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実力確認イベント 魔術

 これはマズい。魔術は・・・非常にマズい。


 僕はまだ魔術を使った事がない。

 そしてここにきてまだ召喚以外の魔術を一つも見ていない。

 どうすれば魔術を使える?どうすればいい!?


 いや落ち着くんだ、勇者桜井。授業を思い出せ!


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 共通学科【魔法、魔術】


 魔法、魔術に名称の差はあれど内容に違いはない。

 また、魔素を消費し、現実を書き換えるこの技術体系は魔素のない地球には存在しない。

 いや、名前こそ存在しているが中身はただの妄想である。


 従ってこの授業では座学とVRを使ったシミュレーションのみを実施する。


 異世界においてのみ使用可能なこの技術は、その殆どが呪文詠唱、魔法陣といった手法で使用される。

 だが帰還者の報告によって明らかになったのは、全ての魔法、魔術は仕様者の脳内で構築され

 魔素を介して発現するもの、という事である。


 元魔王、高科先生(女性:24歳独身)は高らかに宣言された。


「イメージだ。イメージこそが魔術の根幹!己の魂を燃やし、情熱を注ぎこめ!

 魔術は貴様の内から生ずるのだ。そうだ、全てを燃やしつくせ!!フハハハハ!!!」


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 イメージ、そうイメージだ。やれる、僕はやれる!


「それではこちらへどうぞ」


 金糸で縁取られた高そうなローブ着た宮廷魔術士の案内でゾロゾロと中庭の端に移動してきた。

 そこには複数の木でできた的が設置されている。


 ふと王の様子をうかがうと、彼はこころなしか気の抜けたような表情をしている。

 何故リラックスしているのだ。こちらは必死なのに・・・。

 おそらく剣術で見せた実力から、魔術はからっきしだと予想しているのだろう。

 魔術の使えない僕を晒しものにしようしているのか。忌々しい王族め!


「ここからあそこの的に向かって魔術を放って下さい」


 的から15メートルほど離れた位置で魔術士が告げた。

 落ち着け、失敗は奴隷化の第一歩だ。訓練通りにやればきっと出来る!

 炎、高科先生がおっしゃったように魂を燃やす炎を迸らせるのだ!内なる魂に火をつけろ!

 自己暗示を続けていると、ふと身体に不思議なエネルギーが流れるのを感じた。

 これが・・・魔素か。これはVR訓練の感覚と同じだ。VRの再現度は完璧だったのだ。

 よしいける、いけるぞ!


「ファイヤーーーー、ボーーーーーーールッ!」


 突き出した両手の間からバレーボール大の炎の玉が生まれ、的に向かって吸い込まれるように飛んでいく。

 的に直撃した炎は大きな音と共に爆発、炎上した。

 木でできていた的は燃えながら無残に弾け飛び、あたりに散らばっていた。


 どうだ、王よ!

 またもや歓声が響き渡る。


「なんと、勇者は魔術も使えるのか!しかも無詠唱であの威力!

 伝説の勇者は魔法のない世界から来ると予言されていたが、あれは間違いであったか!!」

「旦那様最高です!!」

「すごいぞ勇者殿!」

「ファイヤーー、ボーーーッ!」


 おのれ白々しい!

 自然な流れでここまで連れて来た癖に!

 晒しものにできないとわかったらあっさり手のひらを返して褒めちぎる。

 あと最後のは宮廷魔術士の人だな。馬鹿にしているのか?

 うぬぬ、なんという傲慢!なんとい(略)


 憤懣やるかたない僕を余所に王たちは魔王討伐に目処が立ったと涙を流して

 喜んでいる(ように見える)。


 こうして初日の第一関門である謁見と、第二関門の実力確認イベントは

 終わりを迎えたのであった。


 先生、疲れました・・・。

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