清風高校には変妖探偵部がありまして
部室前。
俺は少しもようして明華姉ちゃんを先に行かせて、只今ちょうど着いたところ。
扉にはでかでかと変妖探偵部と書いてある。
ここの学校。清風高校は妖怪や変者が大半の学校だ。
もちろん俺も妖怪の類だ。
しかしながら妖怪とはなかなかに危ない。
今回の事件を例にしよう。
今回の被害者はケットシー。つまり日本で言うと猫又だ。
猫又はその可愛らしい風貌から変態野郎共に熱狂的な支持がある。
だからそれを売りにしてアイドル活動をする猫又も居る。
結論。今回の誘拐も男性に絞られ、さらにアイドルファンの仕業………がまともかな。
「ふぅ、これで早く帰れる………とでも思っているのか?」
後ろから少しだけムスッとしたような声が聞こえた。
「はぁ……さとりの因子持ってねーのになんで分かるんだよ。秋瀬」
俺は扉のドアノブをガチャりと回して扉を開ける。
「柚瑠。僕は何年お前の幼馴染みやってると思ってんだ。かれこれ十年だぞ?十年」
秋瀬は小言をネチネチと部室に入っても口から垂れ流す。
なんですか?お前は俺の母ちゃんか?
俺はそう思いながら小柄な秋瀬の頭に手を乗せる。
「はいはい分かったからその身長も十年変わらないのも分かったから」
「んあーーーっ!!!頭に手を乗せんなーっ!!」
「おっと」
わたわたと手を振り回しながら俺の手を振り払う。しかし俺は華麗にそれを避ける。まぁ何時ものことだからな。
「そうだぞっ!手を乗せるなら私の手の上だろうがっ!!お手っ!!」
「今のは聞かなかったことにしよう。幻聴だ」
俺はこの良く分からないタイミングで現れた竹下家の長女こと、マッド菜園ティストの竹下葛葉だ。
ちなみにマッド菜園ティストの菜園とはクズ姉ちゃんの変者の能力。花草変則は草や花を自在に操り、さらには植物の言葉を聞くことかでき、それ故に彼女の植物園がとんでもない事からマッド菜園ティストと彼女は呼ばれている。
「柚瑠君、最近来なかったのにそれは私に対して酷いんじゃないか?」
「その酷い頭を何とかしてくれたら何とかするわ」
俺はグズ姉ちゃんをさらっとかわして自分の席に座る。
教室の約半分の部室は四人で少し丁度いいくらいで、まぁなんとも言えない落ち着く感じがある。
俺は割とこの空間が嫌いではない。
「おーいっ!!新情報だけど忘れたぁー!!!」
………しまった。馬鹿を1人忘れてた。
「あらあら、どうしたの?由衣ちゃん」
俺の後ろで紅茶を入れていた明華姉ちゃんがクスッと笑い市川に紅茶を渡す。
「おうっ!それがさぁ事件の捜査をしていたらよぉ、なんか変なんだよ」
「はぁ?んだそれは俺達が解決してる事件自体がおかしな物だろうが、それ以上におかしいってぇのはクレイジー過ぎんだろ」
まったく、何を言っているのかしらこの子は………って言っても若干引かっかる事はある。
それは、昨晩に事件が起きて依頼書が今日来るのが既におかしい。
なぜなら普通は俺達のところに依頼書が来る前に警察が介入するからだ。
そして警察が人間性の事件なのか変者や妖怪の事件なのかを査定して、変者や妖怪の事件は俺らの所に来るっていう流れのはずだ。
それなのに、この対応は異常すぎる。
俺は机の鉛筆を一本とってクルッと一回転させる。
「柚瑠、何か分かったのか?」
秋瀬が隣の席で口を開く。
「ん?あぁ、手順が変だなと思っただけだよ。クズ姉ちゃん、冴島さんからなんか聞いてないの?」
俺は窓のところで植物を弄っていたクズ姉ちゃんに声を掛ける。しかし何も言われていないのか首を振る。
ふむ、すると俺の出番だな。
「市川、頭貸せ」
「ん?おうっ」
俺は市川を手で招き、俺の隣にある丸椅子に座らせる。
なにせお馬鹿なコイツが忘れた記憶を知らなきゃなんのでな。
俺は市川の頭に手を乗せて集中する。
そして俺は目を閉じて市川の記憶の中に入っていく。
ったく………こいつの頭ん中は戦闘脳だほんとに。
そんなかを掻き分けて行くと、目的の記憶があった。
それは、この学校の女子生徒の会話だ。
会話の内容は溜息が口からこぼれそうな内容だった。
しかし、これも証拠だ。とりあえず戻ろう。
俺は来た道を引き返し、光に手を伸ばそうとした時だった。
目の前に泣きじゃくる小さな少女……いや、幼い頃の市川が写った。
…………こういうのは見ていい物じゃない。誰だって嫌な過去を持つものだ。
俺はそれを払い除け、意識を開放した。
「ふぃ〜………でだ、コイツの頭からは貴重で怠惰な記憶を見つけたぞ」
俺がそう言うと皆は頭の上に?を浮かばせた。
「ゆーちゃん怠惰なってどういう事?」
「そうだぞ。怠惰ってところが引っかかる」
明華姉ちゃんと秋瀬に問いただされる。
まぁ落ち着きなさんな。
「市川の記憶によると、被害者は昨日の帰り友達と居たらしい」
皆がさらにポカンする。
「そうだ!確かそう聞いたんだっ!」
隣でクルクルと丸椅子で回りながら市川が言う。
これぐらい覚えとけよっ!アホっ!
「でだ、柚瑠。私にしたらそれは普通の事じゃないのか?」
グズ姉ちゃんが紅茶を啜りながら部室のソファに座る。
「いや、そのあと続きがあるんだ。被害者はそのあと警察官の父親に会っているんだ」
それを聞いた途端秋瀬が手を挙げる。
「それって刑事?それとも普通に交番に居る人?」
「すまん、そこまでは分からなかった。でもこれは厄介だ」
まだ決め付けるとかそこまでは行かないが……相手は警察だ。
揉み消される可能性もあるしかなり危険だ。
これは冴島さんに言わないといけない。
そう思っていたらクズ姉ちゃんが口を開いた。
「柚瑠君、これはやはり只事じゃない。私はこれから冴島さんの所に行ってくる。そして他の皆は聴取を始めていてくれないか?」
皆がそれに頷く。
「柚瑠君、私と冴島さんの所に行こう。柚瑠君が居ないと話にならないからな」
「了解」
そう言って俺はクズ姉ちゃんの後ろを付いて行った。
竹下葛葉
18歳
清風高校三年
いつも凛としていて周りの受けはいいが、内心は弟と二人だけになると急に弱気になり甘えたがりな一面を晒す。そして変者でもあり植物と会話が出来る
スタイル 変者 植物変則