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【異世界スゴロク】止まったマスで転移する呪いの冒険譚 ~ゴールしなければ生き残れない~  作者: 幸運な黒猫
スゴロクの謎。そして……幼女+1

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第29話・男の娘

「「「お帰りなさいませ、ミナミお嬢様!」」」


 ずらりと左右に並ぶ執事とメイドたちが、僕に向かって一斉に会釈をする。当然のごとく”お嬢様“と認識されているみたいだが……これ、誰もおかしいと思わないのか?


「お、おほほほほ……」((あおい)さん、やっぱり代わってよ) 

「ささ、どうぞお嬢様、館の中へ」(イヤに決まってるじゃない)


 葵さんは、『男装の麗人があるなら、女装の美丈夫があってもいいでしょ』なんて言っていたけど、それはないだろう。


 ……いや、ないと言うか普通にイヤだ。なにより、縦ロールドリルが顔にペシペシあたってウザいし。


「あんさんが新しい専属執事かいな」


 とりあえず中に入ろうと歩きだした時、うしろの方で葵さんに声をかける者がいた。なんとなく聞き覚えのある声に思わず振り返ると……


「えらいべっぴんさんやな。ワイは執事長のナロー(narrow)や。よろしゅうたのんまっさ」


「――え、糸目のカシラ!?」


 思わず声にでてしまった。そこにいたのはまさしく、バイキング・オブ・カリビアンで海賊を引きいて僕の味方についた、糸目のカシラその人だった。


「なんでこんなとこに……」

「ん……? カシラ、とはなんでっしゃろ」


 ザワザワとするメイドたち。『どうしたのかしら?』とか『カシラって、ナロー執事長の事?』とか聞こえて来た。


「あ、いや……」

「お嬢、大丈夫かいな。暑さにやれたちゃいますか?」


 これは『他人のそら似』なのか? だとしても変な関西弁までそっくりで妙な気分だ。アン王女は葵さんに似ていたし、単なる偶然にしては違和感がありすぎる。


「メイド長、お嬢を部屋にお連れしてくれ」

「わかりました」

「ほんで、あんさんの名前は?」

「ハッピースリーピーでっす!」


 またもやVサインを目にあてて、ポーズをキメる葵さん。


「ほならハッピはん、行こか」

「えっと、どこに?」

「お嬢の専属執事やろ? その為の訓練に決まっとるがな」


 糸目の執事長は葵さんに手招きをして、館裏手にある訓練室に向かって行った。どうやら護衛役としての武術訓練があるらしい。


 そして僕は、メイド長に案内されて自室に向かった。廊下に敷かれているのは、端々のほつれが目立つ色あせた赤いカーペット。


 壁には不規則に銀の燭台が並び、黒ずんで輝きを失っている。


「これだけ執事やメイドさんたちがいるのに、修繕はしないの?」

「……お嬢様、本当にお忘れですか? 脳味噌が茹で上がっているようですわ。ゆっくりお休みになった方がよろしいと思います」


 と、メガネのフレームをクイッと上げるメイド長のイノリさん。まだ20代後半だが、この屋敷のメイドたちを取り仕切っている人だ。


 彼女は『調度品に関しては、出入りの職人がメンテナンスをする事になっていますが、今は賃金の支払いができずに放置状態なのです』と言っていた。 


 生活費ですら、屋敷内のものを売り払って補填しているそうだ。壁の燭台が欠けていたのも、それが原因なのだろう。


 僕はそのまま、屋敷内を知っているフリをしながらイノリさんについて歩き、なんとか自分の部屋にたどり着いた。


 僕は部屋に入るとすぐに扉に鍵をかけた。『着替えをお手伝いいたします』とイノリさんが言ってくれたが、それは断った。


 ……男の()だとバレたら、この先どうなってしまうかわからないのだから。


 腕の中で寝ている猫のベルノをベッドに下ろして、僕は部屋の中をぐるりと見渡した。


 豪華な天蓋つきベッドに上品なオークのチェスト。太陽が差し込む大きな窓、その先には白いバルコニー。これぞ、THEお嬢様って部屋だ。


 使用人の数も結構いるし、没落貴族ではあるが最低限の体裁は保っている感じか。


 白いテーブルに用意されている紅茶を淹れ、焼き菓子を口に運んだ。


「あ……美味(うま)っ!」


 なにこれ? サクサクのパイ生地に香ばしいアーモンドとバターの香り。ほんのりとクリーミーな甘さが口に残る上品なバランス。


 特に、中に一粒だけ入っているローストアーモンドが、食感、風味ともに素晴らしいアクセントを演出している。


 僕は耳を澄ませて廊下に人がいない事を確認すると、この未知の激うま焼き菓子を、マジックバッグの中に放り込んだ。廃虚部屋で待つみんなへのお土産だ。


 バイキング・オブ・カリビアンの時は、最後の最期に慌てて用意しなければならなくて、酒のツマミしか持って帰れなかった。


 だけど今はこのマジックバッグがある。この中なら食べ物は腐らないので、あらかじめ持って帰る物を入れておける。


「ふう、ミッションコンプリート」


 ……まあ、まだなにもクリアしてないけど。


 そして僕は、バッグの中から本を取りだした。全部で6冊。これは葵さんが、転移する瞬間そこにあった本を抱きかかえて持ってきたものだ。


 きっと、空き時間にでもベルノの世界を探そうと考えたのだろう。一刻も早く親元に返してあげたいって気持ちはわかる。痛いほどわかる。だけど……結局、僕に丸投げなんだよな。


「えっと、これは、【Sランクパーティーを離脱した俺は、元勇者のじじぃたちとダンジョン深部を目指す。】……か」


 これはアニメにもなった有名作品だ。通称:エパじじぃ。記憶している限りでは、ベルノ、ネネと言ったキーワードや、恐竜はでてこないはず。確認はあとまわしでよさそうだ。


 二冊目は【雲ですがなにか?】、三冊目は【転生したら石だった件】。こちらもアニメ化した有名ラノベだけど僕は観た事がない。この辺りから確認すべきか。


「……あっ」


 しかしその下に見えた四冊目。僕はそのタイトルに目を奪われた。



【月は無慈悲な夜の幼女】



「幼女って……ベルノの事か?」


 あらすじを読むと、かなり古いSF作品らしい。考えてみれば、鈴姫(べる)さんが転移したのはSF世界だった。そこで助けだしたのがベルノだ。


 僕の直感が『これだ!』と言っている。SFで繋がっているし、なによりタイトルに幼女とついているのだから。


 僕は、残りの二冊を【雲ですが】と【転いし】と一緒にして、まずはこの本、【月は無慈悲な夜の幼女】のページを開いた。



本作はネオページにて契約作品として展開しています。

編集部の意向で、宣伝のために転載していますが、内容は同一です。

その為、ネオページからは15話程度遅れています。


もし興味を持っていただけましたら、サイトの方に来ていただけるとありがたいです。ネオページの登録も是非^^

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