脳なしのクズども
完全な沈黙が、彼を迎え撃った。まるで威嚇するように歯の間から息を漏らし、彼は続けた。「誰もいないのか?口を開く勇気のある者は一人もいないというのか?我々は皆この狭い空間に押し込められているんだ。誰か気づいた者がいるはずだ」
静寂は続いた。
「ふざけているのか!」彼は叫び、その声は警備の兵士たちすらも動揺させた。「馬鹿げている!この役立たずの愚か者どもは、目を使うこともできんのか?たとえお前たちがゾンビに食われようと、俺は少しも心を痛めんだろうな、この脳なしのクズどもが!」
その時、一人の小柄な男がおずおずと立ち上がり、声を絞り出した。「…閣下」
「閣下だと?少佐と呼べ…」
「もっと背筋を伸ばして話せ!」ハムは怒鳴りつけた。
男は恐怖で病人のように青ざめていたが、周囲の群衆は彼を促すように視線を送った。「最初の殺人があった時、いつもは見かけない黒人の男が近くにいるのに気づきました」
「有色人種の男だと?随分と創造的な言い分だな――黒人のせいにしろと!そう言いたいのか!」ハムは嘲笑した。「奴らが犯罪に走りやすいとでも思っているのか?」
「いえ、そういう意味では…」男は口ごもった。
「そいつはどんな風貌だった?」
「ええと、黒人でした」
「それで?」
「兵士です」と、告発者となった男は言った。
ジェナは呟いた。「マイク…」「ブラントは…そんなはずない。彼じゃないわ」
マイク・ベンコは苦悶に顔を歪め、黙って唇を噛みしめた。彼もまた、戦闘服を身につけた黒人兵士だったからだ。
「他に何かあるか?」少し冷静さを取り戻し、ハムは尋ねた。
「いえ」男は安堵したように言った。「よくは見えませんでした」
「よろしい。では二番目の殺人は?」ハムは問いを続けた。
「閣下!私、見ました!」一人の女性が手を挙げ、叫んだ。ハムが彼女に視線を向けると、彼女はすっくと立ち上がった。「私が知っているマイケル・ウォレンという人物が、あの女性を襲うのを目撃したんです!」
「嘘よ!」別の女性が叫んだ。「そんなの真実じゃないわ!」
「お前たちの名前は?」ハムは要求した。
「そいつがマイケル・ウォレンで、こっちがマリア・プロクターです!」告発者の女は、愕然とするマイケルを指さして叫んだ。「彼女が殺したのよ。私はこの目で見たんだから」
「やってない!この人は嘘をついているのよ!」
「二人とも――ステージに上がれ!」ハムは轟くような声で命じた。「その女を拘束しろ!」
「捕まえたぞ!」と誰かが叫んだ。武器庫全体が興奮のるつぼと化し、マイケルに向かって罵声と野次が浴びせられた。
州兵たちが彼女を捕らえ、叫び声を上げる彼女をステージへと引きずり上げた。マリア・プロクターは、ややためらいながらもその後ろに従った。若く金髪のマイケルは、どこかジェナに似た面影があった。対するマリアは、厳しく険しい表情で、非難するように指を突きつけていた。
マイケルが三人の兵士に両脇を固められてステージの中央に立たされると、観衆から拍手が沸き起こった。「捕まえたぞ!ゾンビを捕まえたんだ!」
「何を見たのかね、プロクター夫人」ハムは尋ねた。
マリアは興奮した様子で語り始めた。「私はトイレの個室にいました。その時、マイケル・ウォレンが入ってきたんです。危険を感じて、気づかれないように私は両脚を便器の上にあげました。彼女が別の個室のドアを開けると、肉を切り裂くような音が聞こえました。女性の短い悲鳴がして、喉が切り裂かれたのです。彼女がいた個室から、血が私のいる個室にまで流れ込んできました」
「そんな…私はやっていません」マイケルは懇願した。二人の州兵が彼女を押さえつけ、ゴーディが彼女の額にライフルを突きつけるよう命じられた。
「彼女は、その体の一部を喰いちぎりもしたんです!」マリアは涙を浮かべながらも、強い口調で告発した。「まだ息があったというのに!そして、血と肉片をあたり一面に残したまま、彼女は立ち去ったのです!」
「その通りだ」ピケット将軍が口を挟んだ。「被害者はトイレで発見された。喉が切り裂かれ、体の一部が捕食されていた」
「いいえ、なぜ私が嘘をつく必要があるの?嘘つきは彼女の方よ!」マイケルは泣き崩れた。
「何か弁明はあるか?」ハムは迫った。
「私は彼女の夫と…関係を持っています」マイケルは、苦渋の表情で告白した。「マリアの夫であるグレゴリーと、不倫関係にありました」
観衆は水を打ったように静まり返った。マリアの顔は怒りでみるみるうちに赤く染まった。
「よくも…」彼女は言いかけたが、一度言葉を切り、心を落ち着かせようとした。そして、憎悪に満ちた言葉で激しく言い放った。「私は、お前があの女を殺すのを見たんだ」
「ご主人はここにいるかね?無実の人間を死なせるわけにはいかん」ハムは宣言した。「グレゴリー・プロクター、立ち上がってステージに来たまえ」
群衆の中から、諦めきった表情の男が現れ、ぶつぶつと何かを呟きながら壇上に上がった。彼の顔には敗北の色が濃く浮かんでいた。
「プロクター君、君はマイケル・ウォレンと不倫関係にあったのか?」ハムは尋ねた。
グレゴリーは、涙ながらに懇願するマイケルと、氷のように冷たい怒りをたたえた妻の顔を交互に見た。彼の口が開いたが、言葉が出てこない。
「私は訊いているんだぞ――」
「いいえ!」グレゴリーは叫ぶように言った。嗚咽が漏れる。「ありません。決して」
「ほら!」マリアは鼻で笑った。「聞いたでしょう。今、この場で」
「グレゴリー、信じられない!」マイケルは泣き叫んだ。「どうしてそんなことが言えるの?私たち――グレゴリー!一緒にいたじゃない!私を助けて!」
グレゴリーは折り畳み椅子に崩れ落ち、両手で顔を覆った。「マイケル…」と、うめき声が漏れた。
「グレゴリー、本当かね?」ハムは、かすかな不安を滲ませて尋ねた。「どうも確信が持てないように見えるが」
「彼女はゾンビに噛まれたんです!腕に傷跡があるわ!」マリアは泣きながらマイケルの前腕を指さした。
兵士たちがそれを検分した。一人が言った。「ゾンビの噛み跡かもしれません。鋭い縁は、歯の跡である可能性があります」
「割れた瓶のせいです!」マイケルは必死に訴えた。「歯なんかじゃない――私は違うの!何を考えてるの?」
「殺せ!」「ゾンビを殺せ!」というシュプレヒコールが、群衆の中から湧き上がった。
「どうして彼女を傷つけたりできるの?」ジェナが息をのむと、ハムはさらに問い詰めた。
「まさか、彼女を殺すなんてことはないよな?」マイクが囁いた。「感染を早く取り除かなければならない、ということなんだろう」
「マイケル・ウォレン」ハムは苦渋に満ちた顔で言った。「この施設の安全のため、お前を感染者とみなし、有罪を宣告する」グレゴリーの抑えきれない涙とは対照的に、マリアの顔には厳粛な復讐の色が浮かび、群衆は歓喜の声を上げた。「ゴーディ一等兵、刑を執行せよ」
「いや!」マイケルは絶叫した。
ゴーディが前に進み出た。「…どうすればよろしいですか、閣下?」
「彼女を殺せ。即刻、できる限り人道的にだ」ハムは命じた。「ゾンビは異常に力が強い。彼女を拘束しろ。猿ぐつわをかませて黙らせろ」
群衆が血に飢えた叫び声を上げる中、二人の州兵がマイケルを膝まずかせ、彼女の口に布を押し込んだ。ゴーディは彼女の背後に立ち、M-16を構えた。うなだれ、震える彼女の体を見ていると、吐き気がこみ上げてきた。
「ゴーディ、やれ」ハムは呟いた。「さあ、やるんだ――俺だって好きでやっているわけじゃない」
ゴーディの視線は、マイケルの背中に釘付けになっていた。カメラのフラッシュがたかれる中、彼女の死を求める喧騒はますます大きくなっていく。マリアは、彼女の破滅を前にして、満足げに微笑んでいた。
やらなければならない。それが不可欠なのだ。彼は銃身を彼女の頭蓋骨から30センチほど離して構えた。
腕を安定させ、彼は目を閉じた。「すまない」と、喉を詰まらせながら言った。
そして、引き金を引いた。彼女は前に崩れ落ち、頭をステージに打ち付けた。復讐に満ちた歓喜が、群衆の中で爆発した。ゴーディにとって、その短い瞬間は永遠に続くかのように感じられた。目を開けると、血まみれで破壊されたマイケルの頭部が目に入った。州兵たちは、その光景に動揺しつつも、ゾンビとの戦いで鍛えられた心で涙をこらえた。
「…終わったの?」ジェナはマイクの肩に顔を埋めて尋ねた。
マイクは真っ青な顔でため息をついた。「終わったよ」「何もかも、すべて」




