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小心者の僕は神の遊戯の中で俺様として虚勢を張ってイキる!  作者: 安ころもっち


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24/56

第二十四話「も、もう!せっかく元気づけてあげようと思ったのに」

本日二話更新。一話目。


 ダンジョン二十一階層。


 ここは、僕が夜通し駆け抜けた四十階層に比べれば、今の僕にとっては雑魚しかいない階層だ。


 だが、藤田さんにとっては何とか戦える程度の厳しい階層。


 佐々木くんにとっては、一歩間違えれば命を落としかねない。


 そんな危険な場所であった。

 

 今日の目的は、夜明けに手に入れたミスリルの大盾を、佐々木くんの体に叩き込むことだ。


「おい、二号!何震えて縮こまってやがるボケが!正面から来てるぞ、そのゴミみたいな盾、さっさと構えろよ!」


 僕は罵倒を含んだ言葉を投げつける。


 目の前には、リザードマンの群れ。


 通常なら僕一人で駆け抜けながら滅する程度の相手だが、今はわざと数匹を佐々木くんの方へ流している。


「くっ、うわあああぁぁ!」


 佐々木くんは、まだ大盾の重さに翻弄されていた。


 スキルの使用もまばらで、腰を引いて右往左往している。


 リザードマンの重い一撃が盾に響くたび、彼は膝を折り、情けない声を上げる。


 盾の重厚な金属音が洞窟内に響き渡り、火花が散る。


「体が固まってんだ!衝撃を逃がせ!ただ構えて突っ立ってるぐらいなら、てめえの無駄に頑丈な体で受け止めろ!」


 実際には、ミスリルの大盾には「衝撃緩和」の魔法付与がなされている。


 佐々木くんが吹き飛ばされているのは、盾の性能のせいではなく、彼自身の恐怖によるものだ。


 僕は横目で藤田さんの動きを確認する。


 彼女は新しく渡した魔導袋を腰に下げ、僕の指示通りにドロップ品を素早く回収している。


 時折、佐々木くんが危なくなるのを見ると、ピクリと反応するが、ただそれだけ。


 今は自身のレベルアップに集中するように、真剣な表情で急所突きを繰り出している。


 ふと、今朝の熱っぽい視線のことを思い出す。


 あれは僕の妄想。


 そう自分に言い聞かせ、僕は再びリザードマンの足を相棒で叩き折る。


 長い時間をかけ、二人にはギリギリの戦いを継続させる。


 お昼過ぎになる頃には、佐々木くんも恐怖心が少し薄れたのか、コツを掴み始めているようだ。


 巨躯なオーガには腰が引けてしまうものの、リザードマンの突進に対し、盾の角度を調整して威力を受け流すことができていた。


 まだ動作はぎこちないが、最初のように無様に転がることはなくなった。


「ふん、少しはマシになったか。だが、俺様の足を引っ張っていることに変わりはねえな!」


 僕はわざとらしく大きな溜息をつき、首をバキバキとほぐして見せた。


 実際は、彼の成長に安堵していた。


 これでもし、僕がいない場面で魔物に遭遇しても、多少は持ちこたえられるはずだ。


「今日はもう良いだろう!雑魚ばっかりで面倒だ、帰るぞ!」


 僕は懐から二枚の帰還札を取り出し、二人に乱暴に投げつけた。


「えっ、もういいんですか?私、まだ戦えます!」


「お、俺は、今日はちょっともう、限界で……」


 対照的な返答にため息で返す。


「黙れ!俺様が帰ると言ったら帰るんだ!お前たちに付き合ってやるのは面倒なんだぜ!今日は終わりだ!さっさとそれ使え!」


 藤田さんは渋々、佐々木くんは慌てて帰還札を使う。


 二人が光に包まれて消えるのを確認し、僕も自分の札に魔力をこめた。


 宿に戻ると、僕は二人を自由にさせ、自室へ駆け込んだ。


 鎧を脱ぎ捨て、熱いシャワーを浴びる。


 ダンジョンでの高揚感、殺気、そして二人に対して吐き出し続けた毒。


 それらを全て洗い流すように、湯を頭から被った。


 二十一階層なら、二人も死なない。


 でも、もっと強くならなきゃ。


 これ以上先に行くと酒井くんたちと遭遇しかねない。


 彼らより先に進まなければ、また遭遇してしまえば……。


 僕の弱さに誰かが気付けば、今までのすべてが無しだ。


 そう考えながら、鏡に映る自分の顔を見る。


 今の僕は、相変わらず冴えない引きこもりの弱弱しさがにじみ出ている。


 本来の僕。


 今にも心がポキリと折れ、泣きわめきそうになる。


「こんな顔、あの二人には見せられないよね」


 僕は深呼吸をし、雑に体を拭くとそのままベッドに腰を下ろし、本日のログアウトを実行した。


 視界がホワイトアウトし、現実世界の自分の部屋が戻ってくる。


 まず目に入ったのは、当然のことくドアの向こうに立っている姉ちゃんだった。


「ぶふっ」


 僕は思わず変な笑い声を漏らした。


 目の前に、ハゲ頭のカツラに、不自然に濃い付け髭をつけた謎のおじさんが立っていたからだ。


「やあやあ、黒木君!君の働きは実にすばらしいものがあるな。うぉっほん!」


 姉ちゃんは、何を参考にしたのか分からないセリフを、腰に手をあてながら、太い声で演じている。


「今日から君は昇進だ!私の側近にしてやろう!しっかり働いてくれたまえよ?」


 何の設定だ。


 謎の上司キャラでの出迎え。


 僕は無言で、じっと姉ちゃんの顔を見つめた。


「ちょ、ちょっと。その視線やめてー!」


 数秒の沈黙の後、姉ちゃんは急に素に戻り、顔を真っ赤にして両手でハゲ頭と顔を隠した。


「姉貴、恥ずかしいならやめろって」


 僕は吐き捨てるように言い、背を向けた。


 今にも吹き出しそうになる笑いを必死で堪える。


 心臓のバクバクが、戦闘中とは違う意味で止まらない。


「も、もう!せっかく元気づけてあげようと思ったのに!竜也が怖い顔してゲームしてるから!」


 姉ちゃんの文句を背中で聞き流しながら、僕はデスクの椅子に深く沈み込んだ。


 そして、習慣となっている掲示板のチェックを始める。


 僕がゲーム内で動いている間、外の世界では何が語られているのか。


 予想通り、僕の専用スレは盛り上がっているようだ。


『美織ちゃんを虐めて楽しんでる!性格悪すぎだろこのヒッキー』


『ゴミ押し付けるとか最低。あの重い盾、絶対嫌がらせだよね』


『だいたい、無計画に使えない盾買うなんて、アホちゃう?魔石の無駄使い。せっかく酒井くんたちが手放した逸品、もっと有効に使え!』


『昇くんを肉壁にするなんて!ただでさえつらい思いしてるのに!許せないよ!』


『ヒッキーが佐々木くんに命令してんじゃねーよ!現実じゃ口もきけなかったんだろうにwww』


 画面をスクロールするたびに、胸の奥がチリチリと焼けるような感覚に襲われる。


 わかっている。


 僕がそういう風に見えるように動いているのだから。


 彼らが僕を憎めば憎むほど、藤田さんと佐々木くんは被害者として同情され、彼らのコミュニティに戻りやすくなる。

 

 だけど、それでも、それらの言葉に反論したくなる。


 誰も気づかない。


 それでいい。


 そう思いながら、ランキングを確認し、気になるクラスメイトのログを確認した。



◆◇◆◇◆



――― No.76 擁護専用掲示板※姉含む その8


684 :神の信徒@ななし:20XX/11/06(月) 07:03:12.45 ID:YuR99oKo


 なああれ、結構なレアだよな?

 あのミスリルの大盾。酒井たちのパーティが「重すぎて使い物にならん」ってあの武器屋に買い取ってもらったやつだろ?

 黒木のやつ、あれを買うために昨日からずっとソロで潜ってたのか?


685 :神の信徒@ななし:20XX/11/06(月) 07:05:22.10 ID:KiT78uNn


 >>684

 いい加減気付いてるよな?


686 :神の信徒@ななし:20XX/11/06(月) 07:05:45.10 ID:WiS33hJm


 専スレの連中は「ゴミ押し付けた」とか「嫌がらせだ」って叩いてるけど、あの盾の物理カット率と魔法耐性は高いって鑑定結果出てただろ?

 佐々木みたいな初心者があの階層で生き残るには、あれ以上の装備はない。


687 :神の信徒@ななし:20XX/11/06(月) 07:07:10.33 ID:KoM11eTa


 黒木なりに2人を守ってるってことでおk?


688 :神の信徒@ななし:20XX/11/06(月) 07:07:45.33 ID:TfV44kUy


 口はあんなに悪いけど、渡した魔導袋だってそれなりにするだろ?

 自分が一番ボロボロになりながら、二人の装備だけを強化してる。


689 :神の信徒@ななし:20XX/11/06(月) 07:10:02.88 ID:MoE54sAy


 俺は最初から気付いてたけどな?


690 :神の信徒@ななし:20XX/11/06(月) 07:10:45.12 ID:HaN33kSu


 黒木の武器、あれも相当な負荷がかかる奴だろ。

 力どれだけあるんだ黒木。


691 :神の信徒@ななし:20XX/11/06(月) 07:11:30.55 ID:YuR99oKo


 ソロで四十階層まで行ってたってけど、黒木のスペックはもう酒井たちを抜いてるだろ。


692 :神の信徒@ななし:20XX/11/06(月) 07:12:33.56 ID:SaK21tIo


 二人はどうおもってるんだろな?



◆◇◆◇◆



735 :神の信徒@ななし:20XX/11/06(月) 11:12:33.56 ID:IghHEm94


 擁護派の奴らは目が腐ってるな。

 ああやって恩を売って、将来的に美織ちゃんたちを自分の思い通りに動かすための布石だろ。

 ヒキニートの考えることなんてそんなもん。


736 :神の信徒@ななし:20XX/11/06(月) 11:14:20.11 ID:HaN33kSu


 >>735

 それなら自分がヘイト全部買って、わざわざ嫌われるようなロールプレイする必要がない。

 それに黒木のおかげで二人は助かってるのは事実だろ?


737 :神の信徒@ななし:20XX/11/06(月) 11:17:40.22 ID:YuR99oKo


 >>735

 美織がモンスターに囲まれそうになった時、黒木がわざと罵倒しながら進路変えさせてたの見てないのか?

 あいつ、一度失敗してから美織に危険がないように立ちまわってる。


738 :神の信徒@ななし:20XX/11/06(月) 11:19:55.67 ID:KiT78uNn


 本スレの奴らは感情論ばっかりで、装備の適正とか一切見てないからな。

 黒木が俺様やってるおかげで、二人が擁護されてる現状、分かってないよ。



◆◇◆◇◆



869 :神の信徒@ななし:20XX/11/06(月) 14:21:08.12 ID:Ane_Ufo


 姉が竜也ちゃんが怖い顔してるから心配してたけど、俺はここ見ると少し安心する。

 でも専スレであんなに悪口言われるの、見てて辛いだろうな。

 黒木はここ見れてないっぽいけど。


870 :神の信徒@ななし:20XX/11/06(月) 14:22:34.40 ID:KoM11eTa


 まあ、黒木本人が望んでやってることなら、俺たちはここで事実を淡々と記録するだけだよ。


871 :神の信徒@ななし:20XX/11/06(月) 14:23:50.11 ID:MoE54sAy


 つーか、佐々木も少しは気づけよ。


 あの盾、重いけど構え方ひとつでリザードマンの突進無効化できてただろ。


 黒木のアドバイス、理にかなってるんだよな。天賦の恩恵か?


872 :神の信徒@ななし:20XX/11/06(月) 14:25:05.88 ID:IghHEm94


 >>736 >>737

 だったら普通に言えばいいじゃん。

 なんでわざわざ「ゴミ」だの「クズ」だの言うわけ?性格歪んでるとしか思えん。


873 :神の信徒@ななし:20XX/11/06(月) 14:26:44.23 ID:YuR99oKo


 >>872

 普通に言ったら、藤田たちが「黒木さんに申し訳ない」ってなって、遠慮して動けなくなるからじゃね?

 俺様に使われる下僕っていう体裁にしておけば、二人は黒木に気を使わずに済むし。

 黒木の自己犠牲精神、ちょっと病的なレベルだと思う。


874 :神の信徒@ななし:20XX/11/06(月) 14:27:59.00 ID:KoM11eTa


 多分、黒木は自分を「救世主」にしたいんじゃなくて、二人が「自力で立ち上がった」ことにしたいんだろうな。

 そのための踏み台が自分。


875 :神の信徒@ななし:20XX/11/06(月) 14:28:44.31 ID:IghHEm94


 擁護派きもw

 どんな深読みだよ。ただの性格悪いニートだろ。


876 :神の信徒@ななし:20XX/11/06(月) 14:29:30.15 ID:KiT78uNn


 >>875

 専スレへお帰り


877 :神の信徒@ななし:20XX/11/06(月) 14:30:15.66 ID:HaN33kSu


 今日の二十一階層の狩り、最後の方の佐々木は結構様になってたな。

 盾の重心を意識し始めてた。あれ、黒木が最初に言ってた「重さに負けるな」っていうのが効いてる。


878 :神の信徒@ななし:20XX/11/06(月) 14:31:40.88 ID:MoE54sAy


 藤田の方も、ドロップ回収のスピード上がってるしな。


 黒木が意図的に二人の「役割」を固定させて、パニックにならないように誘導してるのがわかる。


 まあ藤田の方は回収しながらの急所突きもうまくなってるけど。


879 :神の信徒@ななし:20XX/11/06(月) 14:32:55.12 ID:YuR99oKo


 でも、帰還札の渡し方、あんな投げ方しなくてもとは思った。


880 :神の信徒@ななし:20XX/11/06(月) 14:33:10.45 ID:Ane_Ufo


 あれ、照れ隠しだよ。きっと。

 帰還札だって安くはないだろ?そうホイホイ使えない程の。


881 :神の信徒@ななし:20XX/11/06(月) 14:33:45.19 ID:KoM11eTa


 思ったw


882 :神の信徒@ななし:20XX/11/06(月) 14:34:22.11 ID:SaK21tIo


 どんなに擁護しても、世間の評価は「黒木=悪」で固まってるけどね。

 酒井たちも黒木憎しで色眼鏡かけて敵対しそう。


883 :神の信徒@ななし:20XX/11/06(月) 14:35:01.88 ID:KiT78uNn


 酒井たちは黒木の真の実力を知らないからな。

 街中だったし力出せず引いたって思ってるだろ?


884 :神の信徒@ななし:20XX/11/06(月) 14:35:45.30 ID:MoE54sAy


 真実はその内わかるだろ?


 ランキングの更新が楽しみだわ。


885 :神の信徒@ななし:20XX/11/06(月) 14:36:20.12 ID:HaN33kSu


 黒木、もう休んでるな。

 ログアウトしたし、徹夜だったからな。しばしの休息なんだろ。


886 :神の信徒@ななし:20XX/11/06(月) 14:36:55.44 ID:YuR99oKo


 そいやぁ、弟の動きでそろそろログアウトだと予測して、姉がハゲ面で待機してるって考えると、なかなか笑える光景だなwww


887 :神の信徒@ななし:20XX/11/06(月) 14:37:30.10 ID:KoM11eTa


 黒木がこの掲示板を見て、ちょっとでもニヤッとしてくれればいいんだが。


888 :神の信徒@ななし:20XX/11/06(月) 14:37:55.66 ID:KiT78uNn


 >>887

 あいつのことだから、「目が腐ってる」って吐き捨てて、また一人でダンジョンに行きそう。


889 :神の信徒@ななし:20XX/11/06(月) 14:38:20.44 ID:MoE54sAy


 まあ、それが黒木だよな。


890 :神の信徒@ななし:20XX/11/06(月) 14:39:10.22 ID:HaN33kSu


 さあ、今日も悪役様の観劇を始めようか。

 誰にも理解されない、世界で一番不器用な守護者の。


891 :神の信徒@ななし:20XX/11/06(月) 14:39:55.88 ID:KiT78uNn


 おk。監視継続。


 黒木、無理すんなよ。


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