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小心者の僕は神の遊戯の中で俺様として虚勢を張ってイキる!  作者: 安ころもっち


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第四十八話「蹂躙せよ、メテオ・スラーシュッ!!!」


 どれだけ必死に魔物を狩り続けたのだろうか?


 その後の酒井くんのパーティは、凄まじい粘りを見せていた。


「蹂躙せよ、メテオ・スラーシュッ!!!」


 何度目だろう。


 彼の叫びとともに、双竜に打ち付けられた剣。


 それに呼応するように、天空からは燃え盛る巨大な炎の剣が降り注ぎ、双竜の放つ冷気を焼き、その体を貫く。


 勇者のスキルは派手なのが多いが、威力の方もそれなりにあるようだ。


 だが、特筆すべきはその後衛だ。


 池田さんと堀田くんが息の合ったスキルの発動で、防御バフと魔力供給を絶え間なく回している。


 それにより、水を得た魚のように強力な攻撃を繰り出す酒井くん。


 さらに、前回酒井くんが蘇生させた飯田くんたち三人が、死への恐怖を隠しながら必死に攻撃を繰り返している。


 それにより、双竜の意識を酒井くんから逸らしていた。


 酒井くんは、僕に絡まなければ優秀なのに。


 そう感じながらその光景を眺めていた。


 僕も負けじとフルバーストを何度も叩き込み、すでにゲージは半分を切っていた。


 ゲージが減るにしたがって、双竜の動きは鈍くなる。


 もう、終わりは近いだろう。


 止めを刺すのは僕だ。


 そう思った時、双竜は一際大きく吠える。


 そして、白い空間が凍てついた。


 床一面に鋭い氷柱が生え、体感温度が急激に下がる。


 そして、恐怖を感じるほどに膨れ上がる魔力。


 双竜の体が氷に覆われ、一回り大きく、その氷の翼を広げる。


「なるべく一か所に固まれ!竜から距離をとって結界を重ねろ!」


 酒井くんの声が周囲に響く。


 その声に反応するように、結界を解除したクラスメイトたちが、双竜から距離をとるように離れながら集まっている。


 それらを守るように佐々木くんが動いていた。


 酒井くんたちも集まっている。


 僕は、クラスメイトたちを守るように盾を構える佐々木くんの前に立ち、鬼竜三号に魔力をこめた。


 大鎌の穂先が、黒く稲光のような魔力をまとわせる。


狂戦士(発狂しろ)!喰らえ!喰らいつくせ!すべてを……、俺様が、ナンバーワンだ!!!」


 吐き出されたのは、真っ白な炎のような氷のブレス。


 歪で鋭利な棘が、無数に添えられたような巨大な氷の塊。


 それがまるで燃えているように揺らめきながら、いくつもこちらに向かってくる。


「黒木様!」


 藤田さんの不安そうな声が聞こえる。


「心配、してんじゃねー!」


 意識が飛びそうなほどの高揚を感じながら、どす黒く染まる視界の先に、震えそうになる魔力が渦巻き迫る。


 背後からいくつかのスキルがかけられているようで、体から力が湧いてくる。


 だが僕は、理性を完全に失い叫んでいた。


「多重っ、斬撃っ、フル、バーストーーー!!!」


 叩きつけた斬撃で氷の炎から溢れる魔力を喰らう。


 大鎌が喰らった魔力により、その腕に力がこめられる。


 そして、目の前の氷塊を砕き、地面へと振りぬいた。


 もう一度。


 穂先を返し、上へと突きあげる。


 多重スキルの効果により腕が勝手にそう動く。


 腕の感覚は無い。


 だが動く。


 喰らう。砕く。叩きつける。


 一連の動作を繰り返しながら、僕は遂に意識を失った。




 暗闇の中、光を求め手を伸ばす。


 暖かい光。


 狂おしいほどの破壊衝動が薄れていく中、僕は目を開ける。


 視界に入ってきたのは、死んだ目をした藤田さん。


 その目が一瞬ピクリと動くが、すぐにその表情は無となった。


 そして、後頭部が柔らかな何かに守られていることに気付く。


「黒木くん、大丈夫?」


 佐々木くんが覗き込んできた。


 僕はそれに嫌そうに舌打ちをしながら、藤田さんの膝枕により寝かされているのだと理解した。


「あー、どうなった?俺様の一撃で決着がついたか?」


「黒木くん、あの後、酒井くんが止めを刺して終わったよ」


 笹田さんの説明にホッとする。


「ちっ、クソ勇者が、棚ぼた喰いやがって……」


 そう悪態をつきながら、僕は体を起こす。


「順位は?」


 そう言いながら周りを見回すと、僕の様子を不安そうに窺っている酒井くんと目が合った。


 何も言わない酒井くんから目を背け、僕は空に浮かぶ結果を確認した。


――――――


 一位、黒木達也 20,000ポイント。


 二位、酒井幸助 16,900ポイント。


 三位、藤田美織 16,200ポイント。


――――――


 前回の倍程度のポイントではあったが、その程度では覆ることが無いだろう。


 だが、このままポイントが増えるなら、レイドの結果次第でランキングがひっくり返ることも有りえそうだと感じた。


「次こそは負けないからな……、あと、明日、例のあれが終わったら話がある」


「俺様の下僕になる相談か?暇だったら聞いてやるよ」


 僕の返答に酒井くんは何も言わずに仲間たちの元に戻って行った。


 そして、王都の拠点へと強制転移で戻された僕は、ベッドに潜り込み死んだように意識を遮断した。




 翌日、だらだらと時間を浪費した僕は、昼前にログアウトを発動する。


 そして、掲示板が緩やかに感じたことに恐怖を感じつつ、拠点に戻り、月間ランキングの発表の時を待った。


 そして時間となる。


 今回も報酬として六人の蘇生が実現した。


 一位となったボクが召喚したのは岡崎くん。


 そして二人の女子。


 一人は峰里可憐。


 天賦は裁縫師なので、衣料品なんかを作らせれば良いだろうという選択だ。


 そしてもう1人。


 井上美咲。


 過去の恨みが無いわけではない。


 でも、賢者という天賦は今後の戦いに必要不可欠になるだろう。


 そう感じての選択だった。


「また蘇生?つまんないなー」


 そう言う神が指を鳴らすと、三人が即座に蘇生された。


 岡崎くんは周りを見て即座に状況を理解したようだ。


 峰里さんは混乱した様子だ。


 そして、井上さんは倒れ伏したまま、周囲を見渡して悲鳴を上げた。


「え?なに、ここ……。私、死んだはずじゃ……。嫌、嫌あああ、助けて!」


 彼女は錯乱し、這いずるようにして逃げようとした。


 かつて教室でカースト最上位に君臨し、他人を見下していたあの高慢な態度は微塵もない。


 悲惨な最期を遂げた彼女に同情するが、僕はここで優しさを見せるべきではない。


 僕はゆっくりと彼女の元へ歩み寄り、その前に立った。


「よお、井上。久しぶりだな」


「く、黒木……?なんなの?これ、どうなってんのよ!ねえ、ここはどこなの!そ、そうだ、あんた、私を助けなさい!命懸けで私を守るのよ!」


 喚き散らすようなその言動に呆れるが、僕は鬼竜二号を取り出し、乱暴に地面に叩きつけた。


 睨みつけると、その間に酒井くんが割って入ってくる。


 その背後にはすでに二人、新たな蘇生者が見えた。


 その二人には、堀田さんが状況を説明しているようだ。


「黒木、彼女にまでそんな態度で接することないだろ!」


 その言葉に笑顔を見せたのは井上さんだ。


「こ、幸助?やだっ、幸助がいるのね!なら、あんたはいらないわ!ねえ幸助、私を助けてくれるでしょ?」


「いや、俺は……」


 酒井くんの腕を掴みそう媚びる井上さんに、苦笑いの酒井くん。


「君を蘇生したのは黒木だ。この後、黒木と一緒に転移される。だから……」


 そこまで言ったところで、井上さんが困惑する表情をみせる。


「なんで、蘇生?そうよ!私は死んだのよ?なんで?これは、どうなってるの。説明しなさいよ!」


 発狂したように僕に詰め寄り、苛立ちからか手を振り上げる井上さん。


 その手は藤田さんに捻り上げられた。


「黒木様に危害を加えることは許されません」


 無機質な声でそう言う藤田さんに、悲鳴を漏らす井上さん。


 二人を無視するように横を見る。


 少し離れた場所に、峰里さんともう1人、藤田さんに蘇生させるよう伝えていた、呪術師の天賦を持つ宍戸くんが立っていた。


 二人に状況を説明をしている笹田さんの横で、佐々木くんが静かに見守っている。


 そんな中、僕の視界はホワイトアウトし、拠点へと戻ってきた。


 ここはどこ、と発狂する井上さん。


 峰里さんと宍戸くんは、まだ状況を把握しきれずには混乱していた。


 ただ一人、状況を完全に把握できていた岡崎くんは、僕に縋りつきながら謝罪の言葉を口にしている。


「お前ら、さっさと出てけ!三号、後はお前が説明しろ!」


 そう言うと、笹田さんは井上さんを引きずるように、峰岸さんと宍戸くんは、佐々木くんに促され、部屋を出ていった。


 岡崎くんは、再度頭をさげ謝罪を口にすると、腰にしっかりと復活していた魔道袋から連絡用の魔道具を取り出し、深淵の竜騎士に連絡を取り部屋を出ていった。


 そして、取り残されたように藤田さんが立っている。


 僕をじっとみる感情の無い瞳。


 長い沈黙の後、悩みぬいた末に行動を開始する。


「戦った後はたぎるんだよな!」


 そんなテレビで見たようなセリフを口にして、恥ずかしくなった感情を誤魔化しながら、藤田さんの手を強引に引く。


 そして、彼女を脱衣所へと連れ込むと、感謝と労いを伝え、今後の計画を話し合うのだ。




 数時間後、事後を装った藤田さんを自室に帰し、そのタイミングで訪ねてきた酒井くんを招き入れた。


 彼の顔は、どことなく緊張しているようだった。


 まさか本当に僕の下僕になるとか言わないよね?


 そんな不安を感じながら、ソファにだらしなく腰をかけ、高圧的な態度で彼が話始めるのを待っていた。


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