第50話・長靴を履いた猫耳幼女
「長靴を履いた猫耳幼女の爆誕ですニャ!」
ベルノは、いつの間にか膝丈のブーツを履き、テンガロンハットをかぶっていた。それは、童話の絵本や映画で観た事のある姿そのもの。
どうやら今回も、舞台に合わせた衣装が用意されているようだ。【没落令嬢】の時、勝手に変身してしまったように、役割に合わせた姿になる。
「雪平さん、助手を選んでください。自分は裏方をするんで」
と、颯太は助手の席を鈴姫さんに勧めた。彼としては、[探偵:ユキヒラ ベル]、[助手:トクガワ ソウタ]としたかったのだろう。
……だけどベルノの暴走(?)により、その目論見は崩れ去った。
「でも、それだと二人に悪いし……」
「あ、僕の事は気にしないで。どっちにしろ裏方枠だから」
颯太の気持ちがわかっている以上、さすがに割り込むような立ち位置に入る訳にはいかない。最初に役割を見た瞬間から、僕の役は裏方だと決めていた。
「それに、女性を裏方にするほど僕らは落ちぶれてないですよ」
うなずく颯太。彼は鈴姫さんの目の前で裏方に登録し、彼女に助手を押すように促していた。
……ってあれ? 僕、あぶれてない?
この状況、僕だけ役割無しってどうなるのだろう? そもそもその立ち位置はベルノのはずだから、【没落令嬢】の時のベルノのように、のんびり気ままにしていればいいのかな?
と思っていたのもつかの間、[裏方:トクガワ ソウタ]のすぐ下に、うっすらと文字が浮かびあがってきた。
どうやらそれが僕の役割らしいのだが、浮きでてきた文字は……
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プレイヤー属性(希望の属性をタッチしてください)
探偵:ベルノ
探偵助手:ユキヒラ ベル
裏方:トクガワ ソウタ
雑用係:
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ざ・つ・よ・う・が・か・り。……もう。ちょっとひどくありません?
対して、鈴姫さんはディアストーカーハットをかぶり、同色のインバネスコートにケープを羽織っている。こちらはベルノと異なって、シャーロックホームズの恰好をした本職探偵と言った感じだ。
そして颯太はと言うと……
「それヤバいって!」
彼は全身黒タイツだった。さすが裏方だ。腹にでかでかと”裏方クロ子“と書いてある。ラグビーでフォワードをやっている彼の黒タイツ姿は、その高身長と重量級のガタイで、異様な存在感が醸しだされていた。
「ガチムチすぎる……黒子なのに目立ちすぎでしょ」
そして、肩から斜めにかけているマジックバッグ。ジワジワと来るそのビジュアルを、ニヤケつつも笑わないように必死でこらえているその時だった。
「でも、ミナミニャも同じニャ!」
「……え?」
ベルノに言われ自分の姿を確認すると、そこに立っていたのは全身灰色タイツの僕。腰には太いベルトが巻かれ、水魔法用の水筒とバルバトスの短剣がぶら下がっていた。
……ちなみに、腹には”雑用グレ子“と書いてある。
「はあ? なにこれグレ子って」
「グレーだからニャ!」
「ひでぇ、雑用係ひでぇ」
僕の体格は決して貧弱ではない。少なくとも標準体型だ。それでも、颯太の隣に立つとかなり見劣りしてしまう。さらには灰色で必要以上に影が薄い。鈴姫さんも颯太も、笑いを通り越して無表情になっていた。
……こんなスタートで大丈夫なのだろうか。
「異世界探偵 ベル&ベルの始まりですニャ!」
「いや、ベルノさん。勝手にタイトルつけないで下さい」
ベルノは童話にでて来るキャラクターそっくりだし、なにより風景が”ほんわか“している。どう考えても『異世界探偵』はありえない。
「それに、本来のストーリーから逸脱すると大変な事に……」
「でも水瀬くん。そもそも本のタイトルすらわからないのだから、間違うなってのは無理じゃない?」
「あ、そっか……」
「なら好きに動くしかないでしょ」
颯太は今まで、自分が主体になって動く事がなかったけど、今回ばかりは妙に思い切りがよかった。まあ、想い人と冒険なのだから、テンションが上がるのは仕方がないと思う。
ならば僕は、彼の為にも影の薄い雑用係に徹してみせよう!
「じゃあ、あとはクリアする依頼の数だけど」
「6なのニャ!」
……すでにベルノがルーレットを回していました。
「と、とりあえず事務所に入りましょうよ。ね、ベルノちゃんも」
フリーダムなベルノのフォローに回る鈴姫さん。さすがは探偵……いやベルノの助手だ。そして彼女の言う事務所とは目の前の家。そして、ドア横の看板には『探偵事務所・ベル&ベル』と書かれていた。




