その1,ようこそ、童話アパートへ。
こんにちは。
早速ですが、序章の前回に続き、1話を投稿させていただきます!
まだまだ文才に疎い私ですが、よろしくお願いします。
「ここか……」
1km程歩き、それらしきアパートを見つける。
大胆にも「童話アパート」だなんて看板掲げて、しかもある程度綺麗な建物。
「ここの、103……だったっけか」
鍵のうらには、103と彫り込まれている。
…随分と古い鍵だな。
アパートだけ改装でもしたのだろうか。
「……!?」
部屋の前に移動し、目を疑った。
表札には、確かにRuin's roomと書かれている。
……どういうことだ。
神に誓ってここは僕の家では無いはずだ。
…彼女は、僕に何を求めてるというんだ…。
チビも不安げな声でにゃう……と鳴く。
「あれ~?もしかして、今日から引っ越してくる人って、あなた?」
「……え」
ひょこっ、と隣に現れたのはまるで童話に出てくる赤ずきんの様な格好をした少女。
……変わった、コスプレ……だな。
「シレーナさんって人に、会ったんだよね?」
「え、あ……まぁ」
この子はあの不思議な少女のことも知っているのか。
何か、他にも聞けるかもしれない。
「じゃあ……これからご近所さんだねっ!私、101の赤ずきんだよ!よろしくね!」
「赤ず……!?あ、あぁいや、ルインだ。よろしく…………?」
「わー!猫ちゃん!可愛いねぇ~♡」
「……あ、うん…(聞いてないなこの子)」
よろしく、なのか。
この部屋は…本気で僕の部屋だというんだろうか……。
扉の前で立ち止まる。
横にいた赤ずきんの、
「入らないの?」
という問い掛けに、恐る恐るドアノブを回し、中へと足を踏み入れた。
「わー!綺麗!シンプルでとってもいいね!」
「いや、なに自然に入ってきてんだよ!?」
まるで友達の家みたいに、当たり前に部屋を徘徊し始める赤ずきん。
いやいや、初対面だぞ、僕ら。
そんな僕をよそに、赤ずきんは「タンスだ~」「押入れ何もないねー」などと口にする。
…この子、社会でやっていけるのか心配だ…。
「こら、赤ずきん。初対面の人に失礼よ」
「んあ、アリス~」
嫌な予感がした。
ゆっくり後ろを向くと、案の定。
そこには、まさにあの例の国のアリスだろそれ、といった格好をした少女。
……おいおい、このアパート、コスプレ流行ってんの?
というか、日常生活で常にそれなの?
頭の中は、突っ込みどころ満載と言わんばかりに謎が溢れに溢れてくる。
「あぁ、ごめんなさいね。この子、こういう性格だから。私はアリス。ここの105に住んでるから、よろしくね。ルインくん」
「!?なんで僕の名前……」
「表札」
「なるほど」
それにしても、シレーナという少女のお願いといい、このアパートといい、その住人といい……。
今日は、本当におかしい。
最近は依頼も多かったし、疲れてるんだろうか。
……あ、布団、あるんだ。
「にゃあ」
「チビ……てか、アパートってたけど猫はいいのかな……」
普通、動物ってアパートに入れないものなんだろ?
ここの住民は何も言わなかったし、何より……
「管理人……いないじゃん…」
こんな大層な時間経ってそうなアパート、管理人室すら見当たらなかったがまさか無しで今までやってきたのだろうか?
いやいや、そんなの経営していけるはずが…
ってか、もしいたのなら僕無断で入った訳だけど……お、怒られたりとかしないよな?
あ、いや、でも一応鍵は貰ったわけだし、その人のことを知ってる子もいたし、来たら既に表札もあったし……
「細かいことはいいんだよ、きっと」と言ったような顔で、チビが目の前に歩いてくる。
……まぁ、その時はその時、だろうな。
元々、ここの住人出ないことは事実なんだから。
何か言われたのなら、素直に出ていけばいい……、だろうな。
「とりあえず、今夜は寝させてもらうか」
布団の他に、まるで猫の存在を知って用意されてたかのような小さい毛布があった。
チビをそれでくるんでやると、パチン、とあかりを消した。
ーーーーーーーー
月が、とても美しく輝きを放っていた。
その月以外は何も映し出さない真っ暗な闇の中、1人の幼い少女が立っている。
迷子かな?
それなら、家に帰らなきゃ。
こんなに暗いんだ。
きっと、君の家族が心配してるよ。
「……許さない」
え?何を、言ってるんだ。
「私の父は、お前に殺されたんだ」
は……君の、お父さん?
いや、知らないよ。
僕は、そんな……。
「父は、私の唯一の、家族だったのに」
いや、だから……
「貧乏で、一文無しの私から、お前は唯一の家族を奪った」
……一体、なんの……
「人の、ゴミめ」
…!?
君、まさか……あの時の……!!
「ゴミはゴミらしく、街の道端で死んじゃえばいいのに」
なっ……!!
ちが、僕は!!
「そうして、道行く人はゴミのことなんか見ずに、踏み付けていくの」
やめろ、やめてくれ!
ねえ、話を聞いて!
「…………………………人殺し」
待って、違うんだ!
僕の話を……!!!
ーーーーーーーー
「っ待っ……!!!!」
額から、汗が垂れる。
……どういうことだ。
なぜ……
なぜ、あの子が夢に……。
「…………くそっ…」
最悪だ。
……あぁ、あの子は、僕を恨んでいる。
……ごめんよ。
違うんだ。
……あれは、事故だったんだよ……。
ご閲覧、ありがとうございました!
これでアパートの生活が始まり、ようやく(?)本編に入ることができます^^;
もう少しキャラクターが出てきたところで、その時点での登場人物の紹介をしていきたいと思います!