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あれから三年。否、三日。
「そろそろ……木の実と水以外の物口にしたいな……」
力の加減は大分ましになった。と、思う。人と握手してもたぶん潰さないで済む、はず。飢えると人間必死になるもんなんです。今エルフだけど。とりあえずは誰かの身体じゃなく自分の身体だと思っておく。違ったらその時考えればいいっていう。むしろでっていう。
「思い切りは必要……か」
力のセーブと食料調達を兼ねての森周辺を散策したところ、この森は丘の上にあったらしく多少距離はあるが町らしきものは見えた。
「よくある冒険者ギルドなんてそんな都合いいものなんてあるわけないだろうけど……中世ヨーロッパ風な町並み(いや知らんが)だし魔力らしきものがあるような世界だし、なにかしらあってもいいと思うんだよな」
沈黙、熟考。
「まずは対話だ。一人称は私、でいいか? 僕や俺より自然だしな。この外見じゃな……。言葉遣いは…………ネトゲでチャットしてた時の感じから見た目的におかしくないように調整すればいいか。伊達に中身2:8で思われた実績があるし!(男2女8)ただですます調だっただけなのに! 普通にチャットしてただけなのに! 告白紛いもあったし! (男に)……orz」
あぁ、昔を捨てられるって素敵なんだな。黒歴史にさよならできるって素晴らしいことなんだな、と前向きになることで充実した異世界ライフが認可される。といいな!
「あ、あー、うん。……あとは人種差別みたいなのがあるかどうかか。……行ってだめだったら逃げよう、うん。力ならあるし。これが標準的だったら詰むけど」
言葉が通じるのか、字が書けるのか、読めるのか、不安要素を満載させたまま目的地へと歩いた。
――――――
町に着いた! 検問とかあるのかと思ったら門番がいる気配は無し。魔物とかいないのかな? ここに来るまで動物さえ見なかったけど。門はあるからそれで大丈夫って程度とか?
「……おぉぅ」
入り口抜けてすぐに見えたのは、人・人・人。だけではなく、猫や犬っぽい人、たぶんドワーフ、エルフ(ただし金髪)他にもいるけどなんて言うのかわからない。
「はぁ~~~……」
大丈夫そうで一安心。次は働き口があるか、だ。後は言語か、さっき見かけたエルフさんに聞いてみるのがいいのかもしれないけど……人見知りだし……けど……なんて考えているうちにいなくなってしまった。
「……むしろ門番さん居てくれたほうがよかったかも……人が良ければ説明とかしてくれただろうし」
いないものは仕方ないかー、と歩き出す。偉い人がいってました、仕方がないって言葉は嫌いだと。
しかし……
入り口から歩いてまもなく、視線がやたら突き刺さるのはなに? エルフ珍しくないよね? さっきもいたよね?って、さっきのひ……エルフ(♂)さんにもガン見されてる!?
……見てるってことは認識してるってわけで、むしろいきなり声かけるよりは難易度低いはず。よし……
「あ、あの~」
「……」
「? すみませーん」
「……」
反応が返ってこない。やっぱ通じないのかな? でもさっきより顔が赤くなってるのはなんで……?
「……もしもーし」
「うつくしい……」
「へ?」
「……ん、あ、、おおぅ。これは失礼……どうされましたか?」
声かける相手間違えたかなぁ。まぁ言葉が通じるみたいでよかったけど。
「あの、初対面で失礼だとは思いますが、よければこの町のことを教えてもらえませんか?」
「失礼どころか大歓迎さ! ……先に一つ聞いてもいいかな?」
「どうぞ」
「君は、我等エルフとは違うが、エルフ種なのか?」
「……はい?」