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異世界スゴロクへようこそ。

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 ——異世界スゴロクへようこそ。

 これは、ゴールを目指しながら様々な世界を旅するゲームです。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 数時間前の事だ。僕、水瀬(みなせ)水音(みなと)は、廃墟好きの仲間と共に、夏休みを利用してとある廃墟スポットの村を訪れた。


 ここは、(すた)れて(さび)れた雰囲気が格別で、古い木材や生い茂った草木の匂いが、『これでもか!』と感性に訴えかけてくる最高の場所だ。

 

 そんな非現実感であふれる廃村の奥に、ひっそりと朽ちゆく洋館があった。日本家屋が並ぶ村に、ポツンとある洋館。それは『異彩を放っている』とでも言えばいいのか、明らかにそこだけ雰囲気が違う。


 これに惹かれなければ、廃墟好きの名がすたる。僕らはためらう事なく足を踏み入れていた。


 歩くたびにギシギシと悲鳴を上げるボロボロの床。舞い上がったホコリは、窓から差し込む光にふわふわと白く漂う。エントランスの先にある階段を上がりながら、『ここでどんな人たちが生活していたのだろう』と思いを馳せる。


 ここは現実にある別世界、歴史と時が作りだした敗退芸術の場だ。




 ——そして僕たちは今、その洋館の一室でスゴロクをしていた。




 これだけ聞くと、誰でも『なぜそんな場所でゲームしているの?』と思うはず。 『お前はなにを言っているんだ?』と言われるかもしれない。きっと、当事者でなければ僕もそう言うだろう。


 だけど僕らには、ゲームを続けなければならない理由があった。



 それは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()からだ。





「ねえ、水瀬水音(ミナミナ)

「……なんでしょう?」


 僕は、ここから脱出するための手掛かりがないかと、部屋の隅にポツンと置いてある本棚を調べていた。


「なんかえっちぃ本でも探してる?」


 と、僕を揶揄(からか)ってくるのは、一つ年上で大学三年生の雅楽代(うたしろ)(あおい)


 整った顔立ちに深い琥珀色のアーモンドアイ。亜麻色のウェーブヘアがふわっと香りを漂わせ、白いシャツにスキニージーンズ、そして青色のストールをセンスよく合わせた美人さんだった。


 廃墟好き仲間にこんな女性がいるなんて。と、僕は初めて対面した時、一挙手一投足に目を奪われた。これは、ひと目ぼれに近い感情なのかもしれない。


「あとでサイトに書いておくよ。ミナミナは廃墟でえっちな本を探していました。って」


 ……まあ、このからかい癖が玉に瑕ではあるけれど。


「マジで止めて下さいって。そのミナミナってあだ名も。僕が泣いちゃいますよ?」

「そお? ミナミナって可愛いじゃん。鈴姫(べる)もそう思わない?」


 葵さんは隣にいるもう一人の女性に視線を向けて、同意を求めた。


「え……私は、その……どっちでもいい……かな」


 彼女の名前は雪平(ゆきひら)鈴姫(べる)


 黒髪のショートボブに色白の肌。清楚なイメージがある若草色のワンピースは、優しい性格がそのまま表れているのだろう。このお嬢様然とした上品な女性は、葵さんと同じ大学の同級生だそうだ。つまり、僕より一つ年上の、可愛らしく大人しい女性(ひと)だ。


 ……とは言っても、必要以上にアクティブな葵さんの隣にいたら、誰でも大人しく見えてしまうと思うのは僕だけたろうか?





「徳川君……そろそろ帰ってくるかな?」


 鈴姫さんがボソッとつぶやいた。


「そうだね、()()()()()二時間はたっているし。もうすぐだと思うよ」

「お腹、すいたね……」

「うん……」


 と、顔を見合わせる葵さんと鈴姫さん。ここに閉じ込められてから半日はたっているのだから、空腹を感じるのは当然だろう。


 丁度その時、スゴロクについているルーレットがカチリと音をたてて回転し始めた。


「あ、戻ってきた」


 部屋の中央に小さな()()()が浮かび上がり、薄緑の光がぼわっと部屋中に広がった。

 そして数秒後、漂っていた光の粒子は魔法陣に集まり始め、だんだんと大柄な人間の形になっていく。


「ふう……。ただいま」


 短く切り揃えられた髪が誠実さを醸し、安心感を与える好青年の徳川 颯太(とくがわ そうた)


 大学ではラグビー部に所属していて、ガッシリとした体躯は立っているだけで威圧感がある。ボーダーのTシャツやジーンズの太ももは筋肉でパンパンだ。その割には気が優しくて、僕と同い年とは思えないくらいとても落ち着いている男だった。


「お帰り。なにか手に入った?」

「うん、バッチリ。ポロッククの串焼きと高級フルーツのボボンボ」

「……食べられるのよ、ね?」

「大丈夫、自分も異世界(むこう)で普通に食べていたから。あ、ポロッククは豚みたいな生き物だったよ」


 そう言いながら颯太はバックパックを降ろして、中から串焼きや見た事のない果物を配り始めた。


 ちょっと不気味さはあるけど、空腹が限界突破していて背に腹は代えられない。それは女性陣も同じで、眉をしかめながらもポロッククの串焼きを頬張り、青紫色のボボンボにかぶりついていた。


「あとさ、氷魔法を習得してきた」

「え~、颯太ナイスじゃん! これで暑さしのげるね」


 胸元をパタパタさせながら、『早く~氷早く~』と急かす葵さん。颯太は二つ三つ言葉を繋げて魔法を発動し、部屋の四隅に氷の柱を出現させた。


「できる男だねぇ、颯太は」


 と、氷柱に抱きつく葵さん。これでもうちょっと落ち着きがあれば……。


「水瀬くん、なにかわかった?」

「ごめん、全然だよ。ルールブックに書いていること以外は情報なし」


 僕が机の上に置かれた黒い本(ルールブック)に目を向けると、みんなもつられて視線を向けていた。


 その黒い本(ルールブック)によると、このスゴロクは止まったマスに対応した異世界に転移し、条件をクリアすれば戻って来られる仕組みらしい。


 その際、習得した魔法やスキル、身に着けている物をそのまま持ち帰れるそうだ。


 だから閉じ込められていても食料を確保できるし、颯太のように氷魔法を覚えれば、エアコン代わりの氷を作りだすことも可能だ。


「あーー! あーあー!!」


 その時、みんなの視線を黒い本(ルールブック)から引きはがす叫び声が響いた。


「みんなひどいっスよぉ〜!」

「あ……面倒なのが起きて来た」

「葵さん、聞こえるって」


 彼女が『面倒』と評した彼の名は、薬師寺(やくしじ) (かなめ)


 丸いサングラスにツンツンヘアの彼は、どこからどう見てもチャラ男としか表現のしようがなかった。

 黒地に原色の花がちりばめられたシャツに、やりすぎなくらい破けているダメージジーンズ。ポケットから垂れ下がる極太のウォレットチェーンが、動くたびにジャラジャラとうるさい。


 悪い人じゃないんだけど、なにかある毎に『うぇ~い!』とハイタッチを求めてくるのは正直ウザく感じる。若干、僕が苦手とするタイプだ。


「あ、薬師寺くんただいま。今帰って来たとこだから安心して」

「なにがどう安心なんスか。もう、起こして下さいって。腹減ってんスから〜」


 僕、葵さん、鈴姫さん、颯太に要。僕ら五人をここに閉じ込めているのは、どう考えても常識的なものではなかった。言わば超常の力、人知の理解が及ばない正体不明の力。そうでなければ異世界を往復したり、魔法を使えたりなんてありえないのだから。


 僕らは、コマを進めるしかなかった。


 今わかっているのは、ゴールしなければここからでられないって事だけなのだから。

キャラクターイメージイラスト


神楽代 葵→

https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/2329941/blogkey/3500417/

雪平 鈴姫→

https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/2329941/blogkey/3500418/



ご覧いただきありがとうございます。


本作はネオページにて契約作品として執筆している作品です。2025/9/7現在で27話まで進んでいます。よろしければそちらにも遊びにいらしてください^^サイト登録&♡や応援ボタンををポチっとお願いします(●´ω`●)


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