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《樹花草綴り》

恋し金木犀

作者: 藍蜜 紗成

 ――――――恋を致しました。


 貴方はいつもこの道を友と共に歩いていました。

 帰り道なのか、行く道なのか。

 この道を通る貴方を見るのが、私の幸せでした。


 私に「いい香りだね」と、優しい笑顔で言って下さいました。

 夏の名残の半袖が長袖になり、風が冷たく吹いてきても、私は貴方を待ちました。


 貴方の好きな香りをまとって……。

 叶わぬ恋だとわかっています。

 声をかける事も、この愛しい想いも。

 きっと間違いなのです。


 それでも貴方が笑うから、私は、私は。


 届かぬ事は、わかっているのです。


 貴方の唇が優しく私に触れてくれても、私には返すぬくもりはありません。


 叶わぬのなら、何故恋などしたのでしょうか?


 苦しい、悲しい。

 辛い、触れたい。


 泣けぬ私の代わりに空が泣きました。

 雨粒にこの気持ちが流れてしまえばいいのに。


 やがて来る寒く静かな白い冬。

 越えて私は咲くでしょう。

 貴方を想い咲くでしょう。



「あぁ。いいにおいだと思ったら、今年も咲いたんだな」

「何が?」

「これ。好きなんだ、この香り」

「ふーん。早く行こうぜ。電車遅れる」

「あぁ、わかってる」



 ――――――――――――――――叶わぬ恋を…………致しました。







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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白いですね。小さなオレンジ色が、可憐で慎ましく思えますよね。 [一言] 実は私は、金木犀の花を見たことがあったのか、いつも、青々とした葉を思い浮かべてしまいます。
2014/10/16 15:03 退会済み
管理
[良い点] 情景が浮かんでくるところが素敵です。 [一言] 確かに、金木犀の持つあの濃厚な香りは、成熟した女性を感じさせますね。 片恋の恋情が、情念にまで変化しそうなそんな危うい感じを受ける、想像させ…
[良い点] 表現が秀逸で、優しく、あるいはせつなく、いい詩を読んだような感覚になりました。 [一言] 確かに叶わない恋ですね……。いや、しかし擬人化という反則技も。
2014/10/15 16:22 退会済み
管理
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