普通の中学生って、なんだろう。
「ん?なーに、こっちゃん」
くいくい、と私の袖を引っ張る存在。
自称森の妖精は、どうやら話すことが出来ないらしい。
とは言っても"キィ"や"ピピィ"など、奇声とも鳴き声とも取れる音は発せられるようだ。
発せられたところで、私には何を言っているのか分からないけれど。
「あー…、もうこんな時間か!」
朝7時30分。
家から学校まで30分ほどかかる中学校へ行くには、そろそろでないと間に合わなくなってしまう。
その事を伝えようとしてくれたであろうこっちゃんの頭を撫で、急ぎ足で玄関を飛び出す。
「いってきまーす!」
真新しいブレザーに、真新しいスカート。
そう。今日から私は中学生だ!
ドキドキ感とワクワク感。
それに加えて、私には不安が募る。
友達が出来るかな、勉強についていけるかな、なんて普通の子が抱えそうな不安ではない。
「…学校では、話しかけないし返事もしないからね。いーい?こっちゃん」
小学校では大変な目にあった私。
こっちゃんと話をしている私を見て、クラスメイトは"気持ち悪い奴"と形容した。
当然のことだと思う。
クラスメイトが一人で話をしているのだから。
まるで、そこに誰かがいるかのように。
そんな小学生時代を反省し、人前では話しかけないことに決めた。
中学校も無理を言って、少し遠い場所にしてもらった。
普通の女の子になるためには、小学生時代の私を知っている人がいない場所の方がいい。
そう思ってのことだ。
「よし、もう一つの方も気をつけないと」
もう一つの方。
私には、こっちゃんのこととは別にもう一つ気にしていることがある。
それはーー