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「うん……さむ……ふとん……あ……れ?」
目を開くと少し、たぶん少し、おかしなことに気づき、起き上がる
「……俺……家で寝てたよな? 草があるからって地面に素で寝ない……よな?」
見覚えの無い場所。周囲は森に囲まれ近くには透き通るほどの綺麗な泉。きっと泉。湖では無い。そちらへ一歩ずつ踏み出す度にズシンズシンという音が発生するが気のせいなんだろう。
泉の水を飲みますか? いえす。 うまい! これはあなたの好きなおいしい水だ! ……水の味とはなんなのか。
もう一飲みしようと手を入れ、湖面に映る姿に疑問を浮かべる。
「誰だこの美人さんは……エルフ? 後ろには……いない……な」
よし、まずは落ち着いて考えよう。夢? 現実? ファンタジーな世界にきた? この自分じゃない見た目は自分? まさかの性転換? しかもエルフ。……誰かの身体に意識が入り込んだ? ……まずは夢の可能性は捨てよう。つまらないし。ファンタジーな世界として、自分自身なら知り合いなんているわけもなく、誰かの身体なら探してる人? がいるかもしれない。いや、まずは目の前のこの……
「歩くたびにクレーターができる自体をどうにかすべき……か」
これがこの世界のエルフにとって当たり前なことなのか。そういう思考をしても比較対象が無い以上判断はできず、
「……いやいやないない。絶対これ能力暴走してるだけだろ。とりあえずは全力を知るべき……だな」
足を軽く広げ踏ん張り、空に広がる雲の一点を目掛け、何故か届く気がしてアッパーの要領で振るう。
瞬間なにかわからないが危ないような予感がし極力力を抜いた。
地面のクレーターが更に深くなる。途中なにかが支えてくれたように感じた。狙った雲は真ん中に穴ができそこから周辺を吹き散らしていく。
―――その日、世界は震撼した。(物理的な意味で
「……落ち着け俺、koolだ! koolになれ……! ……ねぇよ!」
そう言いつつも周囲の状態を見てひとつの予測がたつ。
「雲を散らすほどの拳圧だったらこの辺一帯惨事になるよな。それが無いってことはなにかしらの力も働いているってことだな。いかにもファンタジーなら、魔力・魔法のたぐい……だよな」
要検証と湖面の一点に向かって人差し指を振るう。手のひらほどの大きさの穴が深くまででき、時間差で派手な音をたて周囲に水が舞う。
「うん、まぁわかってた」
実験より泉に誰か……俺をこの世界に呼んだなにか……潜んでてこれから説明でもしてくれるんじゃないかなー、という目論見があったりなかったり。居たら即死しそうな気がしなくもなかったが。
「まずは加減を、できれば完璧にできるように、だな。無理ゲーな気しかしないが。ぶっちゃけまともに歩けないし。次は水はいいとして食料だな……狩りなんてやっても血抜きなんてしたことねぇ……やはり木の実とかを探すしかないか」
魚でもあればいいがこの泉は魚はおろか虫一匹も見当たらない。居て捕れたとしても火を起こす手段がない。
もう一度湖面に映る今の自分の姿を見る。
「歳は……どうなんだ? ぱっと見元の俺の年齢(19)とそう差はないように見えるが……エルフ? だしなぁ。髪は銀髪ロング癖毛は無い。妖○アンテナも飛び出ていたりはしない。目は緑? まぁ緑でいいや。耳が長いことや肌の白さはさすがエルフってとこか。だが、、エルフってもっと……スレンダーなもんじゃないっけか? 見事なぼんきゅっ……ぽん、だな。女になるとどういう感じかなぁとか体感してみたいと思ったことはあるが……なったらなったで不思議感満載だな。上下は緑地に横に白いラインが少しあるだけなシンプルさ、ふむ、ミニスカはさすがにどうよ? ……」
自分の言ってる、ひとつの事実を、全力で、葬りたい!
「状況や考え事を理解しやすくするために口に出すほうがいいとは言うが・・・誰かに見られてたらすっごい不審者かすっごい可哀そうな子だよな……」