孤独な暗殺少年と不思議な少女
はじめまして。
今回初めて投稿させていただきます。
舞台は童話の世界……ですが、イメージにあるような可愛らしい雰囲気のお話というわけではなく、時折暴力的なシーンも含みますので、苦手な方は閲覧をお控え下さい。
語彙力に乏しい私ですが、暖かい目で目守って下さると嬉しいです。
また、本作の主人公は、15歳の孤独な殺し屋(悪人に限る)の少年です。
このお話後に物語に登場予定のキャラクターたちは、全て童話のキャラクターにそった見た目の設定です。性格は違ってきますが!^^;
では!よろしければご閲覧下さい。
ジャリ、と微かに足音が漏れた。
音を聞き取ったらしい男は、バッ後ろを振り返る。
その瞬間、背後から胸を貫く鋭く細いナイフ。
途端、男は小さく声をあげた。
そして、それは勢いよく引き抜かれる。
状況を理解していないのか、男は先程から自分の胸を見つめている。
あぁ、これでは痛みに苦しむだけだ、可哀想に。
少し経って。
ひゅうひゅうと、状況を理解しはじめた男が過度に息をする。
そして数秒もせずに、倒れた。
「……これが、過去に数百人を殺した男……」
実に呆気ない。
こんなにも簡単に死ぬような男に、罪のない命は犠牲になった。
あぁ、憎たらしい。
あぁ、汚らわしい。
そんな悪魔、この世にいらない。
罪の無い人を殺しておきながら、苦しまずに生き続けるのなんて誰が許すのか。
それならこんなもの、犠牲者と同じ苦しみを味わい、同じように死んで。
そうして罪を償えばいい。
こいつはどうせ、地獄行きだ。
地獄はとても恐ろしい。
現世で罪を犯した人物を、絶望の果まで追い詰める、それは実に……滑稽な場所。
これまで当たり前に罪を犯して来たものなど、それくらいの苦しみを味わってもらわなければ、腑に落ちないだろう。
そして、彼等罪人は己の犯した事の重大さに、ようやく気付くのだ。
後戻りなど出来ないと、これは自分のしてきたことが返ってきたのだと。
そこまでしても自己を一番に考える阿呆な輩は、きっと閻魔の大王が直々に罰を下すことだろう。
あぁ、考えただけで滑稽だ。
早く地獄に落ちればいいのに。
「…サヨナラ、哀れで無価値な最低野郎」
吐き捨てるように地味な台詞を残し、その場を去る。
空はもう、既に夕焼け色に染まっていた。
「…そろそろ、帰るか。」
と、肩に乗るチビに話しかける。
チビ、というのは、数ヶ月前ここらの路地に捨てられていた黒猫のことだ。
拾って介抱していたら、懐いて離れなくなったというありきたりの状態なわけで。
「にゃあ」
案の定、チビからは嬉しそうな返事が返ってきた。
帰るといっても、そんな大層な場所、ないけれど。
近くの大川の橋の下に住み着いている。
僕には家はない。
家族もなければ、名前もない。
それは物心ついた時からだから、15になった今、別段気にもしないし苦でもない。
……名前はないと言ったが、本名がないだけで、呼び名はある。
……「ルイン」。
それが僕の呼び名。
幼い頃、世間で名の知れた殺し屋に拾われ、育てられた僕は、当たり前のようにその意思を引き継いで殺し屋となった。
初めて人を殺した日、その殺し屋が僕につけた名前。それがこの名前だ。
殺し屋は、……もう、他界したけれど。
「快楽の為に人を殺すな。世間を汚す悪しき悪魔を殺すのだ」
死ぬ間際、殺し屋が伝えたこの言葉。
今は、これを守りながらただ仕事をこなす。
それが、僕の日常。
「…はぁ」
過去をほじくり返すことはやめよう。
そう思ってため息をついた時だった。
「幸せが逃げちゃいますよ?」
「うわああぁ!?!?」
突如、背後から聞こえた澄んだ声に、驚いて飛び上がる。
後ろにいるであろう相手から距離をとり、ナイフに手を当てる。
「…………女の子…?」
そこにたっていたのは、大きなフードをかぶった……対して僕と歳も変わらなそうな少女。
「警戒しなくて大丈夫です。私、貴方を傷つける気もなければ、通報するつもりもないですし。だから、警戒しないで……」
「……君は…?」
「私、シレーナといいます。あなたに、お願いがあって参りましたの」
「……お願い……?」
こんな純粋そうな少女が、僕になんのお願いだというのだろうか。
普段から殺しの依頼しかこない、こんな僕に。
「……救って、欲しいのです。童話の世界を」
「…………は?」
童話の世界を救う?
なんともメルヘンな言葉だろうか。
ファンタジーの世界じゃあるまいし、
この少女は……正気か……?
「この鍵を、貴方に差し上げます。ここから東に1km程進んで頂ければ、アパートが見えますわ。その、103号室のキーです。とりあえず今は、ここに行ってください」
少女はどこからか鍵を取り出し、僕に手渡す。
…ますます、僕には訳が分からない。
理解し難い状況に陥ると、人間というものはこうも自由がきかなくなるものなのか。
「……いや、ちょ、僕は何を……」
「…詳しくは、そこに行けば教えて下さる方がいらっしゃいます。……どうか、お願いします」
「は、そんな……って、え……?」
顔を上げると、そこにはもう少女の姿は無かった。
探すことはしない。
そんなの時間の無駄だと理解してるし、そんなことまでする理由もなかったから。
疑問はある。
だが、分からないことは、いずれ分かればそれでいいのだ。
今、目的もない僕にとって、この鍵は好奇心を擽る。
「…まぁ、行ってみるくらい……いいかな」
そうひとりで呟くと、僕は東の方面へと足先を向けた。
ご閲覧、ありがとうございました!
物語はまだ始まってもいないくらい序盤ですので、つまらないと感じてしまったら申し訳ないです……!!
こういうお話を書くのはとても好きなので、ちょくちょくとまたすすめていこうと思います。
まだ使い方もなれていない初心者ですが、どうぞよろしくお願いします!
誤字脱字、あったらすみません!