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 翌朝、目が覚めると見慣れない場所にいることに気づいた。


 あれ……あぁそっか、確かシルレンの女将さんの部屋で寝たんだっけ。


 上体を起こし横を見ると、既に起きていたシエラさんと目が合った。


「おはようございますシエラさん。」


「おはようミリア、よく眠れたかしら?」


「はい、とても気持ちのいいベッドで……あれ」


(なにか気づいてくれたかしら?)


「あの……もしかして…………ベッド占領しちゃいました!?」


(違った~~~~~~~~~~~~~! 半分あってるけどっ)


 昨日寝る前より部屋がさっぱりしてるというか物が減ってるというか……気のせいかな? 先程からなにやらじっと見つめられつつも何か言いたそうな顔をしている。ここはとりあえず謝るべきだろうか……ん?そういえば眠くて忘れていたけど寝る時横に……一緒に……寝た……!?


「ごめんなさい!!」


「え? 急にどうしたの?」


「いえ、あの……何も考えずに年頃の女性と一緒のベッドで寝ちゃって……」


「別に同性だし気にするような……あ~、元男の子?」


「……はい」


 あぁぁ、これは東京湾にコンクリ詰めされてもなにも言えない……東京湾ないけど。


「気にする必要ないわ。元は元。今は女の子なんだから、ね。」


 笑顔でそう返してくれるシエラさんマジ天使。これはもう末代まで語り継ぐしか……子供作る気なんてないから語り継ぐも無かった! と、そうだ、


「シエラさん、休ませてもらいありがとうございます。今日からは部屋を「ダメよ」え?」


 あれ、部屋空くの今日じゃなかったっけ? それとも予定でもはいっちゃったかな? もしくは……なにか失礼なことしてて部屋を貸すとかありえない! とか……


「ミリア」


「はいっ」


「三日。今日から最低でも三日間は私の部屋に泊まりなさい」


「え」


 泊めてもらえる……? ありがたいけど……どうしたんだろ?


「その三日ちょっとで……あなたの魔力制御をできるかぎりものにしてもらいます」


 魔力制御……確かにまだ大雑把すぎな感はあるけど。大雑把で済んで無い気がするけど。うーん……なんか詳しそうだしお願いしたほうがいいかな?


「……よろしくお願いします! シエラ先生!」




――――――



 れっすんわん



「とりあえず魔術を使ってみましょう」


「はい。……どうすればいいんですか? 詠唱とかあるんです?」


「この世界の魔術はイメージが全てよ。こう……ね。」


 そう言って伸ばした指の先に火の玉が浮かぶ。


「詠唱なんていらないわ。魔術は体内の魔力を消費して大気にある魔力に点火する感じかしら。イメージだけだと安定させ辛いから大半の人はイメージにあった何かしらの発声をしているけどね。そうね……このグラスに……水よ!」


 シエラさんの手に持ったグラスに溢れるぎりぎりの水が出現する。オウ マホウ ベンリネー


「さ、まずは火でも水でもイメージしてみて。手のひら程度の大きさで。」


 イメージ……妄想…………


「……むうぅぅ……ふぁいや! ふれいむ! ほのお! ……ぅぅ」


 初日にもまほーを期待して色々やってみたけど水滴のひとつさえ出せなかったけどね! 魔力みたいなのあるから出来ると自信満々だったのにね! ……魔力っぽいの出せるし見えるのになぁ。


「(なんでかしら? 間違いなく魔力は十分感じられるのに……)もう一回やるわね。今度は拳大の大きさで……はい。火になる時に大気中の魔力が集まるのは見える?」


「はい見えます。……そうだ! それちょっと貸してください!」


「え? 貸すって……え……ええっ!?」


 どうしたんだろ? うーん、それにしても……さっぱりわからん。この火の玉の勢いを強弱はできるのに作り出すことができないなんて……落ちこぼれ種族なのかな……てかこれはやたらと制御しやすい。というか弱くしすぎて無くなるようなこともないし、強くしすぎて撒き散らすようなこともないし……???


「ちょ、ちょっとミリア、なにしたの?」


「え、なにって、シエラさんと火に繋がってる魔力ラインを切ってこっちに繋ぎなおしただけなんですけど……まずかったです?」


「いえ別に大丈夫よ……じゃなくて! なんでそんなことができるの!?」


「なんでって言われても……なんででしょ? これ借りた火をいぢることはできるんですけどやっぱ作れないです……」


(規格外すぎる! この子魔術……いえ、魔力が関係したものなら全て制御……違うわね。支配? が可能とか……?)


「……どうしましょう?」


「……魔術は保留にして次、いきましょう」


 わーい魔術の授業終わった~。……終わった……魔術……使えないで……オワタ……はは、わろす。わろす……



――――――



 れっすんとぅ~


「次はじゃがいもの皮を剥きましょう」


「はい! ……じゃがいも?」


「じゃがいも。さ、やってみて(お約束だと剥き終わったら身がちょっとだけとかあるかもね」



 じゅっぷんご



「先生! 終わりました!」


「あら、速いわね。……綺麗に剥けてるわね(お約束さん息してないわ……」


「前の身体よりなんかやりやすいんです。不器用よりいいですけどね」


「そうね。でもせっかくだし芽もとりましょうね」


「あ、あはは……」



――――――



 れっすんすり~


「では、今度はこれを箸で移動してもらいます」


「……豆? なんか柔らかいけど微妙に硬さもある不思議な感じが」


「なにに使うかは秘密。ザルからザルへ一粒ずつ移動を。終わったらまた逆へ。潰しちゃったものはそっちの入れ物へ」


「先生!」


「はい、ミリアくん」


「箸の、正しい使い方を、教えてください……」


「……」


 なうろーでぃんぐ



「一回やって見せます」


 シェイシェイハ!!シェイハッ!!シェシェイ!!ハァーッシェイ!!


 素晴らしい理想的なテンポだ!


「はい、やってみて」


 ブン………ブン………ブン………ぷちっ 「あ」


「はい慌てない慌てない。とりあえずお昼までやっててね。あと数えながらでね。それじゃお仕事してるから」


「は~い。……昼、まで……?」


 ……


 …………


 ………………



「どお? 何往復かできた?」


 ザル1・2に半分ずつ、潰れた物の入れ物にそれと同じくらいの量がある。


「……まだ片道終わってません」


「あら、それじゃお昼休憩したら今日一日それやってようか」


「えっ」


「心配しないで大丈夫よ、まだいっぱいそれあるから。」


「はい……」


――――――


 ……その夜。



 ずっと箸移動をさせてたからか、寝てる状態でも手を左右に振り動かしている。幸いそこまで魔力は篭められておらず軽めの障壁だけで済んでいる。同じ動きを繰り返させて無意識時の制御をと考えていたが、


「豆が一粒……豆が二粒……豆が……」


 ちょっとやらせ過ぎたかしら? でも妙ね、あれだけで無意識中魔力が昨日とここまで違うなんて……アルコール成分が身体に合わなくて不安定になってたとか?


 左右に動いていた手がゆっくりになり、停止する。


「豆が……豆が……もう……無いよぉ……」


 ……これ以上やらせたらトラウマになりそうね。まぁ全部潰しちゃっていいんだけどね。リルの実は潰して薬にするものだし。


 キュイー……


 この子も不思議よね、魔力が餌だなんて。少量(ミリア談)で良くて大きくもならなくてもふもふで気持ちいいし。ちょっと羨ましいわね……でも私じゃ飼えない、か。魔力を魔術としてでなく素の魔力そのままを放出する必要があるなんてね……


 特訓すれば今後大丈夫になるとは限らない。私がずっと着いていられる訳でもない。なら……



「精霊銀製の拘束具でも依頼して寝る前につけてもらうのが一番かしら……」

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