滲む程手を握りしめて叫ぶ。


「このまま生きて戻ったって、俺に…………俺達に明日はない!あそこは地獄だ!!あの女は悪魔だ!!あそこでは、俺達奴隷はただの物で道具なんだよ!!人権も何も無い!!俺達は生きてても死んでるのと変わらない!!また何もかも諦めて死人同然に生きろって言うのか?!お前に何が分かるっっ!!俺だって本当は死にたくない!!それでも、あの女の所にはもう戻りたくないんだよ!!けど戻らなければ死ぬ!そして、俺が死んでもあの女は生き続ける!!別の奴隷(玩具)を見つけてな!犠牲者をこれ以上増やしたくないんだ!!そんな事許せるわけねぇーだろっ!!」

「………………」


 俺は黙って、彼の独白を聞いていた。

 最後の方は、涙声になっていた。


 全てを諦めて、死人同然、か。

 それは、昔の自分を彷彿とさせた。


 今までの、思いの丈を全部吐き出したディータは、「はあはあ」と肩で大きく息をして、少し落ち着いてから、頭を下げた。


「……すまない。こんなの、ただの八つ当たりだ。そもそも、子供に…………しかも、今日会ったばかりの奴に殺しを頼むなど、どうかしていた。許して欲しい」

「……………………僕は、確かに子供だけど、将来有望な暗殺者だよ?」

「……え?」

「まあ、まだ流石に人を殺した事は無いけど。多分、大丈夫じゃないかな?」

「そ、れはどう言う……」


 俺の言わんとしてる事の意味を理解出来ずに、困惑するディータ。


「あの(ひと)を殺してあげるよ」


 俺はニヤリと笑うと、何でもないように言った。

 ディータがそれを聞いて、信じられないと言った風に、目を見開く。


「ほ、本当か?!」

「うん。但し、条件が二つある」

「じょ、条件……?」

「ああ。一つは、他の人達にもちゃんと確認を取る事。彼女がどれだけ奴隷を持ってるか知らないけど、貴方と同じ境遇(・・)の者達『全員』の了承を取る事。一人でも拒否をするなら、この話は無かった事にする」

「わ、分かった」


 ディータは、首を縦に振って頷く。


「もう一つは……これを正式な依頼(・・・・・)とする事」

「…………どう言う事だ?」

「そのままの意味だよ。成功の暁には、ちゃんと報酬を貰うって事」

「それは…………俺には、報酬を払う程の蓄えなんてないぞ?そもそも、給料なんて貰ってないしな」


 俺の条件を聞いたディータが、悔しそうに歯軋りして言った。


「ん?そんなの、彼女が死んだ時に、金目の物を盗んでくればいい話じゃない?」

「っ?!」


 さも当然のように、俺は言う。

 死人に、金目のものなんて必要ないし。

 人でなし?

 そんなの綺麗事だね。

 彼等にとっては、丁度良い慰謝料&退職金代わりになるだろうし。


 俺がそう説明すると、ディータが、鳩が豆鉄砲を食った様な顔で驚く。


「この二つを守ってくれるなら、確実に、彼女を殺してあげるよ」


 俺は今、どんな顔をしてるだろうか。

 きっと、人の悪い笑みを浮かべてるかもしれない。

 当たり前だが、俺は前世でも人を殺した事など、あるわけがない。

 しかし、俺の心は意外と落ち着いていた。

 これから人を殺すかもしれないと言うのに……。


 これは、俺にも案外洗脳が効いてるのかな?


 いや、きっとこれが俺の本質なんだろう。


 こうして俺は、依頼としてディータの頼みを聞く事に決めた。

 取り敢えず、ディータには、一度あの(ひと)の元へ戻り、無事な顔を見せる様指示した。

 最初は渋っていたディータだったが、俺が「その方が面白い(・・・)ものが見れるよ?」と言ったら、渋々ではあったが、何とか納得してくれた。


 連絡を取れるようにと、俺はディータに【通信石】を渡す。

【通信石】とは、直径五センチ程の半球の石で、対となる石を双方が持っていると、何処でも通信が出来る魔法具だ。


 因みに、俺作である。

 そんな物があると知った時に、念の為に作っておいたのだ。

 まさか、こんな所で役に立つとは思わなかったが……。


 それで、他の奴隷達の気持ちを確認したら、俺に知らせる手筈となった。


 その返答如何によって、『一週間以内』に彼女は、確実に死ぬだろう。


 その詳しい内容は、ディータには教えなかった。

 楽しみ(・・・)が減っちゃうからね。


 こうして、ディータは帰路に着いた。

 その二日後、彼から連絡を受けーー俺は、彼女を殺した(・・・)んだ。


少しでも面白いと感じて下さったら、ブクマや評価をお願いしますm(_ _)m

更にやる気が上がりますので♪

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ