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小心者の僕は神の遊戯の中で俺様として虚勢を張ってイキる!  作者: 安ころもっち


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第四十五話「大丈夫。油断はしないよ。そんな奴がきたら、警察が動く前に悟たちが、ね?」

本日二話更新。二話目。


 そのまま何をするでもなく意識を遮断した翌朝、僕は早速ログアウトを使った。


 自室に戻っても、特にやるべきことはない。


 情報を得た後は、すでに何度も読み終えた古い漫画本を引っ張り出してパラパラとめくったり、PCで無料の電子書籍を読んだりと、ダラダラと過ごす時間となった。


 その後も、ダンジョンで軽く汗を流す日々。


 ログアウトを使ってもダラダラと過ごす。


 一昨日前は悟さん、昨日は朝子さんが部屋前に待機してたので招待してみた。


 朝子さんには「私、強い男の人って好きなんだよねー」と妖艶な声で誘惑され、柔らかいものに顔を包まれ戸惑っていた。


 どうしたら良いのか?と固まっていると、「朝子?」と姉ちゃんの声。


 朝子さんが慌てた様子で僕から体を外すと、背後にいた姉ちゃんの笑顔が目に入った。


 その笑顔があまりに冷たく、僕は恐怖を感じ震えながら後ずさる。


 朝子さんは廊下へ飛び出し、土下座していた。


 そして今日、姉ちゃんが背もたれに手を置き、僕の背後からモニターを見ている。


 日を追うごとに、ネットの掲示板の反応が薄くなってきていることを感じてしまう。


 どうするべきか。


 このままでは僕へのヘイトが薄れてしまう。


「姉貴、まだキチガイがいっぱい湧いてるから、十分に気をつけろよ。あいつら猿より劣るバカだから、自爆テロでもしかねないからな」


 笑いながらそう言ってみる。


「大丈夫。油断はしないよ。そんな奴がきたら、警察が動く前に悟たちが、ね?」


 背後では、きっといつもの冷たい笑顔があるのだろう。


 そう思いながら、掲示板に煽り文句は書き込んだ。


 姉ちゃんたちに油断はないだろう。


 でも、安心はできない。


 そう考えた僕は、その日の夕方、再び強いヘイトを向けるための行動を実行に移した。


 宿の部屋に藤田さんを呼び出す。


「来いよ」


 僕は冷淡な声を装って彼女を脱衣所へと手を引いた。


 神フラッシュのメッセージが表示されたのを確認する。


 扉を閉め、二人きりになった瞬間、僕はしゃがみ込んで謝罪した。


「ご、ごめんね、藤田さん。またこんなことに付き合わせて」


「もう……、美織、でしょ?」


 そう言った彼女は小さく笑うと、僕をそのまま押し倒した。


 背中が床に当たり、前回と同じような体制になる。


 藤田さんは僕の名前を何度も連呼しながら、僕の胸に自分の頭を擦り付けてきた。


 戸惑いながらも、僕は今の状況を彼女に伝える。


「じゃあ、定期的にこういうことをしなきゃいけないよね?」


「えっ、いや、まあ……、そう、なのかな?」


 僕が曖昧に答えると、彼女は嬉しそうな笑顔で僕を見つめてきた。


 ここしばらく、彼女の死んだような無機質な目ばかり見ていた。


 やっぱり、彼女には笑顔の方が似合っている。


 そう思いながら、僕は言われるがままに彼女の背中に手を回した。


 何が彼女をここまで駆り立てるのだろうか。


 僕はただの、弱くて卑怯な引きこもりなのに。


 自嘲気味な考えが頭をよぎるが、せめて今は彼女の気が済むようにと、腕に力を込めて抱きしめ返した。


「じゃあ……、そろそろ良いよね?」


「えっ?何が?」


 聞き返した直後だった。


 彼女は不意に顔を上げ、少しだけ体を伸ばすと、僕の頬に唇を寄せた。


 柔らかく温かい感触が肌に伝わり、一瞬で顔が熱くなるのを感じる。


「ふふふ」


 彼女は満足げに笑うと、また僕の胸に顔を埋めた。


 心臓の鼓動が激しく打ち鳴らされる。


 必死に気持ちを落ち着かせ、数分が経過した。


「そろそろ、この後のことを考えない?」


「えー、もう……?じゃあ、私はまた死んだ目で部屋から出ていけばいいかな?あと、王国には釘を刺すんだよね?」


 彼女の鋭い問いに、僕は思考を巡らせる。


 とりあえず、また僕が彼女を襲ったということでヘイトを向けることはできるだろう。


 これだけで充分とは思わないけど、今はこれが精いっぱいだ。


 後は王国についてだ。


 早めに決着をつけておきたい。


 この街のダンジョンはもうクリアしてしまったし、王都には王家が秘匿するダンジョンがあるということも聞いた。


 そのダンジョンも利用できるようにしておきたい。


 この先、さらに強くなるための方法を模索しなければならない。


「じゃあ、明日からそれに向けて動かなきゃ……、また迷惑かけると思うけど、よろしくね」


「迷惑だなんて、私は大丈夫。私は黒木くんのためならなんでもできるから」


 彼女はそう答え、ふたたび僕の胸に顔をうずめる。


 まだ少しドキドキする中、多少の慣れも出てきたこともあり、実家で飼っていた犬のコロのことを思い出す。


 今はもういないけれど、子犬の時はこうやって甘えて頭を擦り付けてきたものだ。


 懐かしさがこみ上げ、僕はつい彼女の頭を優しく撫でた。


「黒木くーん……」


 耳元で、とろけるような甘い声が聞こえた。


 次の瞬間、今度は頬ではなく唇に、柔らかいものが触れた。


 頭が真っ白になり、僕の意識はそこで一度遮断された。




 僕はハッとして体を起こす。


 そこはまだ、脱衣所の中だった。


 床には柔らかい布団が敷かれ、僕の体には毛布がかけられていた。


 すでに藤田さんの姿はない。


 慌てて自分の衣服を確認するが、大きな乱れはない。


 ホッと胸を撫で下ろしつつも、唇に残った微かな感触を思い出すと、また体が熱くなった。


 僕は敷かれていた布団を魔道袋に突っ込み、ふらつく足取りで脱衣所を出た。


 外はもう深夜だ。


 なんだかひどく気疲れした僕は、自室のベッドに潜り込むと、泥のような眠りに落ちていった。




 翌朝、ログアウトを発動させ、視界がホワイトアウトする。


 慣れ親しんだ自室の匂いが鼻をくすぐる。


「おはよう竜ちゃん」


 笑顔の姉ちゃんが、いつものように開いたドアの前に立っている。


 僕は背筋に冷たいものを覚えながらも「あ、姉貴、おはよう」と右手を軽く上げる。


 弁解は……、必要ないだろう。


 そう思うことにした。


 僕は姉ちゃんを招待しつつ、PCの前に座る。


 王都の情報を確認しなくては、一時間はあっというまだから……、そう考えつつ、背後から感じる圧に冷や汗を流していた。


「竜ちゃん、昨日は、お疲れだったね」


「お、おう、ちょっと、色々あってな」


「へー」


 姉ちゃんは僕の肩をマッサージするように手をかけているが、とても力強く、効果はありだそうだと、痛みを堪えながら情報収集に集中する。


 掲示板を確認すると、予想撮り僕への罵詈雑言の嵐となっていたことに安堵する。


『死ねよクズ』『お前のやってることは許されない!』『この強姦魔め、地獄に落ちら』『絶対に殺しに行くからな!』


 殺害予告も大量に書き込まれていたが、これこそが僕の望んだ反応だ。


 アンチたちが活気を取り戻しているようで、何よりだ。


 僕はニヤリと笑い、キーボードを叩いた。


『お前ら、相変わらず暇そうだな。俺様は異世界で最高に楽しんでるぜ。異世界最高!ハーレムでも作ってもっと楽しく生きてやる!』


 送信ボタンを押し、燃料を投下する。


 一仕事終えた僕は、王都の情報を収集する。


 あの国の王族が居住している王城は王都にある。


 そこまでは知っている。


 王都は残念ながら転移陣が繋がっていないので、移動手段は基本的に馬車だ。


 それだと数日はかかってしまう。


 さらに調べていくと飛竜という竜の一種を使役した移動手段が存在することがわかった。


 しかしこれは、竜騎士と呼ばれる天賦を持つ、一部の者が利用できる特権だという。


 あの深淵の三人の中に竜騎士はいなかったけど、なんとか竜騎士に渡りがつけられないだろうか?


 そう考えた。


 そうこうしている間に、制限時間が迫る。


「姉貴、俺様は俺様だ!」


 カウントダウンが始まった中、絞り出した前回と同じ言い訳。


「わかってる」


 姉ちゃんの、言葉通りに受けとって良いかわからない返答を聞いたところで、僕の視界は宿へと戻ってきた。


 宿に戻った僕は、部屋の前にすでに待機していた三人を部屋に入れる。


「二号、あの深淵野郎、呼んで来い!」


 ソファに腰かけ、しかりつけるように佐々木くんにそう命じる。


 佐々木くんは気合の入った返事と共に背を向け、この宿にいる三人の部屋へと逃げるように去って行った。




 数分後、あの大男たちが部屋に入ってくるなり、僕の前で膝をついた。


「黒木様、ベガルタ、参上いたしました」


 従順な家臣のような豹変ぶりに、正直若干引き気味になるが、ここで俺様ロールを崩すわけにはいかない。


「ベガルタ。次は王都へ行く。俺様の財産に手を出した腐った王家を躾けるためにな。何か良い情報があったら教えろ」


 僕が高圧的に言い放つと、三人のうちの一人、細身の男が前に出た。


「ならばこのグイードにお任せを。私の直属の部下に、飛竜を操る竜騎士がおります」


「ほう……、竜か。便利そうだな。すぐにそいつを連れてこい!」


「はっ、心得ました。明日にはここへ来させましょう」


 グイードが恭しく一礼する。


 予想外にすんなり竜騎士という駒が手に入ることになり、呆気にとられながら、次の指示を命じる。


「王都には伊織、お前だけを連れていく。城を落とすのに、俺様1人で十分だが、雑魚はお前が始末しろ!」


「かしこまりました」


 僕の命令にうなづく藤田さん。


 計画が決まった。


 この国の王族に、僕たちに手を出したらどうなるか、教え込まなくてはいけない。


 そう考えながら、一人ダンジョンにこもり、神経を研ぎ澄ましていた。


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