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第4章 すれ違い

第4章 すれ違い


 真上から照りつけていた太陽を追い出すかのように、取って代わって月が夜空に浮かぶ午後7時。

 どういうわけだか・・・今明彦は両手に花、このシチュエーションは年頃の男の子なら誰しもが憧れる・・・まさにそれだ。

 一人はクラスの学級委員長。めがねをかけて本ばかり読んでいるまじめな女・・・というわけではなく、面倒見がよくノリがいい「お姉さん」的なタイプ。

 そしてもう一人は・・・

 「うわっ、これ・・・うなぎ?ウナギって・・・緑だっけ?」

 ペットショップの目の前に座り込み、蛇ににらみをきかせる・・・髪がピンク色の不思議ちゃん・・・。

 「おいっ、それは蛇だ、うなぎなわけないだろ・・・ったく」

 「ぎーちゃんは蛇みたことないの?」

 「うん、一度も。あっ、でもマムシとか電気ウナギは見たことある」

 「マムシも蛇だろ・・・てか、電気ウナギ?」

 「うん、電気ウナギの解剖。でも、電気あるから食べれなかったみたい」

 「そういうもんなのか・・・」

 「ぎーちゃんって本当におもしろいこというね」

 ぺットショップの中を物珍しくウロウロし、「これは何」と質問攻めしてくるギタコに文句一つ言わずに栗城は懇切丁寧に教えてあげている。

 委員長の神対応に、明彦は脱帽した。

 だが、今日は二人の親睦を深めるとかそういったことでショッピングを楽しみに来たというわけではない・・・

 「おい、そろそろ行かないと。確か8時までって・・・」

 インコが繰り返し「金くれ」としゃべているのにムキになっているギタコを店から連れ出すのも四苦八苦する始末。

 ギタコをショッピングする際は是非とも裏葉を連れて行かなければ・・・

 残念なことに明彦には保育士さん的なスキルは全くなく、今日も面倒見がいい栗城がいなければ、たった10メートル移動するのにも何分もかかっていただろう・・・

 本日の目的地は「楽器屋」。

 先日、流麗との戦いの中でギタコのギターが壊れてしまったために急遽、裏葉が手配してくれたそうなのだが・・・

 

 「悪いけど、あんた取りにに行って」

 「なんで俺が・・・」

 「あたしはこれからちょっと用があるから」

 「じゃあ、お手伝いさんとかに頼めば?」

 「今、一人暮らしなのよ。家の中までお嬢様でいるのは精神的にきついのよ」

 「・・・っつたって」

 「ついでに、ギタコの面倒も見といて」

 「はぁ?」

 「あんた、あの子を一人にしておくとかそんなひどいこと言わないわよね?」

 「いちいち、くどい言い方するなぁ・・・お前・・・。あいつだって餓鬼じゃないだろ。ちょっと過保護になりすぎなんじゃねーか?」

 「しばらくはね。とりあえず今日の所はお願いするわよ」


 明彦に拒否権など存在するよしもなかった・・・

 ほぼ一方的に押しつけられたのはいいが、明彦はまだこの町のことをよくしらない。

 この町に来てからは、ギタコを探し、そして入院した・・・それだけだ。

 そんな困り果てた明彦を見かねて栗城が声をかけてくれたのだが・・・

 「本当に申し訳ない・・・」

 深々と頭を下げる・・・それくらいしか明彦にはできない。

 「いいよ、別に。でも、ぎーちゃんって・・・なんかすごい子どもっぽいよね?」

 「それは・・・そうだね」

 目に映るものが全て物珍しく見える、もちろんそういうこともあるのだろうが、何よりも人との関わりがほとんど無かったのが原因で、中身が子どものまま、容姿だけは成長していったのだろう・・・

 気を許すとすぐどこかへと行ってしまうギタコに注意をしつつ、栗城との会話を楽しんでいるとようやく目的地にたどり着いた。

 「ついたよ、C♭」

 栗城が指を指す方向には周りの店の雰囲気とは少し違う、古びた店が一件。

 「・・・。裏葉が頼むからもっとすごい店かと思ってたけど・・・、ぼろいな・・・」

 「オンボロー、耐震強度偽装してる?」

 「そんな言い方やめなって、店の人に失礼でしょ?確かにぼろいけど・・・」

 若干、抵抗がありつつも明彦達が中に入っていくと白髪にサングラスをかけた少しロッキーなオヤジが退屈そうに雑誌を眺めていた。

 見るからに関わってはいけなそうな雰囲気を醸し出している。

 客が入ってきたというのに、「いらっしゃい」の一言も発することも無ければ、まるでこちらに目を向けようとしない。

 「あの・・・すいません」

 明彦が声をかけてみるも、まるで相手にしない・・・

 「(委員長、ここの人って、いつもこんなんなの?)」

 「(知らないよ、ここに入ったの初めてだから・・・)」

 店主と思われる男に気づかれない程度の声で話していたのだが・・・

 「オヤジー、仕事しろよ。客来てんぞ、客」

 ・・・。

 社会的モラルの欠如しているギタコはこういった状況下での正しい判断ということがわからないでいた。

 正しい、確かにお前の言っていることは正しいぞ、ギタコ・・・

 だが、・・・相手をよく見て選べ・・・

 そう思ったのは何も明彦だけではない、隣にいる栗城はおろか、先ほどまで雑誌を読んでいたのに、いつの間にかこちらに顔を向ける男が一番にそれを思っただろう。

 サングラスで目がよく見ない・・・だが、一つだけ言える。

 サングラスの奥に見える瞳はキラキラしてはいない・・・

 「す、すいません。こいつはちょっとアレなもんで・・・」

 とにかくこのままギタコをここに置いておくわけにはいかない。

 明彦はギタコの首根っこを掴み、店から連れ出そうとした、だが、

 「ちょっと待て」

 明彦と栗城の背筋は凍り付く。

 「ちょっと待て」・・・そう言って立ち止まるのは愚かだとは思いつつも、ここで帰ってしまうのはもっと愚かなことでは?・・・コンマ数秒で彼らの危機管理能力が働き、体をここにとどめた。

 「俺に仕事させてくれよ・・・お前ら客なんだろ?」

 仕事?・・・、何のお仕事ですか? 

 ここは楽器屋、C♭。当たり前だが、楽器を売るところだ。

 だが、明彦はそう聞いてしまいそうになる。

 「オヤジー、今日はギター取りに来た」

 「はぁ?」

 こういうとき、社会経験の浅いギタコは便利だ、こうも素直に自分の言いたいこと、思っていることを言える。

 だが、一つだけ教えておきたい・・・、火に油を注ぐと言うことを・・・

 身震いする栗城と明彦をよそに堂々と「客は神理論」を展開するギタコ。

 席を立ち、ギタコのところに向かうのかと思いきや、明彦の目の前で足を止めた。

 「あの・・・、こいつ根はいいやつなんで・・・」

 「・・・、あのわがまま嬢ちゃんとこの使いだろ」

 「わがまま嬢ちゃん?」

 「なんだ違うのか?」

 「それって白銀裏葉のことですか?」

 「馬鹿っぽさそうな男と、世間知らずの女が取りに来るっていてたけど、お前らじゃないのか?」

 「馬鹿っぽさそうな男?」

 「世間知らずの女?」

 「ぷぷぷっ・・・二人にぴったりの言葉だね」

 「ったく、それにしたってオヤジとはよく言われたもんだな」

 意外にも口を開けてみれば、ちょっと口は悪いものの人の良さそうな人であった。

 男は奥の部屋から一本のギターを持ってきた。

 「これが、言われてたもんだ」

 店主が持ってきたのは、壊れる前と同じようなギターだった。

 「ったく、もっと物を大切にしろってんだ。金持ちだからってどんな使い方してるんだよ、あの嬢ちゃんは・・・」

 「いや、これ使うのはこいつなんですよ・・・」

 「このピンクの嬢ちゃんが?・・・、どうりでぶっ壊れるわけだ」

 「いや、それは・・・」

 明彦は実際には見てはいないが、ギターを使い流麗を追い払ったったとだけ聞いてはいる。それ故に、このギターが壊れたことは明彦にもせめられなかった。

 「ほれ、ピンクの嬢ちゃん。あんたのだよ」

 ギタコはギターを受け取るとそっとそれをなで、そして、何か考え始めた。

 「44―ハイド・・・」

 「何それ?」

 「こいつの名前」

 「ぎーちゃんは、ギターに名前つけるの?」

 「うん」

 「前のと何が違うんだよ?全く同じだろ」

 「わかんないかな、わかんないかな・・・。同じ形だからって、全部が全部同じじゃ無いんだけど」

 「???」

 「あんちゃんにはわからんだろうな・・・」

 「そうそう、ンチョにはわかんないんだよ」

 変なところで意気投合する中に取り残されている感・・・

 明彦は栗城の方をチラッと見るが・・・黙って頷いていた。

 「作ってる方は同じものを作ってるが、作られた方はそんなことは思ってない。自分は自分だけ。姿形が似ているだけで、中身は違う。だからこいつらにはクセがでるのさ」

 「・・・」

 何かそれっぽく意味深いことを言ったオヤジ、ギタコと栗城はその言葉に深く感銘を受けていたのだが、明彦にはそれがサッパリであった。

 三人で何か熱く語り合っている中、明彦は一人待ちぼうけを食らうハメになった。

 



 「ごめんね、こんな所に呼び出して」

 「来なきゃ生徒会やめるなんて言われたら来ないわけにはいかないでしょ?ただでさえ二人しかいないんだし、それに、こんな面倒な仕事を無償でやりたがるやつなんていないでしょ」

 「そうだね・・・」

 都立第7学園、空中庭園。

 夜空に輝く無数の星々の下でべンチに腰をかける裏葉と春亜。

 「それに夜に無断で侵入とか職権濫用もいいとこよ」

 「うん・・・」

 「で、今日は何の用?」

 「石神君、大丈夫かなって・・・思って・・・」

 「蒼が?・・・、あいつは大丈夫よ。心配するだけ損よ」

 「・・・、アッキーは?・・・入院したって聞いたけど」

 「あの馬鹿は大げさなだけよ。骨の一本でも折れてりゃ多少の心配のしようってのがあったのかも知れないけど」

 「そんなに激しい喧嘩だったの?」

 「喧嘩?」

 「アッキーが石神君と喧嘩したって・・・」

 「(あの馬鹿、もっとましな嘘つけねーのかよ)あいつらの考えは一般人のそれを遙か凌駕するから、あんま気にしないことね」

 「そっか・・・」

 「あんた・・・あたしの留守中になんかしでかした?」

 先ほどから、どこか適当に話しをしている春亜に裏葉は少し違和感を覚えた。

 裏葉と春亜が最後に会話をしたのは、流麗との戦闘の最中、電話でのそれが最後だった。それからおよそ10日あまり、二人には何ら言葉を交わすということは無かった。

 と言うことは、自分の留守中に何かをしでかした、と裏葉は判断する。

 「あんたは小さい時からいつもそう。自分が何か罪の念にかられると急に弱気になる」

 「・・・」

 「で、何?クッキー黙って食べちゃったとか?それとも生徒会室の絨毯に紅茶こぼしちゃったから?」

 「・・・」

  春亜は首を大きく横に振った。

 「違う?・・・、それ以上あたしを怒らせることって何かしら・・・」

 「・・・、裏葉にとってはそんなに大事なことじゃないのかな・・・」

 「???」

 春亜は少し声を震わせながらつぶやいた・・・

 そして、その真意を裏葉はわかってはいなかった。

 「裏葉は強いよね・・・」

 「強い?」

 「そう。お嬢様で、頭も良くて、容姿端麗で、スポーツもできて・・・」

 「!」

 春亜から出てきた言葉は、・・・流麗が春亜に化けて言った言葉と同じような言葉だった。

 「だから、普通の女の子の気持ちもわかん無いんだよね・・・」

 「さっきからどうしたの?」

 「・・・、まだ・・・わかんないの?」

 「だからどうしたのよ?」

 「内心では・・・あたしのことなんか、どうとでもいいと思ってるんでしょ・・・」

 「・・・思ってるわけないでしょ。あんたはあたしの一番の友だちでしょ・・・」

 「そんな・・・、安っぽく言わないでよ」

 ベンチから立ち上がり、裏葉を見下ろした。

 「?」

 「電話でごめん・・・たったその一言で済まされちゃうんだね」

 「春亜?」

 「喧嘩なんて今まで一度もなかった。だから、どうやって仲直りすればいいかなってずっと心配になってた。もしかしたらこのまま一生、裏葉と仲直りできないとか・・・思ってた。でも・・・、裏葉にとっては電話で「ごめん」の一言で済まされちゃう取るに足りないことだったんだね・・・」

 「そんなことはないわよ」

 「じゃあ、なんでよ・・・。クッキー食べちゃったとか・・・そんな下らないことであたしが・・・こんな顔してると思ってたんでしょ・・・。こういうときもそんな冗談言えちゃうんだね・・・裏葉はさ・・・」

 「・・・。今日のあんた少しおかしいんじゃないの?そんな路線走ってたっけ?」

 裏葉のその言葉で、春亜の中の何かがはじけ飛んだ。

 「・・・もう、いいよ」

 「ちょっと春亜」

 その場を立ち去ろうとする春亜の手を掴む裏葉だったが、

 「べタなことしないでよっ」

 その手は軽く払われる・・・

 「裏葉にとって・・・、あたしはどうでもいいんでしょ。そこら辺の人と変わらないどうでもいい存在なんでしょ・・・もう、ほっといてよ」

 大粒の涙を浮かべながら、春亜は去っていく。

 裏葉はそって手を伸ばすが、それを途中でやめた。

 「あいつ・・・こんな面倒臭いやつだったんだ・・・」




 「どうすんですか遼さん、メモ現場に残して来ちゃいましたけど」

 「・・・」

 「別に、そんなの問題じゃないでしょ?問題は財布の方でしょ?あれはあさりんが貰う予定だったんだけどぉー」

 「・・・」

 遼は何も言わずただ、赤いワインの入ったグラスを傾けては、それをじっと見つめる。

 「あのなぁ、メモ見られればいくら馬鹿な警察といえど、白銀裏葉が次のターゲットってバレるだろ・・・。そうすれば今まで見たいにやりにくくなるのは明白。財布なんかよりもよっぽど問題だ」

 「でもあの財布はポブリーの金ボタンなんだよ、省ちゃんのだっさださの財布と一緒にしないでよね」

 麻里はインターネットで「ポブリー 金ボタン」と検索し、省吾の前に検索結果を叩き付けた。

 「どう、わかった?」

 その画面を見るや否や、省吾はうっすらと汗を浮かべる。

 「さすがに・・・これだけは死守しといた方がよかったですかね、遼さん」

 「・・・あんな財布・・・どうでもいい」

 その価値を知っていてそれを言ってるのかどうか、その真意はわからないがどちらにしても遼のその言葉には圧倒された。

 口惜しそうにその検索結果を眺めている麻里から、パソコンを取り上げると省吾はネット検索を始め、あるサイトを開いた。

 そのサイトのトップページには「赤の天秤」と書かれている・・・

 そして、省吾はサイトにある掲示板を確認していく。

 「今日は5件か・・・。くだらねぇ・・・」

 「『コンビニの店員がおつり間違えた。殺して下さい』だって。そんなん自分で殺せってーの」

 「・・・」

 「てか、知ってるか?最近俺達のこと、世間じゃステ魔とか言ってるらしいぜ」

 「ステ魔?何それ?」

 省吾はネットで「ステ魔」と検索し、ページを開く。

 「『ステ魔とは、見えない悪魔の意。三年前より連続して起きている不審死事件の犯人につけられた名称。全く足取りが掴めないことや、人を殺し続けるというところからこの名前が付けられた。また、一部のネットユーザーからは神格化されている』何これ、あたし達まるでヒーローじゃない」

 「まるでじゃなくてヒーローだろ」

 省吾が得意げに言ってみせるが、それに対して遼は不機嫌そうな顔を浮かべた。

 「・・・俺たちは・・・ヒーローじゃない」

 「遼さん?」

 「そして・・・殺人犯でも・・・ない」

 遼はグラスのワインを一気に飲み干す・・・

 その様子を麻里と省吾は黙って見つめる。

 「俺たちが・・・人を裁くたびに・・・この世は浄化されていくのだ」

 「浄化・・・、確かにそうですね」

 「むしろ感謝されて当然・・・かなぁ」

 「俺たちがしているのは・・・神の代行にすぎない。大罪人を裁くための・・・な」

 遼は首にかけてあるクロスを握りしめる。

 「でも、どうすんですか。ただでさえ金持ちのご令嬢。その上警察が付くとなると・・・」

 「そんなのどーでもよくない?警察もみーんな裁いちゃえば、そしたら邪魔者もいないしさ」

 「それは・・・外道な人間のやることだ。殺すだけなら、誰でもできる・・・」

 「そんなん言ったら、遼ちんの力じゃどーにもならないよ」

 省吾は上手いこと警察を出し抜く方法をネットで検索してみるが、中々思うような回答は得られなかった。

 「近場で事件を起こして、注意を引くとかわ?」

 「白銀財閥のお嬢だぞ、例えそんなことが起きようがあいつの警備が甘くなるなんてことはない。なんなら数人のボディーガードだってつけかねないだろ?」

 「そんなこと言われてもぉ・・・、あさりんはそういうの担当じゃないからわからないんですけど・・・」

 「・・・ブラフ」

 聞き慣れない言葉に、省吾と麻里は「えっ」という素の反応をリーダーと思われる遼に見せてしまった。

 「ブラフを名乗れ・・・さすればあの女は嫌でも出てくる・・・警察を振り切り一人でな」

 「一人でですか・・・」

 「やつも権利能力者だ。そのことが世間に出てしまうのは・・・なんとしても避けたいだろう・・・」

 「まぁ、確かにそうでしょうが・・・」

 遼の言うことに反対するつもりはない、ただ、「ブラフ」という耳慣れない言葉を出すだけで、危険を顧みずに相手が釣れるとも考えられなかった。

 「ブラフって一体なんですか?」

 「・・・お前達は知らなくてもいいことだ。・・・知るべきことは・・・白銀裏葉が生まれながらにしての大罪人だということだ」

 そういうと、遼は一人、薄暗い部屋を出て行く。

 「遼ちんって・・・変わってるよね」

 「・・・あれがもっとも正しいことを考えてる人間だ。・・・正しすぎる正義。お前だってその正義に惚れ込んだんだろ?」

 「それはそうだけど・・・ただ、白銀は別じゃん。あいつは「殺るまんリスト」に入るようなことした?」

 「・・・、遼さんが言ってただろ。あいつは極悪人だって・・・。だから、あいつは極悪人だ」

 何も知らないと言うことよりも、何も知らされていないという不安。それでも省吾のなかでは絶対的な存在として釜木 遼が存在している・・・。

 YESと言えばYES、NOと言えばNO、その根本的な部分だけは揺るがなかった。

 だが、それとは別にブラフという言葉だけは何か引っかかった。

 そう、思ったのは省吾だけではなかった・・・

 「でも・・・時々心配になるよね。あさりん達のこと信用していないみたいで・・・」

 「・・・、もっと・・・」

 「えっ」

 「もっと俺たちがあの人の役に立てば・・・認めてくれるだろ」

 「それはそうなんだろうけど・・・」

 そして、引っかかった糸は、幾重ににも絡み、わだかまりを生む。

 「言葉だけで・・・釣れるとは思えない」

 「・・・遼ちん、信用しないの」

 「・・・思えばこそだ」

 「???」

 「より確実な方法で・・・白銀を殺るために・・・」


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