第8話【地下10階の邂逅、加護の鍵と、待ち受ける少女】
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ダンジョン探索を開始してから、すでに三日が経っていた。
レオルたちは、創造スキルによって整備された通路を進みながら、着実に階層を攻略していた。
「この第四階層……床の模様が怪しいな」
ミルがそう呟いた瞬間、ゴトッと石板が沈む。
「うわっ!? ちょっ、ちょっと待っ……うわあああああ!!」
レオルが引っ張りあげるまで、ミルは半身をスライムだらけの落とし穴に突っ込んでいた。
「ぐぅぬぅぅ……服がぬるぬる……っ」
「気を付けろって言ったそばから……」
セラがため息をつく。
彼女の氷魔法は、トラップ解除や魔物封印にも役立ち、探索はスムーズに進んでいた。
エルフィナも戦闘と感知役として抜群の働きを見せていた。
そしてついに、第9階層。
そこは“迷宮”の名にふさわしく、複雑な構造をしていた。
右に行けば行き止まり、左に行けば同じ場所へ戻ってくる。さらには壁が移動して道が変わる。
「これは完全に“知恵”の階層だな」
レオルはスキル[創造]を使い、地形を記録するマッピング用のゴーレムを展開。
ミルの助言を得ながら、動く壁の法則性を割り出す。
「このパターン……太陽の時間帯に合わせて移動してるよ!」
「つまり、地上の時間と連動してるってことか。
やるじゃん、ミル!」
ようやく迷宮を抜け、最深部へと進む階段が現れた。
階段を下りた先、第10階層。
空間は異質だった。
そこだけはダンジョンの雰囲気ではなく、“聖域”のように澄んでいた。
空気が軽く、地面は白く輝く石でできている。
「なんだよ、ここ……」
と、正面の玉座のような場所に、一人の少女が腰かけていた。
ふわりと揺れる、ピンク色の長髪。
その瞳は、まるですべてを見通すような金色で、衣は巫女のような白い装束に、魔術的な文様が浮かんでいた。
「……ほぉ、ここまでこれたか…待ちくたびれたぞ…」
少女は頬杖をついたまま、くすりと微笑む。
「お前がこのダンジョンの主か?」
レオルが問うと、少女は立ち上がる。
「いいや。わたしは“記録者”にして、“鍵守”……
お前の創造に必要な“加護”を与える存在よ」
彼女の言葉に、レオルの脳裏に浮かぶ。
(“加護を得るには、己の意志で扉を開けろ”)
少女は胸元から、銀色の鍵を取り出した。
「この鍵は“スキルの加護”を解放する鍵。
ただし、お前の意志と“信念”がなければ開かぬ。
問いに答えよ、創造の半神よ、、」
空間に魔法陣が広がり、四方に光の柱が立つ。
「汝は、何のために“創る”?」
その問いに、レオルは即答した。
「守るためだ。ここに集まってきた皆を。
“居場所”を。誰にも壊されない俺たちの未来を創造するっ!!」
少女は微笑む。
「その答え、正解よ。では、受け取りなさい」
光の鍵が空中に浮かび、レオルの胸元に吸い込まれた。
【スキル進化•創造→創造加護】
【追加スキル解放•加護付与】
・創造した物や存在に加護を与えられる
・加護の種類は“感情”と“関係性”によって変化
・対象により進化の可能性あり
「……これで、みんなを強く守れるってわけか」
レオルの手が静かに震えていた。力を得たという実感よりも、それ以上の“責任”の重さがあった。
ピンク髪の少女は、ふっと微笑む。
「私の名前はクロエ、私の役目はひとまず終わったわ。ここは“創造者”のダンジョン。
これからは、あなたの意志で形を変えるでしょう。……また会いましょう、“創る者”」
そう言って、彼女の姿は光となって消えた。
エルフィナが驚いた顔でレオルを見る。
「レオル……今、何をもらったの?」
「新しい力さ。、、“誰かのために、創る力”をな」
レオルはそう言って微笑んだ。
こうして、ダンジョン最下層の“試練”は終わった。
だがこれは、始まりにすぎない。
創造の加護と、新たな進化の扉が、静かに開かれたのだった。
続