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【異世界スゴロク】止まったマスで転移する呪いの冒険譚 ~ゴールしなければ生き残れない~  作者: 幸運な黒猫
没落令嬢のダンジョン生配信

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第40話・【没落令嬢のダンジョン生配信 その10】

 アナキンを追いかけて一本道をしばらく走ると、少し広くなっている空洞で彼らを発見した。どうやら休憩中らしい。笑談をしながら水を飲んだり、干し肉をかじっているのが見える。完全に気を抜いているようだ。


 きっと、僕らにオーガーを押しつけた事で、追手はすぐに来ないと(たか)をくくっているのだろう。


「と~ころがぎっ((注))ちょん!」

「……な、なにそれ?」

「さあ、よくわからないけど、死語らしいよ?」


 と目元でピースサインをする(あおい)さん。『らしいよ?』じゃないっての。


「会話のキャッチボールをしましょうよ」

「私、野球よりJリーグ派だから」

「はぁ……」


 そして、そんな僕らはと言うと、アナキンに見つからないように通路の陰から監視していた。


「で、どうするのよ。ミナミお嬢様?」

「どうしよっか」


 どうやって彼らを説得するか、いまだ思案中で手をだせないからだ。


「作戦がないなら、とりあえず殴っとく?」

(あお)……ハッピさん、少し落ち着いてください」

「つまりは、彼らが死ぬ前に戦線離脱させればよいのですよね?」

「そうそう、さすがイノリさん。そんな感じです」

「じゃあ、殴りましょう。微笑みの暴風団団長からも『どんな手を使ってもブチ倒して』と言われますので」

「……あれ? 『なんとしても止めて』じゃなかった?」

「そうとも言うかもしれませんわ」


 ……うちの女性陣は鬼か悪魔か。彼女たちの脳内フィルターを通すと、『止めて』が『殴れ』になるらしい。


「それに、兵は拙速なるを聞くも、未だ巧久なるを()ざるなり。と言いますね」

「あ、聞いた事ある。昔の偉い人の言葉だよね、どんな意味だっけ?」

「四の五の言わずに殴れ。ですわ」

「マジか。偉人さん、凶暴すぎない?」

「ちなみに、ショーンとコネリーは手こずっているようです。いまだ配信がつながっていません」


 と言いながらナイフを構えるイノリさん。


「じゃあさ……」

「そやな。しゃーないで」


 葵さんは屈伸を始め、ナロー執事長まで剣を抜いていた。


「え、なにをするの君たち」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「それ、悪役のやる事だろ……」


 僕の言葉が終わるのを待たずに、三人は同時に動いた――。タイミングすら計ってないのに息がピッタリだ。


 葵さんはブサメン戦士の股間に蹴りをいれて悶絶させ、イノリさんはヘタレヒーラーの首元にナイフを突きつける。ナロー執事長はチビデブ弓士の(つる)を切って無効化させた。


 ……なんとも鮮やかな、見惚れてしまうような連携だった。


「お嬢、なにやっとんのや。自分の担当はキッチリ倒さへんと」

「担当って……この筋肉バカの相手をしろって?」

「もう、ミッションの為でしょ? ちゃっちゃとやっちゃおうよ!」

「マジかぁ……」


 目の前にいるアナキンリーダーの筋肉バカさん。能力をフィジカルに全振りしたようなガチムチ脳筋だ。それゆえに話が通じるか……いや、通じないだろうな。だから悩んでいたんだけど。


「へっ、そんな貧弱な体で、この俺に勝てると思ってんのか?」

「ねえ、リーダーさん。こんな無謀な事して死んだらどうすんのさ」


 止められた事それ自体が相当気に入らないのだろう。筋肉バカは、完全に喧嘩腰で食ってかかって来た。剣を肩にトントンと当てながら、見下ろして威嚇してくる。


「は? うるせぇぞ。てめぇらには関係ねぇ」

「それにリレーピック切らしてんでしょ? 今うちの仲間が打ちながら来てるから、少し待ってよ。配信できないと困るでしょ?」

「んなもんいらねぇよ。録画で必要なとこだけ流しゃいいんだ。おまえらよぉ、俺らの宝物を横取りしようってんだろ?」


 この時僕は『俺らの宝物』って言い方が気になった。初めて来る場所なに、確定的に宝があるような言い方をしたからだ。


「そんなの、あるかどうかわからないじゃん」

「あるんだよ、この先にな」

「なんでそんな事わかるの。初めて入ったエリアなのに」

「へっ、教えねぇ」


 ……まあ、そう言うとは思ったけど。


「どうせ誰かに騙されたんでしょ。バカなのアホなの? 短絡的すぎるんだよ。もうちょっと脳味噌使おうよ。その頭の中でも小豆くらいは入ってるでしょ?」

「いけません、ミナミお嬢様。ガチのバカにバカって言ったらショック大きいのですよ? バカにはなにを言っても理解しないから大丈夫と思いがちですが、バカにはバカなりの”おバカ理論“があるのですわ」


「……て、てめぇら……いいか、よく聞け!」


 煽った効果なのだろうか、アナキンのリーダーはベラベラと喋りだした。『教えねぇ』と言ったばかりなのに……超悪役ムーヴじゃないか。


 彼の話によると、昨夜酒場で飲んでいたら、いたいけな少女が『美人のお姉ちゃんを助けて』と声をかけてきたらしい。三階層に捕まってて、金銀財宝の宝物庫に閉じ込められていると言っていたそうだ。


「で、それを信じたの?」

「当たり前だ! あんな可愛い少女が、人を騙すはずがねえ」


 さすがにこの返答にはみんな呆れ顔だ。騙される方がおかしい。葵さんに至ってはバカでかいため息を吐きながら、ぶっ倒したアナキンのブサメン戦士の脇腹をパンプスのヒールでグリグリと踏みつけていた。


「ほんっと、男ってアホよねぇ……」


 否定できない……それはそれとしてブサメン戦士(あいつ)、なんで嬉しそうなんだよ。


(注)古くは江戸後期の流行歌の歌詞。その後、明治に流行り、大正にはアメリカの行進曲『ジョージア行進曲』に歌詞をつけた『パイのパイのパイ(東京節)』で歌われる。(♪ラメちゃんたら ギッチョンチョンでパイのパイのパイ)

昭和になると、ドリフターズがコントの中で使用して大ブームになる。平成では某アニメの中で『ところがぎっちょんっ!!』と声を上げるシーンもあった。

意味は『ところがどっこい、そうはいかないぞ』って感じ。


調べてみたら、凄い歴史が長い言葉でした(´艸`*)


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