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小心者の僕は神の遊戯の中で俺様として虚勢を張ってイキる!  作者: 安ころもっち


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第三十三話「今日も……、行っていいですか?」

本日二話更新。一話目。


 戻ってきた二人を加え、僕たちはダンジョンへと向かった。


 二十一日目のアップデートによる変化を警戒しつつ、いつものように四十一階層を、今日は四人で攻略していく。


 四人で攻略、とは言っても、僕はいつものように俺様として監視役を演じ、三人が上手く立ち回れるように調整をしようと考えていた。


 そんな矢先、佐々木くんが盾役としての役目を全うするため、二体の魔物の群れに真っ向勝負で対峙する。


 真っ赤な全身鎧を身に纏った騎士型の魔物、深紅の騎士(レッドアーマーナイト)が二体。


 僕は内心焦りながら、冷たく言い放つ。


「邪魔だ!下がってろ!」


 僕は彼を後ろへ突き飛ばすように引かせた。


 躊躇なく前に出て、その役割を果たそうとするさまは、昨日の午後、二人でダンジョンで頑張った成果なのだろう。


 その証拠に、僕の言葉に驚きつつも、すぐに体勢を立て直していた。


 僕は目の前に迫ってきた二体の足を、容赦なく叩き潰した。


「俺の導線に入るな!脳みそぶちまけられたいのか!」


「は、はい!」


 佐々木くんは僕の意味不明な指摘に、悲鳴のような返事をしながらも前を向く。


 そして、僕が片足を潰した二体を即座に盾を振り回し、残った足を破壊して無効化に成功させていた。


 僕が弱らせた魔物を中心に、次々と佐々木くんが機動力を奪っていく。


 佐々木くんも、この階層程度の相手なら、何とかなるほどの力を身につけることができたようだ。


 そう感じながら、背後から追う二人に目を向ける。


 だが、三人目の仲間である笹田さんの姿は見えない。


 そんな中、佐々木くんにより無効化されていた魔物たちが、藤田さんの攻撃により急所が突かれ、光となって消えていった。


 また早くなっている。


 そう思いながら華麗に飛び回る彼女を眺めていた。


 すると、藤田さんが戦っている反対側で、黒マントを羽織った骸骨の王(スケルトンキング)の首が飛んだ。


 目を凝らし、ようやく笹田さんを認識できた。


 それでも、少し意識を外せばすぐに見失ってしまいそうだ。


 これが天賦「隠者」の能力なのかと、僕は背中に冷たいものを感じた。


 大丈夫かな?


 そう思って群れをそのまま素通りさせる。


 佐々木くんが雄叫びを上げて盾で突進し、それらをまとめて魔物の命を刈り、何体かを取りこぼす。


 取りこぼした数体は、後ろの二人により光と消える。


「おせー、次行くぞ!」


 僕は良い動きになったなと内心で感心しつつ、次の獲物を探して走り出した。


「黒木くん、右の通路。魔物の群れが来る!」


 不意に笹田さんの声が耳元で響く。


 これが気配察知スキルの効果なのだろう。


 僕は聞こえるようにわざと大きく舌打ちをしながら、示された通路を目指した。


「早く止めを刺せ!効率よくドロップ品を回収しろよ、この役立たず!」


「もっとしっかり盾を構えろ!そのへっぴり腰じゃ、俺様に恩を返す前に死んじまうぞ!勝手に死んだら承知しねーからな、このグズが!」


 僕は佐々木くんに向かって、罵声ばかりを浴びせ続ける。


 そうでもしないと、俺様キャラを保てない。


 それほどまでに三人の動きが良かったからだ。


 特に藤田さんの動きが良すぎる。


 戦いの合間にランキング情報から彼女のスキルを確認する。


 俊足と集中という二つのスキルが増えていた。


 瞬発力を高め、精神的な揺らぎを少なくする常時発動型のスキル。


 彼女は昨夜、いったいどれだけダンジョンに籠もっていたのだろうか。


 ログを遡ると、集中スキルが発生してポイントを得ていたのは、今日の明け方の時間だった。


 頑張りすぎだよ。


 自分のことを棚に上げて彼女を心配してしまう。


 そんなに僕から逃れたいのかな?


 ふいにそう考え、急に気持ちが沈んでいく。


「おら二号!今のは二体まとめていけただろ!」


 僕は沈む心を誤魔化すように、理不尽な八つ当たりをした。


「うおー!」


 佐々木くんが叫び、残った魔物を押しつぶす。


 どうやら新しく覚えた突進スキルを使ったようだ。


 そんな彼は、僕に隠しきれない憎悪の視線を向けていた。


「やりゃできるじゃねーか!最初からやれ!」


 僕は吐き捨てるように言った。


 内心では藤田さんほどではないにしろ、彼の確かな成長に驚いていた。


 面倒そうについて回る佐々木くん。


 それでも、藤田さんに急かされ、僕への恨みもあって頑張ったのだろう。


 悔しそうに顔を歪ませながら、残ったの魔物、酸を放つ悪魔(アシッドスライム)の核を潰し止めを刺す佐々木くん。


 これが君の糧になるんだ。


 そう自分に言い聞かせるが、やはり心は痛む。


 新たに湧いた魔物に目掛け走り出した藤田さんは、その素早さを活かし、的確に急所を狙っている。


 この階層であってもかなりの命中率となった彼女の急所突き。


 一撃必殺のそれの威力は凄まじかった。


 彼女はもう、十分に強くなったのだと思う。


 そんなことを考えている僕の視界に、こちらに駆けてきた進化した大鬼(ハイオーガ)が映る。


 次の瞬間、その背後にうっすらと笹田さんの気配を感じた。


 そして、その首が飛び、光となって消える。


 だめだ。


 恐怖心が湧く。


 危険察知スキルが欲しい。


 いっそ彼女には真実を話そうか?


 どこで?


 脱衣所に……、馬鹿なことを……、どう考えても悪手だろう。


 でも、それを行えば、僕へのヘイトはさらに加速させることができる?


 考えをまとめようとしているが、頭がそれを拒否しているようで、上手く思考が繋がらない。


 チャンスがあれば行おう。


 そう棚上げにする。


 さすがに道半ばで殺されては、目的を果たせない。


 僕は、たとえ全人類を敵に回しても構わないと、そう決めたのだから。


 そんな考えに吐き気を覚えながら、僕は狩りを続けた。




 神経をすり減らすように狩りを続けること数時間。


 あっという間に一日が終わる。


 今日一緒に狩りをして理解した。


 僕がいなくてもこの三人なら、この世界で十分に戦っていける。


 宿に戻った僕は、心が痛み、夜の狩りに行く気になれなかった。


「今日も……、行っていいですか?」


 宿に戻ると、藤田さんが三人で狩りに行きたいと伺いを立ててくる。


 朝の出来事を思い出し、僕は少し声を詰まらせながら許可を出す。


「ちっ、しっかり稼いでこいよ!」


「はい!」


 少し嬉しそうな、それでいて睨む様な、そんな表情の藤田さん。


「身の程をわきまえておけ!四十一階層には行くな!お前らにはまだ早い!勝手に死なれたら面倒だからな!わかったら返事!」


 そう言うと、藤田さんが一瞬だけ、少し照れたような表情を見せた。


 僕は戸惑ったが、彼女はすぐに元の睨みつけるような厳しい顔に戻った。


 さらに戸惑いながらも、僕は彼女たちを送り出した。


「下僕が稼げば俺様が楽になるぜ!」


 僕は自分に言い聞かせるように呟き、高笑いをしながら犬でも追い払うようなしぐさで三人を送り出した。


 部屋に戻り、乱暴に装備を脱ぎ捨てると、ベッドの上にタオルを敷き、その上に鬼竜一号と二号を並べた。


 丁寧に手入れをしながら、荒れた気持ちを落ち着かせる。


 もしかしたら、彼女たちはもう戻ってこないかもしれない。


 そんな不安が頭をよぎる。


 でも、マップを見れば場所はわかるし、ランキングで生存も確認できる。


 無事でいてくれれば、それでいいのだ。


 そう思うと不意に涙が出そうになった僕は、相棒を袋に戻すと、布団を被って意識を遮断した。



Side:酒井幸助


 異世界へ転移させられてから二十一日目の早朝、僕たちは活動拠点としている屋敷の広間に集まっていた。


 ようやく、勇者パーティとして四十階層のボスを撃破する準備が整ったのだ。


 風の噂では、黒木はたった一人で四十階層の守護者を撃破したという。


 今の僕には、そんな圧倒的な力はない。


 その事実を悔しく思いながらも、僕は自分に言い聞かせる。


 焦る必要はない。


 今の信頼できる仲間たちと確実に突破していけばいいのだと。


 僕は改めて、新しく加わった仲間たちの顔を見た。


 池田くんや堀田さんに加え、別パーティを組んでいた三人が、このままではいけないと僕たちの元に合流してくれたのだ。


 三浦さんは、天賦が弓士。


――――――


 名前:三浦彩花


 天賦:弓士


 スキル:必中の一射・Lv3 / 集中・Lv1


――――――


 スキル「必中の一射」を持つ遠距離からのスナイパーだ。


 クラスでも中心的な存在だった彼女は、僕のことを支えてくれていると言う。


「ねえ幸助。黒木、好き放題やりすぎじゃない?あんな悪行をほっといていいの?」


 三浦さんは憤りを隠そうともせず、僕にそう問いかけてくる。


 もう一人、浅井くんは盾騎士。


――――――


 名前:浅井拓海


 天賦:盾騎士


 スキル:不動の城壁・Lv2 / 我慢・Lv2 / 反射・Lv1


――――――


 スキルの不動の城壁で、僕たちを守る要となってくれている。


「幸助、今日も盾役は任せてくれ。まあこれしかできないんだけどな!危なくなったら皆は俺の背後に下がってくれよ」


 彼は純粋に高みを目指し、僕たちを上へと押し上げたいと熱く語ってくれた。


 そして最後の一人、口数の少ない望月くん。


 天賦は暗殺者。


 学校では、あまり絡むことは無かったが、転移してから一人で活動しているところを、浅井くんが引き入れたらしい。


――――――


 名前:望月蓮


 天賦:暗殺者


 スキル:気配断絶・Lv2 / 暗器術・Lv1 / 暗示・Lv1


――――――


 スキル「気配断絶」を持つ彼は、今は異様な気迫を漂わせている。


「黒木ぃ……。僕の藤田さんを穢しやがって。絶対にぃ、許さない……」


 望月くんはどうやら藤田さんに想いを寄せていたようで、黒木に対して並々ならぬ恨みを抱いているようだ。


 複雑な感情が渦巻いているが、今は結束を固めるときだ。


 一刻も早く、このメンバーで四十階層を突破し、五十階層に到達しなければならない。


「みんな、今日が正念場だ。準備はいいかな」


 僕はダンジョンへ入るための最終確認を行うべく、作戦会議を開始した。


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