森の妖精、こっちゃん。
「ゆい、どこを見てるの?」
「う、こっちゃん?」
ーこっちゃん。
私が2歳頃から見え始めた、自称森の妖精だ。
40cmほどの身長で、性別は不明。
そもそも妖精という存在に性別があるのかどうか…定かではない。
外見としては、目がボタンのような形状をしており、葉っぱや布切れのようなもので体をまとっている。
まさに"人形"と形容するのにふさわしい感じ。
そんなこっちゃんは私と1つ上の従姉妹にしか見えず、母親を含めた大人たちには一切見えなかったようだ。
自分たちには何も見えない空間を指差し、何かと会話でもするようにキャッキャと笑う私たち。
私の母親と従姉妹の母親は私たちを心配し、病院へ連れて行ったこともあったらしい。
「ちっちゃい子にはたまにあるけぇねぇ。美香子もそうじゃったし、心配せんでもええよ。そういえば、雪子は違ったかね」
病院で"問題なし"と診断された私たちを連れ、お婆ちゃんに顔を見せに行った時のこと。
蛙の子は蛙ということなんだろうか?
私の顔もどちらかといえばお婆ちゃんや母親の姉に似ていることもあり、隔世遺伝というものなんだと思う。
ただ、そんな従姉妹も物心がつき、小学校に入学する頃には"こっちゃん"と会話することは愚か…存在すら覚えていなかった。
ーこの頃からだろう、私が存在意義について考えるようになったのは。