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【異世界スゴロク】止まったマスで転移する呪いの冒険譚 ~ゴールしなければ生き残れない~  作者: 幸運な黒猫
没落令嬢のダンジョン生配信

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第44話・【没落令嬢のダンジョン生配信 その14】

 目の前でグッタリと倒れている(あおい)さん。抱き起してみると、白いジャケットの左肩が裂け、血が滲んでいた。筋肉バカを助ける時にセルケトの毒針がかすってしまったのだろうか。


「ベルノたのむ」

「無理なのニャ」

「え、無理って……まさか、手遅れなのか?」 

「ちがうニャ」

「じゃあなんで! 早く助けなきゃ」

「ベルノができるのは、傷を治す事だけなのニャ」


 と、目をウルウルとさせて、今にも泣きそうな顔をしていた。


「あ……」


 強くて有能とは言えまだまだ子供。そんな小さな子に、無意識のうちに大きなプレッシャーを与えてしまっていたのか。


 僕はただ、葵さんが心配で、ベルノのスキルに期待しただけだった。……いや、そんなのは言い訳だ。

 

 ベルノの小さな肩が、わずかに震えているのが見えて、胸が痛む。ごめんね、と心の中でつぶやきながら、頭をポンポンとたたいた。


「大丈夫、僕がなんとかするから」


 とは言ったものの、どうすればよいのか。考えてみれば、毒を治すって無理な話だ。白の絵の具に黒が一滴落ちたら、混ざりあう前にその部分を()()()()()()()()()。混ざったら分離はできないのだから、治すではなく除去しなければならない。


「でも、毒を抜くって、そんなのどうすれば……」

「お嬢、紫のポーション持っとるやろ」

「あ……」


 ――そうだ、それがあった。


 毒と麻痺に効く紫のポーション。毒を抜くのではなくて無毒化すればいい。


「これなら黒い一滴を透明にできる」


 (かなめ)が転移先の異世界で金策をし、必死に貯めたお金で買った二本の上級ポーション。青のポーションは、目の前で颯太(そうた)の骨折を完治させた。


 だからこの紫のポーションも、それだけの治癒能力を秘めているのだろう。


「セルケトはワイらで潰しておくさかい、お嬢はハッピはんをたのんまっさ」


 ナロー執事長の声に顔を上げると、ショーンもコネリーも振り返らずにサムズアップをしていた。イノリさんはインキャを抱え込んで、こちらにカメラが向かないようにしてくれている。


 頼れる仲間たちにセルケト討伐を任せ、僕は紫のポーションを、葵さんの口にゆっくりと注ぎ入れた。しかし――


「だめだ、飲み込む力がないみたい」

「なに言うてまんのやお嬢。口移しや、さっさと口移ししなはれ!」

「く、口移しって……」

「口移しは口移しやろ。()()()()なにを気にしとるんや」


 お嬢様と女性執事なら確かに女同士だけど……僕の中身は男だ。気にして当たり前だろう。


 でも、助けるためとは言え、キ、キ、キスするなんて……と、そんな事を考えた瞬間、心臓が跳ね上がりドクンッと大きな音が体中に響いた。


 しかし、それでもやらないわけには行かない。急がなければならない。今、葵さんにポーションを飲ませられるのは、僕しかいないのだから。


 ――僕は覚悟を決めて、紫のポーションを口いっぱいに含んだ。


「うっ……ぷ……◯☓△□!」


 なんだこの強烈な液体は……刺激臭が口いっぱいに広がり、呼吸のたびに鼻から抜けていく。キツイ。苦しい。


 例えるなら、夏の暑さで腐った生ゴミと生乾きのTシャツ、そして不快度MAXの苦味系ワキガを合わせたような悪臭だった。


 紫のポーションを受け取る時、要は『緊急時には超超超我慢して飲むっス』と言っていた。彼に言われた通り、今、超超超我慢している。鼻はもげそうだし耳は痛いし目に染みて涙は止まらないしで、意識が飛びそうだ。


 でも、これは葵さんのため。それに『良薬口に苦し』とも言う。これだけキツい薬ならすぐに回復するだろう。


 僕は葵さんの顔をのぞき込み意を決して……そっと、唇を重ねた。


 ゆっくりと薬を流し込み……


 そして……


 そのまま僕は……


「くぁwせdrftgyふじこlp;@:」


 盛大にリバースしてしまった。



††††††††††††††††††††††††††††


 ただ今画面が乱れております。しばらくお待ちください。


††††††††††††††††††††††††††††



 ……頭の中に、テレビで見たあのテロップが流れる。


 そして目の前には、リバースまみれの葵さん。さっき食べたサンドイッチが、未消化のまま夜空の星のように散らばっていた。


「お、お嬢……なにやってまんのや……」


 これには、さすがの執事長も言葉がなかったらしい。ショーンもコネリーも見て見ぬふりをしている。


 でもね、我慢したんだ。超超超我慢したんですよ。だけど、あまりにあまりなあの臭い。我慢できる人の方がおかしいだろう。


「……」


「……ん……」


「……ん〜〜……」


「…………………………」



「——クッサ! なにこれ、クッサ!!!」



 十数秒後、突然ガバッと起き上がる葵さん。さすが上級ポーション、患部に塗ると時間がかかるけど、飲めば即完治。リバース前に少し入った分量で毒は消えたみたいだ。


 ……って、口いっぱいに含む必要なかったのか。


「ちょと、ミナミナ。このクッサイのはなに!?」

「え、あ、あの……え~と」


 とりあえず、葵さんを救ったのは僕だ。それでも胸を張る事ができない。申し訳なさが先に立ってしまい、目を合わせられなかった。


「なんと言うかその……」


 そんな、しどろもどろな僕を見かねてなのだろう、葵さんの肩の傷をなでながら、ベルノが助け舟をだしてくれた。


「それはセルケトのせいですニャ!」


 なんとも上手い返答。『セルケトがやった』とは言わずに『セルケトのせい』と。そこには嘘がなく、曖昧な事実があるだけ。


 ……幼女に気を使われるとか情けない。


「ちっ……あの虫め……ミナミナ、水だして」

「はいはい、ただいま」


 生成した水を頭からかぶる葵さん。リバースを洗い流した直後、ものすごい勢いでセルケトを殴りに行った。数秒後、辺り一帯にはドカンドカンと爆発音が響いていた。


「ベルノ、助かったよ」

「ふっ、これで貸しがひとつですニャ」


 ニヤリとするベルノ。あとでなにを請求されるのだろうか……う〜ん、笑顔が怖いぞ。



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