第3章 クリキン
第3章 クリキン
「んで、これが今回の害者?」
「はい。頭を一発・・・・即死です」
狭い路地の前にには数台のパトカーが止まり、周りには野次馬による人だかりができはじめ、カメラを持った報道局と思われる人で辺りは埋め尽くされている。
普段は穏やかな朝をむかえているこの一帯も、今日という朝は何かの祭りでもあるかのように騒がしい。
路地の中にはぐったりと横たわる女に数人の鑑識、そして二人の刑事がそれに手を合わせている。
その中でも黒く長い髪に鋭い目つきをした女は一人、異彩を放っている。
それは女からだとかそういったものではない、場数を踏んだ刑事特有のものだ。
「また激しくやってくれたもんだ・・・」
「頭に一発・・・。やはり同一犯ですかね?」
「たぶね・・・、なんかの間違いがないかぎり。こいつで何人目だっけ?」
女の刑事に言われ、部下と思われる男が手帳を急いでめくる。
「23人目ですね・・・。正気の沙汰じゃない・・・」
「正気の沙汰?」
女は部下の男の言葉に過剰に反応した。
「まともな人間なら人一人だって殺しやしねーだろ」
「す、すいません・・・」
「ったく、勘違いするなよ。一人殺そうが、何百人殺そうが、人殺しってことには変わりないんだよ。警察ってのはいつから死んだ人間の数で、事件の大小を決めつけるようになったのかね」
「いや、そんなつもりでは・・・」
男にも平気で怒鳴り声を上げる女。
警察という組織は手柄を上げなんぼの社会、その中でこのような正義感を振りかざしたところで、それは結局「きれい事」にほかならない。
そして、警察の社会でもやはり男女の壁は厚い。彼女がそんな正義を振りかざし続ければ、間違いなく出世など夢のまた夢だろう。
ならば、彼女は自分の正義のためだけに動いているのだろうか・・・
男の弁解などに耳を貸すこともなく女の刑事はしゃがみ込み、弾丸が撃ち込まれた害者の額をじっと見つめる。
「まだ、続くのか・・・」
女の刑事はじっと考え込む・・・
「一件目から数えると・・・もう約3年くらいになりますね。犯行は全国各所で」
「んで、害者の名前は?」
「は、はい。髙橋 恵、22歳」
「22歳?」
女刑事は眉間にしわを寄せる。
「どうしました?」
「害者の持ってる財布・・・ポブリ・リシックの金ボタン」
「あー、ポブリーですか・・・、しかも金ボタンって」
「こんな若い子がこんなもんもてるか、普通」
「若い子なんかはみんな銀ボタンのを使ってるんですけどね。金ボタンとなるとかなりの富裕層じゃないと・・・」
「それに、この身なり・・・」
「かなりの遊び人ってところですね・・・。この財布も大方、金持ちの男に買ってもらったってとこでしょうかね・・・」
「いや、そうでもないだろ・・・」
女刑事はその財布をとり上げると中身を開いた。
「・・・空だ」
「空ですか・・・」
「大抵こういうのは・・・」
女の刑事は被害者の女のバックからもう一つの財布を取り出し中を確認した。
中には数十枚の札束が窮屈そうにかさばっている。
「給料2ヶ月分くらいはありますね・・・」
「こんな札束をこんな安物の中に入れとくか普通」
そして、バックの中から一枚の紙切れを見つけ出した。
「なんだこれ?」
「レシート・・・ですかね?」
女刑事はレシートを裏返すと、赤い文字で人の名前がびっしり書かれている。
「気持ち悪っ・・・」
「・・・、害者の名前・・・その前のやつって・・・」
「こいつ、22人目の・・・」
「それだけじゃない」
部下の男は警察手帳とレシートの書かれ名前を照合していく。
「全部・・・、一致してます・・・」
「・・・」
女刑事は髙橋 恵の次にある名前を確認した。
「白銀・・・裏葉」
「白銀・・・ってあの白銀財閥のご令嬢ですよ。たしか今は・・・」
「都立第7学園の生徒にして理事長・・・。よりによってあいつが次のターゲットってこと・・・」
「知ってるんですか?」
「・・・ここ、あんたに任せるから」
そういうと女刑事はパトカーの方に向かっていく。
「ちょっと、里空さん・・・、ほんと勝手なんだから・・・」
都立第七学園、屋上。
ギタコが手すりの上に飛び乗りぴょんぴょん跳ねているのを裏葉が必死に止めようとしている一方で、明彦は遠くを見つめ、深くため息をついている。
「お前・・・、キャラ崩壊起こしてるぞ・・・。何、その悩める少年っぽさ。俺はお前そんなの求めてないんだけど・・・」
いつもの調子で石神がからかうも、明彦はそれを全く相手にしようとはしない。
「お前は知ってたのか、ギタコが・・・その・・・」
捨てられた・・・
口に出すのも少しためらいがあるその言葉を何とか別の言葉を選んで言い表そうとするも中々出てこない。
ギタコはラボの中に何年も閉じこめられ、それだけでも悲劇の少女なのに、加えて親に捨てられていた・・・
特別な力を持つが故の、神様のいたずらなのか・・・
明彦の中では気になっていた権利能力なんかよりも、そのことの方で頭がいっぱいになっていた。
「ギタコの身の上話か?・・・で、それがどうした?」
「そががどうしたって・・・」
「そんなん、あいつだけじゃねーだろ。世の中には他にもたくさんいるだろ」
「でも、こんな平和な時代になっても・・・、まだそういうのあるんだなとか思ってさ」
「・・・、それは今だろ。ほんの10年ちょっと前までは世界が大変なことになってたからな・・・。日本の中でも不安に耐えきれず結構やばいことやるやつだっていたらしいぜ」
人身売買、麻薬、臓器売買・・・
揺らぐ日本の政府は全く機能せず、対外にばかり気をとられ、国内の規律は乱れ、殆ど無法地帯とかし、不安にかられた人々の善悪の判断は麻痺していた。
教科書を眺めて見た程度の知識でもそれくらいは石神にも明彦にもわかっていた。
「・・・じゃあ、ギタコはそれの被害者ってことか・・・」
「核兵器が奪ったのは国一つと命だけじゃないってことさ・・・」
「・・・そういう時こそ、家族って大事にするもんだろ」
「・・・、大事だから故の苦渋の決断だってあるんじゃないのか」
「苦渋の決断?」
「・・・、これから国がどうなるかもわからないってその時に、自分の娘を護りたかったら裏葉んとこみたいな金持ちに預けるのが一番安泰だと想わないか?」
「それだって・・・」
「それだけじゃない。金で売られたってことはその時からギタコには特別な能力があったってことだろ?そしたらブラフみたいな連中だってその時に存在していたかもしれない。世界もとより、日本だって大混乱・・・。今でこそブラフのやつはコソコソ動いてるようだけど、もしその時にやつらが手段を選ばなかったとしたら?」
「・・・」
確かに今でこそギタコの側には裏葉や石神がいる。なんなら、権利の上に眠る者である自分だっている。
だが・・・、その時ギタコの側には・・・そんな人がいたのだろうか・・・
護ってあげたいとか、大切に思ってるとかそういう人は何人もいただろう。
だが、訳のわからない組織などから追われていたとしたら・・・対抗しうる力を持っていたのだろうか・・・
「それに・・・、権利能力ってのはすごい力だ。特にギタコのは正にそれ。消えることができるってのは、言わば完璧な諜報部員にもなりうるってこと。・・・、戦争のための道具になってたかもしれないだろ」
「それじゃあ、なんで裏葉の父親なんだよ・・・。絶対信用できるなんて保証は・・・」
実際にも裏葉の親父はギタコをラボの中に何年も入れておいた張本人、裏葉の父親だって例外ではない・・・
「それ、裏葉のまえで言うなよ。あいつは親父に溺愛だったからな・・・。あいつの親父は子どもが好きで、孤児院とかも設けては身寄りのない子を面倒みてやってたって話だぜ。今は時々裏葉がそこいって面倒見てるって話だ」
「・・・」
「それに、裏葉の父親だったから、あいつはこうやってここにいれてるんじゃないか?変な傷あと何かも残ってないしな」
「お前・・・それって・・・」
「変な意味じゃねーって」
逃げるように石神はギタコと裏葉の元へ向かっていく。
「ったく・・・」
明彦がギタコを「かわいそう」と思ったのとは対照的に、石神は「愛情」だとそれを表現して見せた。
石神のその言葉で明彦は気づく。
自分が勝手に人の幸せを勝手に決めつけていたことを・・・
親に売られたという、そういった事実の部分しか見ずその本質に迫ろうとせずにただかわいそうだと思ってしまった、そう決めつけて、考えるのをやめてしまった。
石神の言う通り、もしかしたらギタコは最高に幸せなのかも知れない。
絶対に手放したくはないという子どもを自らの手から離してでも、幸せにしたい・・・
その苦渋の決断が今の彼女をここにいさせているのだとしたら。
「自分の幸せを、他人が勝手に決めるなってことか・・・」
すくなくとも、今こうして裏葉と石神と一緒に笑っていられるギタコはとても幸せそうな表情を浮かべている。
「ブラフか・・・」
そんなギタコの幸せを奪おうとするブラフを決して許さない・・・
明彦は自分の中で小さな火種がついたのを実感した。
「ンチョー、何センチに決め込んでるの?アレになっちゃうよ」
「男にはこうやって一人で悩んでいたい時があるんだよ」
そういえばギタコと屋上でまともに離すのは一番始めに会った以来だ・・・
空気が読めず、礼儀も知らないギタコともう一度ここで話すことができて、よかったと思ってしまった。
そんな青春の一ページを破るかのように、校内放送が鳴り響いた。
「生徒のお呼び出し?いえ、理事長の白銀 裏葉様、お客様がお見えになっております。至急応接室までお越しください」
「あたし?」
ギタコが裏葉の昼飯に手をつけるのを必死に阻止していた裏葉だったが、その放送に気をとられパンを一かじりされてしまった。
「うまいぃぃぃ」
「じゃあ、俺も一口・・・」
石神もかじろうとするも裏葉にきつい一発をおみまいされ、そこら中をのたうち回っている。
「わざわざ学校に来客なんて・・・、どこの金持ちかしらね?」
「金持ちって・・・」
「ったく面倒臭いわね」
裏葉ポケットから手鏡をとりだし、髪を整えると屋上か駆け足で去っていった。
「ご令嬢は大変だな・・・」
応接室。
「久しぶり・・・。調子はどう?」
長い黒髪の女が裏葉の前に座っている。
スーツの内ポケットからたばこを取り出したばこを吸おうとするが、
「ここ禁煙ですので」
裏葉無愛想な顔でそのたばこを取り上げた・・・・
とても客人に対する対応とは言いものがある。
女は「悪い」とたばこを内ポケットにしまうと、今度は黒い布ケースを取り出した。
「はい、これ・・・一応」
女が裏葉につきだした黒い布ケースには金色に光る紋章とカードが一枚。
それには『七海 里空』と書かれている。
「ご無沙汰しております。その節はどうも・・・」
「無愛想なのは相変わらずか・・・」
女は出された紅茶をそっとすする。
「それで、今日は何をしにいらしゃったんですか?これでも結構忙しいのですが・・・」
「それはこっちもわかってるよ。白銀家のご令嬢さん」
「・・・」
「そういう言われ方好きじゃなかったけか?」
「別に・・・」
別にといった割には裏葉の顔は少しふてくされている。
「じゃあ・・・裏葉、こいつに見覚えないか?」
里空は一枚の写真を裏葉につきだした。
「これは?」
「今日の朝、ちょっと離れた場所で亡くなった女の写真。こいつ知ってるか?」
「・・・いえ」
「だよな・・・」
「それで、今日は何の用があって?」
「・・・、最近連続不審死が相次いでるのは知ってるか?」
「・・・」
「早い話が・・・次ねらわれるのはたぶんお前だ」
「はっ?」
ティーカップに伸ばしていた手を止めた。
先ほどまで無愛想な顔を突き通していた裏葉もさすがに驚きを隠せなかった。
「遺体の女が所持していたバックから犯人のものと思われる物品が見つかってな、そこに次はお前だって書いてあった」
「・・・なんであたしが?」
「こっちが聞きたいね。それで、心当たりがないかと思って、こうやって訪ねたわけさ」
「・・・」
「まっ、そうだろな・・・。とりあえず何人かうちのやつつけとくから心配すんなって。さすがに一人暮らしじゃ・・・」
「心配するな・・・?」
裏葉の声色は急に代わり、あざけ笑うかのように言葉を繰り返した。
「あんた達に何を期待すればいーってのよ」
「・・・それとこれとは・・・」
「檻にぶち込んだ殺人犯を証拠不十分で釈放・・・。今、そいつが殺してるんじゃないの?」
「あのなぁ・・・」
「頭に一発・・・、今回もそうでしょ?」
「・・・」
怒鳴るように声を荒げる裏葉に、里空は机に置いてある紅茶を黙って見続ける。
「あれから・・・あたしがどんな思いで・・・毎日あの事件と向き合ってきたと思ってるのよ・・・。あいつをあのまま・・・ぶち込んでおけば・・・」
「おいっ」
「二人目だって三人目目だって出なかったはずでしょ」
裏葉が思いっ切り机に手を叩き付けるが、机はびくともしない。
少しの沈黙が二人の間に流れる・・・
「・・・、今あいつの行方はわからない」
「・・・」
「ただ、今でもあたしはあいつは白だと思ってるよ」
「・・・、まだそんなこと言えるんだ」
裏葉は必死にその怒りを抑え込もうと自分の腕に爪を立てる。
「あたしは刑事だ。一時の感情で動ける程人間できてない、お前と違ってな」
と、言い終わると遂に耐えきれなくなった裏葉の手が里空の頬を打つ。
「パチン」っと言う鋭い音とともに里空の頬はうっすらと赤みを帯びる。
「公務執行妨害・・・、今日は勘弁しといてやる・・・」
里空は机の上に紙を一枚置くと
「なんかあったらここに連絡しな」
下に顔を向け、必死にこらえる裏葉の頭をそっとなでると、里空は応接室を去っていく。
その後、裏葉一人になった応接室からはそっとすすり泣く声が聞こえてくる。
それを里空は扉越しに聞く・・・
「中身はまだ・・・餓鬼なんだな。って、あたしも同じか・・・」
「ねぇ、知ってる。今日、この町の近くで殺人事件起こったらしいよ」
放課後にもなると、今朝の殺人のニュースは学校全体に広がっていた。
どこからの情報なのかあることないこと生徒達の間では噂されている・・・
「アッキー知ってる?今日の朝、近くで不審死事件あったらしいよ」
「アッキ―・・・ね・・・」
石神の口利きもあり、あれからクラスのやつとうち解け合うのも時間はかからなかった。
その代償として、「アッキ―」と呼ばれるようになってしまったが、そのうち慣れるとのことらしい・・・
「てか不審死事件?」
「そう、一発頭にどーんって、即死だって」
「マジ・・・?結構えげつないな。そういうのテレビの中だけかと思ってたんだけど」
「アッキーはニュースとか見ないの?今日ので23人目らしいよ」
「23?・・。それって・・・」
「はぁ・・・『残念なやつ』だね、アッキーは・・・」
伝わったのは何も「アッキ―」というあだ名だけではない。不名誉なお言葉まで授けられてしまった。
「1人目が3年前だから、3年間で23人ってこと。みんな頭に1発くらってるから同一犯って世間じゃ騒がれてるよ」
世間のニュースとは随分ご無沙汰だった明彦にはそのような情報は全く入ってこなかった。下手すれば、もう何人か被害にあっても全く気づかなかっただろう・・・
「23人って、警察も結構あてにならないもんだな」
「そんなに殺ってるのにパクられないっておかしくない?んで犯人につけられた名前が『ステ魔』」
「ステ魔?」
「見えない悪魔でステ魔。一部のネット住民は神格化してるらしいよ」
「なんだよそれ・・・人殺しをか?」
「公務員の無能さを身をもって露呈してくれてるとかだってさ・・・なんか変な話だよね。警察がいるからこうやって平和でいられるに・・・」
「ネットなら匿名で言いたい放題ってわけか。勝手だな」
「今日亡くなった女の子だってさ、連れ娘とか言われたい放題・・・」
「連れ娘?」
「・・・アッキーってさ・・・ネットとか見たりしないのかな?」
「・・・、あんまり」
このご時世には珍しく、メール、電話・・・それだけ・・・。
「連れ娘っていうのは・・・その・・・」
「ん?」
急に女の子はもじもじしだし、こころなしか顔もほんのり赤くなっている。
「わかんないかな、ンチョわさ、デリカシーって聞いたことないわけ?」
ギタコじゃ急に二人の間に割って入ってきた。
「お前、なんだよ急に・・・」
「だって、裏葉いないし、アオジは女の子とどっか行っちゃったし。ギタコは暇をもて遊んでいるんだけど」
「ん、なこと言ったって・・・」
「ギタコ?・・・、神崎さんのあだ名?」
「あだ名違う、神崎、偽名」
女の子はギタコの電波キャラについて行けず首をかしげる。
「・・・、ギタコって呼んであげて・・・」
困惑する彼女に明彦は理解を求めた。
「じゃあ・・・ギーちゃんだ」
「ギーちゃん?」
「そっ、ギタコだから、ギーちゃん。そういえば病気はもういいの?」
「病気?」
「大丈夫、もう完全に元気だからこいつ」
ギタコは病気のために転入が遅れたということになっているらしいが、今朝行われた自己紹介で間違いなく、頭の方の病気だと思われたに違いない・・・
思い出すのも酷な話しだ・・・
「んで、連れ娘って何だよ?お前知ってんだろ?」
「YES、連れ娘って言うのはね、アレしようって言って男の人をアレする所に連れ込んで、男の人がアレしている間にお金を持ってちゃう悪い女のことを言うんだよ」
「ぎーちゃん・・・」
「すまん、ギタコ・・・」
「礼はいちごにゅーぎゅーでいいよ」
「・・・」
ギタコの要所、要所で気を遣ってくれた説明はとてもわかりやすかったが、その分、ダイレクト過ぎて・・・殆ど変わらなかった・・・
「んで、あんた誰?」
「失礼だっての・・・」
「別にいいよ。私は栗城玲奈。みんなからは委員長って呼ばれてる。よろしく」
委員長はためらいもなくギタコに手を差しのべた。
流石は委員長というところか、人格者でいらっしゃる・・・
だが何を思ったのだろうか・・・、ギタコは差し出された手を不思議そうな顔をして眺めているだけだ。
「お前・・・これは握手だよ・・・」
「握手・・・?あぁーっ、これがダチ公の契りってやつね?」
「・・・そうです、そうですよギタコさん・・・」
「ぎーちゃん・・・」
次に出てくる言葉は大方予想がついた。
石神よ・・・お前の悪質なレクチャーが・・・ギタコのデビューをダメにしたぞ・・・
「なんか・・・おもしろいね」
「へっ?」
「よく言われる、クリキンも美味しそうな名前だよね」
「クリキン?・・・ぷぷっ、何それ・・・本当美味しそう」
石神よ・・・お前のレクチャー・・・無駄にはならなかったぞ
ともかく、意外な所からであったがギタコには、権利能力者以外で初めての友だちができた。
それは同時に、ギタコが普通の世界で手に入れた最初普通の幸せだった。