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【異世界スゴロク】止まったマスで転移する呪いの冒険譚 ~ゴールしなければ生き残れない~  作者: 幸運な黒猫
【童話全修】

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第56話・【童話全修 その5】

 街から離れていて、子どもが騒いでも聞こえない場所。郊外や川沿いなどで、ぽつんと建っている一軒家。僕らは、これが監禁場所の条件だと結論づけた。


「これ、あやしすぎるよね……ここしかないって感じ?」


 多分これは、みんなの総意と言えると思う。条件に合う建物は全部で三軒あったが、そのうち一軒が、ドイルの作った迷宮(ラビリンス)だったからだ。


「うにゅ~~~……」

「ベルノどうしたの?」 

「ドイルの部屋、うるさくて嫌なのニャ」


 今になって考えてみれば、テレビのボリュームを上げていたのは、チビヤギたちの声に気づきにくくするためだったのかもしれない。


 ベルノのみならず、耳がキーーンとなった僕らには、もしチビヤギの声が聞こえたとしても、耳鳴りとしか思わなかっただろう。そう考えると、ますますあやしく思えてくる。


「みんなは、ドイルが犯人だと思う?」

「自分はむしろ、オオカミがドイルに変身しているんじゃないかって思うんだけど」

「私も同意見かな」


 颯太(そうた)鈴姫(べる)さんも僕と同じ意見。やはりその可能性は高いと見てよさそうだ。そしてその予想が当たっていてもいなくても、もうひとつやらなければならない事がある。これが一番厄介だ。


「あとさ、一応、他の二カ所も調べた方がいいと思うけど」

「可能性は潰しておかないとって事ね」


 もし仮に、ドイルの迷宮(ラビリンス)になにもなかった場合、犯人に逃げられてしまう可能性がある。そうなると、子どもたちの所在がわからなくなるし、安全の確保もできない。


「手分けして三ヶ所同時に調べた方がいいと思うんだけど?」

「でも、それだけの人数が……」


 そう、まさしく一番厄介な問題がそれだった。


 今動けるのは僕ら四人だけ。それも、幼女であるベルノを一人と数えて、だ。ベルノのスキルはよくわかっているし、身体能力も高い。それでも、こんな小さい子を一人で危険な場所に行かせるのは抵抗がある。


「どうしようか……」


 ルドウィンが加わるとしても、三手に別れるには明らかに人手がたりない。残念ながら物理的な人手不足は、頭をひねってどうにかなるものではなかった。


 ――バンッ!!


「話は聞かせてもらったぜ!!」


 大きな音をたてながら勢いよく開いくドア。その先には見知らぬ一人の女性が立っていた。太陽を背に浴びて、そのシルエットが黒く浮かび上がった。


「猫耳のフード? ……って、いや、誰?」

「フッ、このオレ様に名を聞くのか」


 颯爽と現れて物おじせず、自信に満ち満ちた女性の声。なんだかわからないけど目が離せなかった。


 ……僕は、彼女になにかを期待しているのかもしれない。


「そう、オレ様こそがあの……」


 猫耳フードの少女は八重歯をキラリと光らせ、親指を立てて自身を差すと名乗りを上げ……


 ――パァンッッ!!!


 青空に響き渡る、気持ちいいくらい突き抜けた音。それは、横からでてきたもう一人の猫耳フードの少女が、名乗り途中の猫耳フードの少女の頭をハリセンでぶっ叩いた音だった。


「そういうのやめなさいって言ってるっしょ!」


 名乗り途中の少女は、ヤンキー座りになって頭を押さえる。これはかなり痛そうだ。


「突然ごめんね。私は、赤猫三姉妹の長女メイジーです」


 ニコリと笑う猫耳フードの少女。失踪したお婆さんの捜索を依頼してきた赤猫ずきん本人だ。


「は、はあ……」

「いきなり(このバカ)が失礼いたしました」


 と、ハリセンで妹の尻をバチンッと叩く。


「ちょっ、姉貴。それ痛いってばぁ~」


 ……僕は、彼女になにを期待していたのだろうか。


「オレ様はブランシェットっつーんだ。ヨロシクな!」


 と、今度こそ名乗りを上げる猫耳フードの次女。冷静な長女とは正反対に、感情で動く感じの少女だ。ちょっとだけ、鈴姫さんと葵さんのコンビに似ていて、微笑ましく思えてしまった。


「あれ、三人姉妹って……」

「ええ、ここにいますよ」


 メイジーにうながされ、ドアの影から小さな猫耳フードの幼女がヒョコっと顔をだした。


「ペローでっす。ねえたんたちがご迷惑をおかけして、もうしわけありませんでいやがりまっす」


 ペコリ、と丁寧に頭を下げて自己紹介と同時に謝罪。猫耳フードが非常に似合う、ベルノやチビヤギと変わらない年齢の子どもだ。そして、なにより可愛い。三人そろって幸せの象徴みたいな絵面になっている。


「この子は、ちょっと歳の離れた末の()。男の()のペローです」


 えっ……男の……()。……男の……


「どうしたの? 水音(みなと)くん」

「いえ、なんでもないです……」


 ……はあ、もはやトラウマだよ。



※赤耳ずきん三姉妹のネーミングについて。

日本ではあまり知られていませんが、童話としての「赤ずきん」には、時代や執筆者によってさまざまなバージョンが存在します。グリム童話やペロー童話集など、複数のシリーズにまたがって掲載されています。

「赤ずきん」の作中では固有名詞は出てきませんが、メイジーやブランシェットが本名と言う説があります。

本作ではそれらの関連名称から三姉妹のネーミングとしています。

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