その2、目的と現実と本来の姿
こんにちは、3日ぶりくらいに更新いたします!
今回までは前回同様の3人でお送りさせていただきます。
誤字、脱字などありましたら申し訳ありません。
「おっはよー!!!」
シャッ、とカーテンが開かれ、何者かが勢いよく腹の上にダイブをかます。
とんでもない不意打ちの激痛に、思わず死を覚悟した。
「ふぐっ!?な、な、なに、何なの!?」
「あはは、起きたね!おはよう!」
激痛を感じた腹の上には、昨日の赤ずきんが楽しそうな表情で座っている。
「いや、なんで入ってきてるの!てか、何で入れたの!何これ、新種の寝起きドッキリなの!?」
絶え間なく溢れ出てくる疑問が、次々に口に出てしまう。
カーテンが開いたことで、朝日が差し込んできていることから朝には間違いないのだろう。
……いや、問題はそこではない。
この子はなぜここにいる。
その前に…、鍵は閉めたはずなのに、どうやって入った。
そして、一体これはなんの行事なんだ。
「どうって……鍵しまってたからちょっと爪楊枝でいじくっただけだけど…」
「それピッキングだろ!?ってかピッキングに爪楊枝使うんだ!?ってかピッキング!?」
「朝から賑やかな人だなぁ」
「いやどっちが」
はぁ……と小さくため息をつく。
この時点でおそらく夢ではないんだろう。
……一夜を明かしても目が覚め無いわけだし、
…なにより…………
……痛い。
「こら赤ずきん、またルインくんを困らせて。ごめんねほんと。赤ずきん、あんたもアイドルだってんならこっちでもちゃんとしてよね」
またしても無断訪問してきたアリスに言われ、「え~でもなぁ~」と赤ずきんはぐちぐちと呟く。
……?
…………ん?
「……アイドル……?」
アリスは、知らなかったのね、といった顔をして僕を見た。
この子がアイドルとは、どうやっても理解し難い台詞だ。
「あのね。あなたきっとここの住人のこと、へんな奴らだと思ってるでしょう」
「…………すいません」
「でも、ここを出たら普通の一般人だから」
「へ?」
一般人、とはどういうことだろうか。
まさか、ここを出たらこの人達が突然平凡なサラリーマンに変わるとか……?
いやいやいやいやいや!!!
流石にそれはないよな?
そんな夢もクソも無いようなもん見たら、夢でも僕は女の子を信じられなくなる。
「……外、出てみる?」
アリスは玄関の方を向きながら、投げかけてきた。
…どうか、この想像が当たりませんように。
「外かぁ~!やったぁ!」
赤ずきんは大喜びで「支度してくるね!!」と駆け出していく。
あの格好で一体なんの支度をするというのだろうか。
「……じゃ、まず私から行くわね」
そういって、アリスはアパートの敷地から完全に出る。
……あれ?別に何も変わってないような…。
「ほら、赤ずきんも」
「うん!」
続いて赤ずきんも。
…やっぱり、特になにも変わっていない。
一般人っていって、まさかあの格好で普段過ごして…
「ルイン君も。早く」
「え?あ、……」
恐る恐るだが、自分も敷地から体を離した。
その瞬間、一瞬だけ視界がグラリと揺れる。
意識が飛びそうになるのを堪え持ち直すと、そこには見知らぬ2人の少女が立っていた。
「…………ん?」
「ルイン君、外でも中でも変わんないのね」
「ほんとだー!」
……まさか。
…まさかとは思うが。
このふたりが…………。
「……あの、2人は……赤ずきんと……」
「アリス。疑ってるってこと?」
「いっ、いいいいえ断じてそんなことは!?」
「あはは、面白いね~」
そう簡単に、信じられるようなことでもない。
僕の二つ目に映っているのは、さっきとは全く違う雰囲気の、ツインテールに制服を着た高校生くらいの少女と、髪の毛をおろし地味な服を着た少女。
「あと、アリスと赤ずきんはあっちでの名前。私はライラって言うの」
「ん?アリス?ライラ?お、おう……」
余計ややこしくなってきた。
姿は違うわ名前も違うわ、……ほんと、どうなってるって言うのだろうか。
「あのね、私はシェノっていうの!」
「シェノ……?シェノって、どこかで…」
その名前には、聞き覚えがあった。
知り合いではないだろうが、何処かで耳にしたことのある名だ。
「だから言ったでしょ、シェノはアイドルだからそりゃ知ってるだろうね」
「あっ……!」
そうだ、最近やたら世間を騒がせているという、人気急上昇中とかいう天才アイドル……シェノ。
歌もダンスも完璧で、他人への気遣いも完璧なんだとか。
……いや、さっきまでのを見る限り信じられないけどな。
「私たちはね、アリスや赤ずきん本人じゃないの。その、生まれ変わりなのよ」
「生まれ変わり……?」
「そう。本当はそんなもの必要ないんだけれど。何だかね、童話のお話をめちゃくちゃにいじる奴が現れだしたらしくて。童話の登場人物達は、その世界から消されちゃったらしいのよ。それで、私たちに生まれ変わった。生まれ変わりの私たちは、この連鎖をとめて、童話の物語を元に戻さなくちゃならない」
アリス……いや、ライラの顔つきは真剣そのものだった。
嘘ではないのだろう。
…しかし、どうしたものか。
この2人は、確かに童話のアリスと赤ずきんの生まれ変わりらしいが、僕は。
僕は別に、生まれ変わりでもない。
いや、もし仮にそうなのだとしても、そんな記憶はないし、このアパートに入っても姿が変わらなかったのなら、生まれ変わりではない、そういうことなんだろう。
……だとしたら、僕はどうしてここに呼ばれたんだ?
第一、こんな非現実的な場所に普通の人間を連れ込んだって、何ら力にもならなければ解決に向かうこともない。
いや、そもそもこのアパートとこの人たちはいつから……。
「……真剣ね、ルイン君」
「…いや別に……」
「私たちもね、最初は何にも知らなかったの。ある日突然、フードをかぶったシレーナって女の子に会って、ここの鍵と、今の話を聞かされてね」
「え?そうなのか……」
シレーナ。
彼女は一体何者なんだろうか。
どうして、僕に鍵を渡したのだろうか。
ライラの話によると、今現在このアパートには、僕ら三人を含め9人の住人がいるという。
僕以外は、全員童話の登場人物達の生まれ変わりなんだとか。
「……まぁ、あんまり深く考えなくていいわよ」
ライラがそう呟いたところで、僕はとある……というか、1番重大な疑問に達した。
「ねえ、君たち、ここにいるあいだ家の人とか生活、どうしてるわけ?」
そう。
時間の経過についてだ。
僕は家もなく、昨夜何事もなくここで夜を明かしたが、ほかの人は。
家庭を持ち、日常生活をもっているだろう。
特に聞く限り、シェノなんてアイドルだというじゃないか。
国民的なアイドルが、何日も何日もここで過ごしていたなんて言ったら、家族はおろか業界やマスコミ、警察が大騒ぎになるはずだ。
そんな疑問を打ち明けると、ライラはそれが当たり前かのように、
「だって、ここは時間なんてないもの」
と告げた。
「時間が……ない?」
そんなはずはない。
だって、現に僕らは夜をこのアパートで明かしたのだ。
確かに、時間は経っていた。
「考えてもみて。ここは童話の世界。現実に時間の経過なんて、何にも影響しないの。"ここの中の時間"は経つけど、ここでいくら時間が経とうが、現実の世界は1秒たりとも進みはしないわ。だって、"いる次元が違う"んだもの」
「…………」
ライラの話は、今の僕でなければ理解しきれていなかっただろう。
童話の世界。違う次元。それぞれでの時間の経過。頭が狂いそうだ。
「私たちは、ここでやるべき事をおえない限り…家に帰る訳にはいかないの」
「……どうして?」
「…だって、これは……私たちの、問題だから」
「ねえねえ!難しい話はよしてさ!みんなに挨拶しにいこうよ!ルイン、まだ私たちしか知らないでしょ?」
突然、さっきまで黙って話を聞いていたシェノが、そう提案した。
……たしかに。
今はどうせ、理解出来ないんだ。
これからお世話に……なるであろうここの住人達に、挨拶でもしておくのが、今の僕がやるべきことなんだ。
「よーし!!それじゃ、戻ろっか!!」
ご閲覧、ありがとうございました!
次回からはどーんとキャラが増えるので、
次回は本文投稿の後、登場人物紹介の会を作らせていただきます。
それでは、また次回!
4/22 サブタイトル脱字修正
ご迷惑をおかけしました。