第5話 【王女との再会。そして、秘密の記憶】
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朝焼けの中、レオルは小高い丘の上に立っていた。
まだ草の露が冷たく光る未開の大地。
だが、昨日までとは違う。
セラが加わったことで、村は少しだけ“居場所”としての形を増した。
小屋も一つ増え、炊き場や水路もミルとセラの手で整備が進んでいる。
創造スキルの進化で「武具」のカテゴリも解放された。
「武具って言っても……何を作ればいいのか、分かんねぇな…いきなり神具とか作れねぇかな…」
レオルは腰を下ろし、石に手を当てながら想像を巡らせていた。
そのとき、ミルが丘の下から駆けてきた。
「レオルーっ! 村の東、森の境界で“人間の女の人”が倒れてたよ!」
「人間だと?」
レオルの表情が固まった。
セラが追われていたばかりだ。
魔族か盗賊か、それとも――。
「ミル、セラに警戒させておけ。俺が見てくる!」
「うん、気をつけてね!」
森の縁の中、そこに彼女は倒れていた。
薄汚れたローブをまとい、顔をフードで隠している。
が、レオルは一目でわかった。
……この気配、この顔。この、、“匂い”。
(まさか……)
彼女のまつげが震え、ゆっくりと目を開ける。
「あっ……あなた、は……」
その瞬間、彼女の瞳が見開かれた。震える声で、彼女が言う。
「もしかして……レオル?、なの?」
レオルの中で、過去の記憶が一気に溢れ出す。
かつて、王城の炎の中で守った“あの王女”。
「……お前、まさか……エルフィナ……?
生きていたのか?」
そう、彼女は王国の第一王女
エルフィナだった。
かつての戦争の混乱で命を落としたと思われていたが、彼女は生きていた。
「信じられない……モンスターだったはずの、あなたが、どうして……」
エルフィナは膝をつきながら、涙をこぼした。
「……あなたが私を庇って死んだとき、私は……何も、できなかった」
その目には後悔と罪悪感があった。
レオルは静かに言葉を返す。
「俺はモンスターだった。でも……なぜか守りたいって思ったんだ。お前の“命”だけは、絶対に奪わせないって」
「……愚かね。あのとき、あなたを信じきれなかった人間の世界なんて……」
エルフィナはフードを外した。
その金色の髪はかつてよりも少しくすみ、疲れた表情に影を落としていた。それでも、気高さは変わっていない。
「それより、お前……なぜここに?」
「私は……逃げてきたの。
今の王国はもう、腐りきっている。
魔族と癒着し、“異種族排除”を始めているの」
セラが狙われていたのも、その一環だった。
「“雪精族”や“賢族”のような人外は、もう王国に居場所はない。
……だから私、止めようとしたの。でも……」
「追われた、ってわけか」
「ええ。私の護衛だった人たちも……今はもう、きっと…」
エルフィナの声は震えていた。彼女は「元王女」ではなく、今やただの亡命者にすぎない。
レオルは彼女に手を差し出した。
「……じゃあ、俺たちの村に住めよ。
俺たちの“村”は誰でも受け入れる。
モフモフも人外も元王女もな」
「レオル……いいの?」
「今度は誰も、見捨てたりしねぇよ」
その手を取ったエルフィナの手は、冷たかった。
けれど、そこに宿った小さな灯火、、
それは、確かに未来へと続く光だった。
そしてふたりで村に戻ると、、、
「ええええぇぇぇぇ!? 人間の、しかも王女様っ!?」
ミルが叫び、セラがポカンと口を開ける。
村の人数は、これで“3人+1匹+1人”。だが、どこか家族のような一体感があった。
「ふふ、レオルってば……ほんと、拾ってくるの好きね…そのうち“魔王”でも拾って来ちゃうんじゃないの?ふふふっ」
「うるせぇな!なぜか気づいたらこうなってたんだよ!」
笑いがこぼれる村。
だがレオルの心には、もう一つの決意が芽生えていた。
(王国は腐ってる。異種族を追い詰め、王女すら見捨てた)
だったら俺は、この村を、、
世界で一番“居場所”のある場所にしてやる。
そして、必要なら……世界を敵に回してでも、守る。
(まだ足りねぇな……スキルも、仲間も、力も)
「もっと、創らなきゃな。もっと強く。
そしてもっと……深く」
創造スキルが、再び微かに震えた。
【創造スキルが進化条件に達しました。
次の段階“加護付与”の鍵を発見しました】
「……“加護付与”?」
それは、かつて神が与えし力の断片。
村を守る者にのみ与えられる、特別な力、、
次なる物語の扉が、静かに開かれようとしていた。
続