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小心者の僕は神の遊戯の中で俺様として虚勢を張ってイキる!  作者: 安ころもっち


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第五十三話「これに味をしめたら、これからも良いのがあれば持ってこいよ?俺様が高く買い取ってやるから!」


 あの一戦から、数日が経過した。


 僕は昼夜問わず、1人で最古のダンジョンの最下層を目指し、狩りを進めていた。


 周囲には、魔物のドロップ品である魔石や素材が放置され、いくつも転がっている。


 どれも一撃で仕留めたものだが、僕の心に達成感はなかった。


 藤田さんが使っているような、いわゆる魔剣と呼ばれる類いの武器の、燃料目的の魔石なら、いくつか確保しておけば良いのだから。


 今は一匹でも多く狩り、装備品が落ちるのを願いながら狩りをしていた。


 あの日、目の当たりにした圧倒的な力の差が、今も脳裏に焼き付いている。


 あの戦いの後、僕は半日ほど意識を失っていた。


 目が覚めた瞬間、全身を襲ったのは激しい不安、強い敗北感だった。


 正直に言って、僕たちは運が良かっただけだ。


 もしあの男が最初から殺す気で、本気で動いていたら、僕たちは皆殺しにされていただろう。


 たとえ準備を整え、全員が死力を尽くし、命を削って戦ったところで、赤子の手をひねるように潰されていたに違いない。


 それほどまでに、僕らとあの男の間には、埋めようのない力量の差が存在していた。


 今のままでは、次に彼らが現れた時に誰も守れない。


 自分自身すら、生きて明日を迎えることはできないだろう。


 その不安と恐怖が僕を突き動かし、気力が続く限り、このダンジョンで力を蓄え続けている。


 彼らが再び襲ってきても、最低限の抵抗ができるように。


 僕は一人で相棒である鬼竜三号、大鎌を振り回し、神経を極限まで研ぎ澄ませる。


 闇雲に力を振りかざすだけでは、あの男たちには通用しないことは、十分過ぎるほどに分かっていた。


 全力の一撃を正面から受け止められるのなら、意識の外側から攻撃を当てるしかない。


 攻撃のパターンを増やし、立ち回りを変え、もっと効率的に、もっと狡猾に敵を穿つ方法を模索する。


 そのために新たなスキルが必要だとも感じているが、「思う通りのスキルが生えれば苦労はしないよね」と、自虐的に吐き捨てる。


 負荷で脳が疲弊する狂戦士スキルは使っていないが、休まず戦う今、脳が痛みを感じている。


 そろそろ限界が近いのだろう。


 三日後のレイド戦。


 それまでの間、あの化け物たちがこちらを忘れてくれることを祈るしかない現状。


 そんな情けない願いを抱えながら、僕はただひたすらに魔物を狩り続けた。


 あれから、常に背後に誰かが立っているような、得体の知れない不安と恐怖が消えない。


 僕の心は休まることがなかった。


 装備の拡充も必須だったが、今の僕たちに見合う装備はなかなか見つからない。


 唯一、あの戦いで紙のように貫かれてしまった、佐々木くんの大盾の代わりは見つかった。


 あれは彼にとって魂のような装備だったが、もはや修復不可能なほどに破壊されていた。


 代わりとなる盾として、酒井くんが「魔封じの大盾」というドロップ品を提供してくれた。


 魔力耐性が非常に高く、今の佐々木くんに必要な性能を備えたダンジョン産の大盾。


 酒井くんは「仲間なんだからお金はいらない」と言ってくれたが、僕は当然それに反発し、俺様を演じていた。


 金貨がパンパンに詰まった重い大袋を、酒井くんに投げつけた。


「この程度で良いだろ。元はお前たちが必死に稼いだ金だけどなっ。これに味をしめたら、これからも良いのがあれば持ってこいよ?俺様が高く買い取ってやるから!」


 そう吐き捨てると、酒井くんは困ったような顔をしながらも、袋を受け取った。


 伊藤くんに、僕らが使えそうな装備も探させていた。


 特に、僕の使う鬼竜三号の代わりとなる武器が必要だった。


 大鎌は確かに強力だが、あの男の障壁を割るには足りていなかった。


 しかし、今のところ、鬼竜三号を超える武器は見つかっていない。


 この世界に存在する既製品では、到底使い物にならないので、新たなダンジョン産の武器を必要としていた。




 装備は見つからぬまま、時間は無情にも過ぎていく。


 明日はレイド戦。


 奴らがいつまでも待ってくれるという保証はどこにもない。


 あれからずっと、何かの気配を感じるたびに心臓が跳ね、冷や汗が流れていた。


 そんな情けない自分を誤魔化すように、僕はさらに深い階層へと足を踏み入れ、昼夜問わず魔物を狩り続けていた。


 僕は、いや、僕らは強くならなくてはいけない。


 ここ数日、岡崎くんたちもダンジョンにこもり始めた。


 今までは魔物におびえ、最低限の狩りしてこなかった宇野くんや、楽観的な宍戸くんまでもが、彼らと一緒についてまわり、強くなろうと根性を見せていると、岡崎くんから報告を受けていた。


 それぞれが思うところあったのだろう。


 今までは僕や酒井くんがいれば、どうにかなるなと楽観的だった現実が一変したのだから、当然と言える変化だろう。


 僕は自身の手をじっと見つめた。


 申し訳程度の効果しかない精神安定の指輪をつけてはいるが、実戦ではどうなるか分からない。


 使い古した籠手も新たに落ちた物を使ってはいるが、正直あまり強化された感じがしない。


 速度向上のアンクレットや、魔力耐性のある胸当てなども揃えたが、奴らと対峙したのなら、恐らく気休め程度だろう。


 いざとなれば限界を超えたドーピングをして、差し違える覚悟もあった。


 いまさら立ち止まることなど、許されない。


 クラスメイトの蘇生は、一旦後回しにせざるを得ない。


 全員を蘇生させるなら少なくとも今月と来月、二回必要だ。


 それに、全員帰還の方法がまだ分かっていない。


 このままでは、近い将来、奴らに皆殺しにされる。


 新たな武器、ステータスの強化。


 僕は、生き残るために覚悟を決めた。


 そして、その覚悟を嘲笑うように、運命の歯車は大きく回り始めていた。



◆◇◆◇◆



――― ルミナス王国王城


Side:ラルサンズ・デ・ルミナス


 王城の一室。


 私の精神は限界に達しようとしていた。


「なんなんだ、あの強さはっ!」


 冷や汗を背に感じ、不安から、煌々と明かりが照らす部屋の中を、ウロウロと落ち着きなく歩き回る。


 先日の戦いを記録した映像は、手振れがひどく、見るに堪えなかったが、それほどまでに現場の惨状をそのまま映し出していた。


 繰り出される強大な力の数々。


 地面は大きく抉れ、無残な景色へと変えられていた。


 映像越しでも伝わってくる絶望的なまでの力の片鱗。


 あれらは本当に人間なのか?


 どこかの国が極秘に開発した魔道兵器、人造人間か何かなのではないか?


 自分の常識が根底から覆されるような感覚に陥り、未だに震えが止まらなかった。


 中でも、教会から遣わされたあの男の強さは異常だった。


 あの力がこちらに向けば……、そう思うとぞっとする。


 そっとしておくべきだったのでは?


 関わるべきではなかったのだろうか?


 私は、とんでもない奴らと関係を持ってしまったのでは、という不安が次々に湧いてくる。


 神とも思えた一人の強者。


 それを多勢とは言え撃退したテンセイシャと呼ばれる集団。


 衝撃を受けるには十分な戦い。


 だがそこに、大きな疑問もあった。


 教会の二人は、あれだけの力を持ちながら、なぜあの日、二人係でテンセイシャの連中を殲滅しなかったのか……。


 そう考えるたびに、激しい怒りがこみ上げてくる。


 もしあそこで奴らを根絶やしにしていれば、少なくともこんなに怯える日々はなかったはずだ。


 圧倒的強者が自身の味方をしてくれたという事実だけが、残ったはずなのにと、悔しさをにじませる。


 当然、教会側に、なぜあそこで手を引いたのかと問い詰めさせた。


 返ってきた回答は、あまりにも理解しがたいものだった。


「もう少し泳がせれば、もっと熟成するはずだ」


 熟成、という言葉の意味が私には分からなかった。


 まるで果実かワインのように、人間を扱っているような言い草だ。


 訳の分からない理屈で勝機を逃した教会への、不信感が泥のように積もり、溺れそうになる。


 そんな理解不能な理由により、テンセイシャの奴らは、今この瞬間も我が物顔でこの国での生活を謳歌している。


 民衆を救う英雄のような顔をして、贅沢を尽くし、好き勝手に振る舞っている。


 その事実が、自身のプライドを激しく逆なでした。


 だが、今の私には、彼らに立ち向かう(すべ)はない。


 何か画期的な策を思いつかなかった。


 今はただ、時が来るのを待つしかないのだろうか?


 自問自答を繰り返す無力な自身に対して、激しい嫌悪感すら抱いていた。


 部屋にあるよく分からない壺を蹴り飛ばし、叫び声を上げる。


 侍女があたふたし、片付け始めた。


 明日にも他の何かがそこに置かれるだろう。


 そうやって当たり散らすたびに、自分の惨めさが強調されるようで、余計に腹が立った。


 耐え忍ぶしかなかった。


 腹の底で燃え上がる黒い怒りを、何かにぶつけながら耐え忍ぶ。


 壁を殴りつけた拳が赤く腫れ上がっても、その痛みすら奴らのせいだと苛立ちを強くする。


 何もできない自分への罰なのか?


 そう感じ憤りながら、その怒りを糧に、ただじっと耐え続けた。


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