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【異世界スゴロク】止まったマスで転移する呪いの冒険譚 ~ゴールしなければ生き残れない~  作者: 幸運な黒猫
【童話全修】

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第55話・【童話全修 その4】

 ――コンコンッ


 情報交換が終りに近づいた頃、事務所のドアを叩く音が響いた。


「誰だろう?」

「多分、依頼主のどちらか、もしくは両方でしょうな」


 つまりは、赤猫ずきんか母ヤギか。ルドウィンは短いあごヒゲをしごきながら入口に近づく。


「昨日、調査依頼にいらした時はベルノお嬢様が不在でしたので、本日あらためて訪問するとおっしゃっていました」


 ドアを開くと、そこにいたのは痩せ細った母ヤギと、コロコロと小さなチビヤギだった。物語の流れでいくと、七番目の子ヤギなのだろう。


「あ、あの……」

「さ、どうぞ中へ。先生方がお待ちですよ」


 ここでもまた、ルドウィンが笑顔を見せる。その年の功とも言える安心感が、来客を優しく包み込んでいるように感じられた。


「よろしくお願いします」

「……ます」


 会釈する母ヤギをまねて、チビヤギがペコリと頭を下げる。


「あら、おチビちゃん可愛いですわ!」


 思わずでた鈴姫さんの第一声だ。このひと言にムスッとする颯太。腕組みしながら殺気に近いものを放つその姿は、さながら阿修羅か毘沙門か。


 ……毎回毎回ミニブタやチビヤギに嫉妬していたら、この先、体が持たないぞ。


 そして、嫉妬したのはベルノもだった。彼女は颯太の膝から飛び降りると、そのまま鈴姫さんの腕にギューっと抱きついた。こちらは可愛い。いいぞもっとやれ。


「彼女が本件を担当するベルノ探偵ですわ」

「え……こんな子供が……」


 途端に落胆の色を見せる母ヤギ。これは仕方がないだろう。自身が連れているチビヤギと大差のない年齢なのだから。それにベルノは萌え可愛いのであって、安心感や安堵感には程遠い。


 しかし、そこに威厳を与えるのがルドウィンの存在だ。


「ご安心下さい。わたくし共も、全力でサポートいたします。それに我らが探偵事務所は、ベルノ探偵と鈴姫探偵助手の二人がいてこそのベル&ベルですぞ」

「……えっと、こちらの方々も?」


 と、僕と颯太に視線を向ける母ヤギ。クロ子とグレ子をみるその目はどこか不安げだ。僕らの存在に関しては、『なんかごめんなさい』としか言えなかった。


「遊び盛りの、うるさいくらいに元気な子どもたちでした。それが、この子を残してみんな連れ去られてしまうなんて……」

「お子さんが誘拐された時の状況を、詳しく聞いてもよいですか?」


 しかしこの問いに母ヤギは答えられない。なぜならば、これは、彼女が外出している時に起こった事件だったからだ。


 目撃者は、一緒にいる末っ子のチビヤギだけ。名前をアガサと言うそうだ。


 一般的に子供の証言は、周りにいる大人からの影響を受けるとされ、信憑性の面では重要視されない。

 

 それが、この事件が警察の手を離れ、探偵事務所に持ち込まれた理由だった。


「あ、あのね、んっとね……」

「あわてないで大丈夫だよ」


 と、鈴姫さんがチビヤギに優しい笑顔を向ける。それと同時にルドウィンは、小さくカットしたチャーシューアップルパイとジュースを、スッとチビヤギの前に置いた。


「美味しいですよ。ささ、お母さんも」

「はい……」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 ルドウィンのこのひと言には、その場にいる誰もがハッとさせられた。


 両親とも亡くしている鈴姫さん。そして、自分の世界に帰れないベルノ。依頼者の母ヤギとチビヤギ。ここにいる半数が、家族と離れ離れになってしまった者たち。


 チビヤギは、伏せ目がちにぽつりぽつりと話し始めた。


 母ヤギは『誰が来てもドアを開けてはダメ』とチビヤギたちに言い含めて、夕飯の買い物にでかけた。しかしすぐに『忘れ物をした』と戻って来る。実はそれが母ヤギに変身したオオカミだった。


 ドアを開けてしまったチビヤギたちは、思い思いに逃げ始める。机の下や暖炉の中などに隠れた兄や姉たちは、みんな見つかり、捕まってしまった。


 唯一無事だった七番目のチビヤギは、ベッドの枕元に並ぶぬいぐるみのふりをして難を逃れたそうだ。あえて隠れない事で、オオカミの目を逃れたのだ。


「ねえ、君。そのオオカミって、灰色だった?」

「ハイイロ? ……うん、ハイイロで凄く大きくて、顔に傷があった」


 灰色で顔に傷があるオオカミ……聞き込みでは傷の情報はなかったけど、同じオオカミとみて間違いないだろう。


「オオカミはその一匹だけだった?」

「うん」


 大きな灰色オオカミが、【七匹のチビヤギ】の犯人なのは確定でよさそうだ。いくら小さな子どもと言っても、体格や毛色を見間違える可能性は低いだろうから。


「それだと、ちょっとひっかかりますわ」

「なにかおかしかったです?」

「遊び盛りでうるさい子どもたちを、いくら大きいからって、一匹で誘拐できるかしら?」

「例えば家の外にいるとかで、見えていない共犯者がいるかもしれないって事か」


 鈴姫さんはコクリとうなずいた。


「だいたい、どこに監禁しているんだろね。そんなうるさかったら、周りの人が気づかないはずはないのに」

「あ……水音くん、それ!」

「え、どれ?」

「そうじゃなくて。監禁するなら、騒いでもわからない場所にするよね?」

「そうか、街から離れている建物……」


 この条件の建物はそんなに数はないはず。しらみつぶしに当たってもそれほど時間はかからないだろう。


「ルドウィンさん。郊外や川沿いなどで、ぽつんと建っている一軒家をピックアップしてくださいな」


本作はネオページにて契約作品として展開しています。

編集部の意向で、宣伝のために転載していますが、内容は同一です。

その為、ネオページからは15話程度遅れています。


もし興味を持っていただけましたら、サイトの方に来ていただけるとありがたいです。ネオページの登録も是非^^

Xのリンクから飛んでいただくか、検索で【ネオページ 異世界スゴロク】で出てきます。

よろしくお願いします!

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