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小心者の僕は神の遊戯の中で俺様として虚勢を張ってイキる!  作者: 安ころもっち


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第九話「チアガールお姉ちゃんきた!」


 四日目の朝。


 地球のネット上では、ある話題で持ちきりになっていた。


 あの薄汚れた部屋の前で繰り広げられた一瞬の奇跡についてだ。


 殺伐としている黒木竜也の専用板から隔離され、細々と書き込まれていた擁護板で、今後の伸びを予感させる大きな動きが加速していた。




――― No.76 擁護専用掲示板※姉含む その5


125 :神の信徒@ななし:20XX/10/28(土) 09:38:15.11 ID:KiT78uNn


 チアガールお姉ちゃんきた!


132 :神の信徒@ななし:20XX/10/28(土) 09:39:22.45 ID:MoE54sAy


 俺も見た。


 朝から眼福すぎる。生きててよかった。


145 :神の信徒@ななし:20XX/10/28(土) 09:40:50.88 ID:SaK21tIo


 録画したい!


 なんで神の配信は録画不可なんだよ!


158 :神の信徒@ななし:20XX/10/28(土) 09:42:10.01 ID:KiT78uNn


 神の力の前には録画なんて暴挙できないのですわ。


 諦めてその無駄に残っている網膜に焼き付けろ。


170 :神の信徒@ななし:20XX/10/28(土) 09:43:15.66 ID:YuR99oKo


 心のカメラに保存して使用している。


172 :神の信徒@ななし:20XX/10/28(土) 09:44:52.68 ID:MoE54sAy


 同じく。


 ってか伸びが凄いな。


185 :神の信徒@ななし:20XX/10/28(土) 09:45:00.22 ID:MoE54sAy


 今公式みてきたらアーカイブ特集ってページ出来てた。


 『聖女の応援』ってタイトルで動画上がってる!


198 :神の信徒@ななし:20XX/10/28(土) 09:46:25.77 ID:HaN33kSu


 マジですか!ナイスプレーだな神、まさに神!


 行ってくる。


210 :神の信徒@ななし:20XX/10/28(土) 09:48:10.99 ID:KoM11eTa


 チア姉ちゃんあった。


 保存した。イイネが上がり続けている!


225 :神の信徒@ななし:20XX/10/28(土) 09:49:45.33 ID:SaK21tIo


 あれってポイント換算されてるっぽ。


 他の人はお食事シーンとか、ダンジョン情報とかも伸びてるな。


 意味不明な動画が高評価はあるけど、軒並み可愛い女の子が上位を占めてるのは俺達のおかげだよな!


238 :神の信徒@ななし:20XX/10/28(土) 09:51:20.55 ID:YuR99oKo


 >>225

 他の奴のネタはNGです。


242 :神の信徒@ななし:20XX/10/28(土) 09:52:28.94 ID:SaK21tIo


 >>238

 このぐらいなら良いだろ?


250 :神の信徒@ななし:20XX/10/28(土) 09:53:05.11 ID:KiT78uNn


 >>225

 総合でどうぞ。


262 :神の信徒@ななし:20XX/10/28(土) 09:55:30.88 ID:MoE54sAy


 二位の直美ちゃんの食事シーンは姉ちゃん動画の半分ぐらいだから、トップ取れそうだ。


 って感じのカキコならいいだろ?(プンスコ


275 :神の信徒@ななし:20XX/10/28(土) 09:56:35.68 ID:HaN33kSu


 >>225

 そうだな。


288 :神の信徒@ななし:20XX/10/28(土) 09:57:15.44 ID:KiT78uNn


 >>225

 うむ。


295 :神の信徒@ななし:20XX/10/28(土) 09:59:40.01 ID:KoM11eTa


 俺達は黒木をどうしたいんだろうな?


302 :神の信徒@ななし:20XX/10/28(土) 10:01:38.87 ID:MoE54sAy


 専用板の方はアンチが集まってるし、ここの住人はまったり姉を応援してたいだけだろ?


305 :神の信徒@ななし:20XX/10/28(土) 10:02:10.66 ID:SaK21tIo


 まあ引きこもりの割には頑張ってる奴には好感が持てる。


309 :神の信徒@ななし:20XX/10/28(土) 10:05:38.08 ID:KoM11eTa


 >>302

 うむ。


312 :神の信徒@ななし:20XX/10/28(土) 10:10:38.49 ID:SaK21tIo


 ここも少し落ち着いたな。


315 :神の信徒@ななし:20XX/10/28(土) 10:22:05.80 ID:KoM11eTa


 みんな動画見に行ったんだろ?


318 :神の信徒@ななし:20XX/10/28(土) 10:32:45.66 ID:MoE54sAy


 なあ、リア視聴してるよな?


 なんだあれ。デカすぎないか?


330 :神の信徒@ななし:20XX/10/28(土) 10:35:10.99 ID:HaN33kSu


 まじだ。猪?

 いや、サイズがおかしいだろ?軽自動車くらいあるぞ。


331 :神の信徒@ななし:20XX/10/28(土) 10:35:42.18 ID:SaK21tIo


 あれキングボアだろ?勇者がやっと倒したやつ!逃げろよ黒木!


333 :神の信徒@ななし:20XX/10/28(土) 10:37:45.49 ID:MoE54sAy


 あれ終わったんじゃね?


335 :神の信徒@ななし:20XX/10/28(土) 10:38:25.48 ID:KoM11eTa


 うむ。



◆◇◆◇◆



 森の空気は今日も重く湿っている。


 僕は鬼竜一号を担ぎ街を目指すため、太陽を頼りに北へと、昨日よりもさらに鬱蒼とした深い森の中を突き進んでいた。


 金策が必要なので移動しながら狩りを行い、魔石や素材を集めなくてはならない。


 出発前、すでに手作りの袋には素材がぎっしりだが、明らかに格下の魔物の素材は魔石を残して一旦捨てた。


「へっ、どいつもこいつも雑魚ばかりだぜ!」


 目の前に現れた少し大きめの角ウサギを一撃で粉砕しながら、僕は呟く。


 斬撃スキルの威力は凄まじく、ただの木の棒であるはずの鬼竜一号が、鋼鉄の剣のように魔物の肉を断っていた。


 だが慢心はしない。


 いやできない。


 体の芯に残る恐怖が、常に警鐘を鳴らしているからだ。


 その証拠に、進むほどに大型の魔物が出始めている。


 慎重に、しかし確実にそれらを仕留めていった。


 目の前には木々が少し開け、その木々の隙間からさらに深い森が見えていた。


 もしかしたら魔物たちの休憩場?そんなことを考えた時だった。


 地面が微かに揺れた。


 ズシン、ズシンという重い音が物凄い早さで近づいてくる。


 僕は足を止め、音のする方へ視線を向けた。


 開けた場所のすぐそばにあった木々が揺れ、メリメリという音と共に何かが迫ってくる恐怖を掻き立てていた。


「な、なんだ?」


 広場に出ようと走り出した僕は、姿を現したのは絶望的な質量の塊を見て唖然とした。


 ゲームや転生者なんかに出てくる『ワイルド・ボア』といった魔物だろうか?


 全身を尖った剛毛で覆っている。


 その口からは巨大な牙が二本、天に向かって突き出ている。


 広場に出たソレは立ち止まり、鼻息を荒くさせ僕を見ているようだ。


 ガツガツと蹄が地面を削る音が重く僕の心を締め付ける。


 今までのネズミやウサギとは格が違う魔物の出現に、僕の本能が警鐘を鳴らす。


 勝てない。


 逃げろ。


 だが、僕の足がすくんで動かなかった。


「ふ、ふざけんなよ!」


 震える唇で、僕は虚勢を吐き叫んだ。


 ここで逃げたらまた昨日の僕に戻るのだ。


 姉ちゃんに「俺様は最強だ」と言ったばかりだろ?


「おい……、豚野郎……」


 僕は鬼竜一号を構えた。


「俺様の通行の邪魔なんだよ!そこをどけっ!」


 その瞬間、ボアの目が赤く妖しい光りを放つ。


 そして、轟音と共にこちらに迫ってきた。


 速い。


 巨体に見合わぬ速度だ。


「うわぁぁぁ!!!!」


 僕は叫びながら横へと跳んだ。


 ドォォォン!


 背後の大木がボアの突進を受けてへし折れる音がした。


 衝撃で地面が揺れる。


 あんなの喰らったら即死だろ!


 這いつくばったままボアを見た。


 ボアは悠々と向きを変え、再び僕に狙いを定めている。


 殺される。


 嫌だ。


 死にたくない。


 まだ死ねない。


「お前が死ねぇぇぇ!!!」


 恐怖が攻撃衝動へと変わる。


 僕は弱い心を、恐怖をねじ伏せながら立ち上がり、無我夢中で鬼竜一号を振りかぶり、そして全力で振り下ろした。


「ざんっ、げきっ!」


 スキルを発動させる。


 相棒がボアの鼻先を打ち、硬い石を殴ったような音がした。


「ブモォォォッ!!!」


 ボアが悲鳴を上げ、その勢いは止まった。


 どうやら少しは効いたようだ。


 ダメージが入っている。


 だがそれ以上に僕の手は痺れ、仕留め損ねたことによる恐怖が心を支配する。


「かてーんだよ!この豚ぁー!」


 僕は鬼竜一号で自身の脛を殴り、痛みで溢れる涙をこらえながらボアの側面へ回り込んだ。


 無防備だったボアの太い首筋辺りを二度目となる斬撃による一撃を振り下ろす。


 グシャリという鈍い音が森に響く。


 普通の神経なら、生き物を殴る感触に手が止まるはずだ。


 だが僕は止まらなかった。


 止まったら殺されるという恐怖が、僕を衝動的に突き動かしていた。


 ボアが大きな悲鳴を上げる。


 暴れ出し首をふったボアの牙が僕のジャージをかすめ、脇腹に熱い痛みが走る。


 鮮血が飛び散り視界が赤く染まる。


「痛ぇっ!この野郎、大人しく殺されろ!」


 痛みは僕を怯ませるどころか、さらに恐怖を掻き立て、攻撃を続ける原動力となった。


「俺様に血を流させたんだ!死んでも許さねえからな!お前のそのかてー肉、煮込んで喰ってやる!」


 叫びながら僕は、鬼竜一号の先端をボアの目に突き立てた。


 ブチリと嫌な手応えを感じ一瞬冷静になる。


 たうち回るボアの背に飛び乗り、馬乗りになる。


「観念しろ豚野郎!俺様の経験値にしてやるぜぇぇぇ!!!」


 何度も何度も振り下ろす。


 両手に力強く握った相棒を、まるでハンマーでくいを打つように、ボアの背に何度も振り下ろす。


 骨が砕ける音が聞こえた。


 ボアが動かなくなった。


 返り血で視界が赤く染まる。


 息ができないほどに興奮した僕は、叫びながら、腕が千切れるほど何度も振り下ろしていた。



◆◇◆◇◆



――― No.76 擁護専用掲示板※姉含む その5


355 :神の信徒@ななし:20XX/10/28(土) 10:45:30.11 ID:YuR99oKo


 おい……。


368 :神の信徒@ななし:20XX/10/28(土) 10:48:15.55 ID:KoM11eTa


 あいつ、ただの木の棒でキングボア撲殺したぞ。


385 :神の信徒@ななし:20XX/10/28(土) 10:51:40.88 ID:KiT78uNn


 撲殺現場がサイコパスすぎる。


 なんだあの殴り方。躊躇なさすぎだろ。


402 :神の信徒@ななし:20XX/10/28(土) 10:55:05.22 ID:YuR99oKo


 目が完全にイってる。


 あれは演技じゃない。マジモンの狂気だ。


420 :神の信徒@ななし:20XX/10/28(土) 10:58:30.66 ID:MoE54sAy


 ドン引きだわ……。


 俺様ロールとか言ってたけど、中身はただの野獣じゃねーか。


438 :神の信徒@ななし:20XX/10/28(土) 11:02:55.99 ID:HaN33kSu


 姉ちゃん、これ見てんのかな。


 弟が血まみれで魔物に馬乗りになってる姿を。


455 :神の信徒@ななし:20XX/10/28(土) 11:06:20.33 ID:KoM11eTa


 いや、これは生きるための必死な行動だろ?


 綺麗事じゃ生き残れない世界なんだよ、あそこは。


472 :神の信徒@ななし:20XX/10/28(土) 11:10:45.77 ID:SaK21tIo


 にしてもグロい。


 カメラワーク自重しろ。


488 :神の信徒@ななし:20XX/10/28(土) 11:15:10.11 ID:KiT78uNn


 でも勝ったな。


 あのデカい猪に、ソロで、初期装備(木の棒)で。


491 :神の信徒@ななし:20XX/10/28(土) 11:19:35.44 ID:YuR99oKo


 黒木竜也、お前は何者なんだ。


 ただのヒッキーじゃないのか?


493 :神の信徒@ななし:20XX/10/28(土) 11:19:38.04 ID:KiT78uNn


 姉共々今後に期待。



◆◇◆◇◆



 ボアが光の粒子となって消えた。


 僕は血だまりの中に座り込み、荒い息を吐いた。


 全身が痛い。


 脇腹の傷がズキズキと脈打つ。


 だが、生きている。


「ははっ」


 乾いた笑いが漏れた。


 勝った……、勝ったんだ。


 ドロップ品として残された巨大な牙と肉塊を拾い上げる。


 体が熱い。


 先程までの疲労が吹き飛び、力が漲ってくるのを感じる。


 いわゆるレベルが上がったという奴なのだろう。


 いつも以上の高揚感を感じ、格上の敵を倒したことで大幅な強化がされたのかもしれないと期待してしまう。


 僕は鬼竜一号を握りしめた。


 血と脂で汚れたその棒は、さらに手にしっくりと馴染んでいた。


「見たか、雑魚ども、俺様は……、無敵だぁぁぁーーー!!!」


 誰に向けたわけでもなく叫ぶ。


 僕は立ち上がり、開けた場の先、森の奥を見据えた。


 怖い。


 まだ手足は震えている。


 だが立ち止まるわけにはいかない。


 この異常なレベリングこそが僕が姉ちゃんを守り、元の世界へ帰るための道となるのだから。


 僕は再び、死と隣り合わせの森を走り出した。


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