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小心者の僕は神の遊戯の中で俺様として虚勢を張ってイキる!  作者: 安ころもっち


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第二十九話「私、絶対に強くなって、もっと稼ぎますから!」


 ログアウトの後、いつものように部屋の前に待機している藤田さんと合流。


 もはや日課となった佐々木くんの部屋を強襲する。


 まずは三十三階層で特訓を始め、二人を極限まで追い込む。


 階層が上がっても、出現する種類は変わらないが、三十一階層より少し強くなった魔物たち。


 スケルトンメイジが放つ火球が、佐々木くんの腕をかすめ、リザードマンの槍が藤田さんの頬を切り裂く。


 二人の動きは鋭くなっているが、それでも必死にやらなくては難しい相手だ。


 特に佐々木くんの被弾が多い。


「おら、二号!腰が引けてる!もっと気合入れねーと、こいつでひき肉にしちまうぞ!」


 そう言って相棒をぶんぶん振り回す。


「ひぃっ!や、やってやる!俺は、黒木くんの役に立つ男だからな!」


 そう言って、盾を両手で構え、肉体強化を使ってリザードマンを叩き潰していた。


 そんな佐々木くんは、時折、僕を怨めしそうに見ている。


 誤爆と称して攻撃されないかと、内心ビクビクしている。


 そんなことを考えながら、二人の脅威になりそうな敵を無効化し、二人に向かって追い立てる。


 憎悪を溜め込ませ、自分を追い込む。


 この流れは正しい。


 僕は間違ってはいない。


 そう自身に言い聞かせなければ、心が折れてしまいそうだった。




「下僕ども、今日はもう終いだ!」


 昼になり、僕は二人に帰還札を押し付ける。


「残念だが俺様は野暮用だ。仕方ないからお前たちに休みをやろう!明日はもっと厳しくなるからな!しっかり休んどけよボンクラ共!」


 僕は二人を突き放すような言葉をかけ、宿へと向かわせた。


 ここからは、僕一人の時間だ。


 僕はふたたび転移札を使い四十一階層へ。


 周囲は、先ほどまでの階層とは比較にならないほどの殺気に満ちている。


 現れたのは、真っ赤な全身鎧を身に纏った騎士型の魔物、新たに入手した魔物鑑定のリング越しにそれを確認すると、『深紅の騎士(レッドアーマーナイト)』という闇と火属性を持つ魔物だった。


 その剣速は異常に速く、一撃が重い。


 数日前までの僕なら、ここで苦戦を強いられていただろう。


 だが、昨日取得したばかりのスキル『見切り』が、僕の感覚を別次元へと引き上げていた。


 深紅の騎士(レッドアーマーナイト)が剣を振り下ろす。


 その軌跡が、僕の目にはスローモーションのように見えた。


 わずか数センチ体をずらすだけで、刃が空を切る。


 僕は無造作に、相棒を振り抜き、その胴体を叩き折る。


 ガシャンという金属音が響き、それは一撃で光となって消えた。


「ふん、ゴミが!」


 僕は足元に転がった兜を拾い上げ、袋に入れる。


 この兜はきっと金になるだろう。


 一連の作業のように、次々と襲い来る人型の魔物たち排除し続ける。


 時折、強力な酸を飛ばしてくるスライムなども出現したが、見切りで躱しその核を叩き砕いていった。


 精神的な疲労はあるが、体は驚くほど軽い。


 そして、空が白み始めた頃。


 僕はついに、五十階層のボス部屋へと到着した。


 巨大な石扉を押し開けると、そこは広大なドーム状の広場になっていた。


 中央に座していたのは、身長三メートルはあろうかという青い肌を持つ巨体、その体には岩のような鎧を張り付けている巨人だった。


 その手には大きな戦斧が握られている。


 巨人は僕の姿を認めると、地響きのような咆哮を上げた。


 戦闘は過酷を極めた。


 巨人が振り下ろす戦斧は、かすっただけで肉を削ぎ、直撃したのなら、僕の体は真っ二つにされるだろう。


 その戦斧が僕の横を通り過ぎる。


 地面を砕き、衝撃波を生む。


 僕は見切りを駆使して回避し続けるが、その攻撃の余波のすべて避けることはできなかった。


 不意に空いた手で繰り出された拳を脇腹に受け、僕は吹き飛ばされ壁に激突する。


 呼吸が一瞬止まり、頭から流れる何かにより視界が真っ赤に染まる。


 意識が遠のきそうになるが、僕は咄嗟に自分の唇を強く噛む。


 鉄の味が口の中に広がり、痛みが意識を現実に引き戻す。


「ふざけんな。俺様が、こんなところで終わるわけねえだろ!」


 僕は立ち上がり、相棒である鬼竜二号を構え直した。


 巨人の動きを観察する。


 大振りな攻撃の後に、わずかな隙がある。


 僕はそこを狙い、何度も何度も相棒を叩きつけた。


 一度、二度、十度……。


 巨人の膝が折れ、動きが鈍くなる。


 僕は、疲労からふらつきながらも、最後の一撃を膝をつく巨人の脳天へと叩き込んだ。


 巨体は音を立てて崩れ落ち、やがて粒子となって消えていった。


 残されたのは、巨大な地属性の魔石と、人の頭ほどの岩の塊。


 そして、部屋の奥に現れた宝箱を、間髪入れず蹴り飛ばす。


 罠はなかったようで、壁にぶつかった宝箱はパカリと開き、その中から銀色に光り輝く籠手が零れ出た。


 明らかに強力な何かを感じるそのゴツゴツとした大きな籠手。


 それを拾い上げ、まじまじと眺めてみる。


 見た目ほど重くはないのは軽量化の付与でもされているのだろうか?


「はは、ラッキーだぜ。流石は俺様だ。やっぱり、持ってるよなあ」


 僕は乾いた笑い声を上げ、使い古してボロボロになった古い籠手を脱ぎ捨てた。


 新しい籠手を装着すると、全身に力が漲るのを感じた。


 僕はその見た目と性能に高揚しつつ、帰還札を取り出し魔力をこめた。


 宿に戻り、部屋の前で待ちぼうけしている二人の前に気怠そうに現れる。


「今日は二号も起きてやがるんだな……、いつもそうしとけよボケ!」


 佐々木くんに向けてそう言った後、「邪魔だ、どけ!」と二人を押しのけ、部屋の中に入る。


 待たせないように手早く装備などを脱ぎ捨て、シャワーで汗を流す。


 火照った体に冷水が心地よかった。




 二人を引き連れ、朝食を食べギルドへ向かう。


 人々の話し声や、馬車の車輪の音が聞こえ、この世界がゲームの世界ではないと改めて実感する。


 そんな中、僕は鬼竜二号を担ぎ、左手には真新しい籠手が禍々しく装着し、肩を揺らしながら歩く。


 道行く人が進路を開け、僕のことを見て、近くの人とヒソヒソ話をしているようだ。


 新しい籠手は、僕の手によく馴染んでいた。


 この力があれば、誰にも負けないという自信が湧いてくる。


 誰が来ようとも、僕はその上を行く。


 最強の悪役として、僕はこの世界に君臨するのだ。


 それが僕の考えた、元の世界へと戻る手段を見つけるための時間稼ぎであり、僕への視線を集中させ、姉ちゃんを守るための手段でもあるのだから。


 僕は深く息を吸い込み、ギルドのドアを開けた。


「狩ってきてやったぞ!」


 開いていたカウンターでそう告げると、昨日とは違う女性は戸惑いを見せた。


「あの、何を買ってきたのでしょうか?」


 僕はニヤリと笑い、魔導袋から特大の魔石を取り出した。


 巨大な土属性の魔石。


 その隣に大きな岩の塊を置く。


「こ、これは、大きな魔石です、ね」


 そう言った女性は、横を向き助けを求めるような視線を送っていた。


 すると、昨日の女性が駆け付ける。


 カウンター上にある魔石と僕の顔の間で視線を泳がせる。


「五十階のボスは、ただの岩の巨人だった」


 その言葉に、昨日の女性は僕の顔をじっと見た後、またも奥へと走って消えた。


 目の前にいた女性は、先ほどの女性が担当していた列を捌く為、僕の前から逃げ出すように移動していった。


 数分後、昨日倉庫にもいたおじさんを伴ったギルド長と呼ばれた男性がやってくる。


 何度も何度も確認をする二人。


 僕の顔を見ては唸っている。


「もし良ければ、五十階層の守護者が、どのような魔物だったか教えてくれないか?」


 慎重に話を切り出すギルド長。


「デカくて青い肌をした巨人。全身にゴツゴツした岩の鎧を着こんでいた。手にはデカい斧。後は自分で見てこいよ!」


 僕の言動にやや苛立つ様子を見せるギルド長であったが、喉を鳴らしそれを飲み込んだようだ。


「それと、四十階層の守護者をすでに倒したのだろう?そっちも教えてくれるとありがたいんだが……」


 僕はわざとらしくため息をつく。


「雑魚すぎて覚えてねーよ」


「そ、そうか。では買い取りを、この二つで金貨二千枚、それでどうだろうか?」


 二億$……。


 ギルド長にそう言われ、戸惑いながらも横柄に返答する。


「いいだろう!今日はそれで勘弁してやるよ!」


 内心は今すぐ土下座をしたかった。


 あの程度の魔物を倒しただけで、こんなに貰っても良いんですか?


 そう思いながらも、頬に力を入れて不機嫌そうな顔を作る。


 力を入れなければすぐに頬が勝手ににやけそうだった。


「では、これを」


 ギルド長が背後の奥にある棚から持ってきた箱を差し出す。


 その箱には、綺麗に並べられた金貨。


 その隣には金色に輝くカードが添えられていた。


「今日より黒木様は、Aランク冒険者となる。本来ならSランク、と言いたい偉業だが、いかんせん私の権限ではなんとも……、よければ、持っているカードを返却してくれないか?」


 僕は舌打ちをしながら、自分が持っていたFランクの安っぽいカードを放り投げ、金貨の箱とカードを回収した。


 今日も変わらずダンジョンにと思っていたが、振り向いた時、二人の羨望の眼差しを感じて戸惑った。


 先ほどまで騒がしかった他の冒険者達も、一歩引いたように僕を見ていた。


「お兄さん、強いんだねー、お姉さん、惚れちゃったかもぉ」


 突然かけられた声の方を向くと、目の前には、露出度の高い真っ赤なへそ出し鎧の女性がこちらを艶っぽい目で見ていた。


 その背後に、ローブに身を包んだ女性、軽そうな銀色の鎧をまとった女性、白い僧侶のような服を着こんだ女性が、張り付くようにして笑顔でこちらを見ている。


 思わず大きな膨らみに視線が動き、頬が緩みそうになるが、正解となる行動を考える。


「お前、なかなか良い体してるな、だがな、俺様は今忙しい、今度たっぷり可愛がってやるから、また今度な!」


 そう言って虫を追い払うように手を動かした。


「あら、つれないね、今なら私たちが、これでぇ、たーっぷりと―――」


 背後のローブの女性がそれをはだけ、両手で胸を挟み強調するような仕草をするが、その言葉を言い終わる前に、目の前には藤田さんの背中が見えた。


「ダメ、です!」


 その言葉と行動にドキリとした。


 それを無視するように、最初に声をかけた露出多めな女性は僕の手をグイっと引き寄せ密着する。


「あら、貴女、お兄さんの奴隷なんでしょ?出しゃばったら捨てられちゃうわよ?」


「そうそう」


「ガキは引っ込んでな」


 他の三人は藤田さんにそんな言葉をぶつけていた。


「おい、俺様の下僕に何文句たれてんだ?阿婆擦れはどっか行っとけ!」


 苛立ちをぶつけるようにそう言いながら、腕を振り払う。


「あば……、なんですって!」


 僕は「邪魔だ」と言いながら藤田さんの手を引き、女性達の前に立つ。


「てめえら程度の女、腐るほどいるんだよ。忙しいって言ったよな?俺様の時間を無駄に消費すんなよクソがっ!」


 そう言って店内に入る前にしまい込んでいた相棒を引き出すと、頭上でぐるりと回して見せる。


「ガキが、生意気言ってたら、痛い目にあうんだからね!」


 涙目になりながらそう叫び、出ていった四人を見送った。


 安堵して息をはくが、視界に映る周りの視線と、静まり返った空気に居心地の悪さを感じる。


「何見てんだ!見せもんじゃねーぞ!」


 そう言いながら周りを睨みつけると、僕から目線をそらす冒険者たち。


「行くぞ!」


 そう言って外に出ると、逃げるようにダンジョンまで移動した。


「私、絶対に強くなって、もっと稼ぎますから!」


 ダンジョンの入り口で僕をジッと見てそう言う藤田さんに困惑するが、それに舌打ちで返し、四十一階層に転移する。



 昨日よりさらに強い魔物を相手に、今日の特訓を開始した。


 ここなら酒井くんたちと遭遇することもないだろう。


 そう思いながら二人の動きを見極め、ギリギリの戦いを演出することに集中した。


 順調だ。


 この調子なら、僕はすぐにランキングの頂点を狙えるだろう。


 このままでいい。


 そう思いながら、二人に激しい檄を飛ばす。


 その時の僕は、真の地獄はここから始まるのだと、まだ知る由もなかった。


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