第47話 【迫る魔族軍と、“盟約”の夜】
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月明かりが村を優しく照らし、村の中央、、
集会所には重苦しい空気が漂っていた。
「つまり、王都と魔族の双方が“監視”を始めたってことよね……」
ルーナが影から滑り出て、椅子に腰を落とす。
「どちらも、“神核”がこの村にあるって知ってるってことだ」
バンザイが腕を組み、唸る。
「しかも今回は様子見だが……次は、本格的な攻勢もあり得る」
エルフィナの表情は険しく、手元の弓を撫でながら言う。
「ふふっ、でもさ? 望むところじゃない? レオルたちと一緒なら、私、どんな敵だってぶっ飛ばしちゃうんだから♡」
ディアボラは椅子に足をかけて、茶目っ気たっぷりに笑う。
「でも……戦いばかり続けば、せっかくこの村に来てくれた人たちは、きっと疲れちゃうよね」
ミルがしゅんと肩を落とす。
「だから俺たちは“備える”。
みんなが“幸せになれる村”になるために、、、
先手を打つんだ」
レオルが、静かに口を開いた。
手にしていた紙片には、紋章と署名が並ぶ。
《王都観測局 第三眼》《魔界監視庁 第四視点》による、合同監視通達。
「このままだと、俺たちは“世界の秩序を乱す存在”として排除されかねない。だからこそ……」
「“脅威”じゃなく“共存”として見せる必要があるのね」
ルーナが静かに言った。
「うん。神代の頃、神核所持者は“盟約”を通して各国と和平関係を築いてた。その形式はまだ使える」
ノアが記録紙を出しながら言う。
「“盟約の夜”か……いい響きだな…」
レオルが笑うと、皆の視線が自然と前に向いた。
「ディアボラ…頼めるか?」
ディアボラは微笑み、勢いよく立ち上がると、胸を大きく揺らし、、
「レオルの頼みなら喜んで♡」
その夜、村の広場には長テーブルと料理、灯火が並び、盟約の式典が開かれた。
そして、、、
魔族の使者として、褐色の肌と小さな角を持つ美貌の少女“ナラ”が現れた。軽装に見える薄布の戦装束、腰には黒炎の紋章が揺れる。
「へぇ〜、これが人間とディアボラ様が共に住む村……なかなか、面白そうじゃない」
対して王都側からは、仮面を付けた文官風の青年“シエル”が姿を現す。
薄い笑みと共に、手には巻物を提げていた。
「非公式ではあるが、我ら観測局としても“場の空気”を確認しておく必要がありまして……ご容赦を」
料理を勧めるバンザイ。警戒するルーナ。無邪気に話しかけるミル。
「ふん、人間の料理なんて……」
そう言いながらナラがかじったバンザイ特製の“竜肉のスパイス煮込み”に、目を見開いた。
「なにこれ……うまっ……!? いや、別に感動したわけじゃないけどっ!パンダちゃん…お土産でもらえる?」
「ふふっ!気に入ったか、あぁ!用意しとくよ。
冷めても美味いぞっ!」
一方、シエルは淡々とした態度ながらも、ノアが提示した古文書に興味を示す。
「ほう……神代盟約条文、第十二式……。なるほど、こちらの記録とは異なる視点が含まれている」
「でしょう? 観測だけでは届かない場所がある。それが、現場の“絆”よ」
ノアの言葉に、シエルは仮面の奥で何かを感じ取ったようだった。
火が燃える。
その傍らで、レオルとナラ、シエルがテーブルに座る。
「なるほど、お前が“半神”ってやつか。私の主、、
魔王ディアボラ様が面白がるわけだ」
ナラがにやりと笑う。
「……俺たちは、戦いを望んでない。ただ、“ここにいる”ことを認めてほしいだけだ」
「ふむ。“居場所”ってやつか。ま、戦うことだけが生きる道じゃないってのは、少しは分かってきたけどさ……」
「私共としては、今回は書類として提出し、内部で協議の余地はあります。ですが、あくまで正式な返答はまだ先になります」
シエルが淡々と答える。
それでも、夜は静かに、確かに進んでいた。
「戦いも楽しくていいんだけどさ☆……
あんたたちとこうして一緒にいると、心が緩むっていうかさ……なんか…平和っていいな♡」
ディアボラが火を見つめながら、ぼそりと呟く。
「俺たちは、誰もが居場所を得られる場所を作りたい。それだけだよ」
レオルの言葉に、ディアボラは少し顔を赤らめて、
「ふふふっ!……ますます、惚れ直しちゃうかもね♡」と、照れくさそうに笑った。
その様子にルーナが「くっ、またか……爆乳魔王めっ」と肩をすくめながらも、微笑んだ。
宴も終盤。
ノアが空を見上げて呟く。
「これで上手くいけばいいけどね…もし、次に来るなら“魔族の本陣”かな…?」
レオルの神核が淡く脈動し、彼もまた、星を見上げた。
「誰でもいいさ。来るなら来いだよ。
“世界と向き合う”ための準備は、もうできてる」
その夜。
世界の均衡が揺れるなか、村に芽生えた“共存”の灯火が、ゆらりと確かな形を持ちはじめていた。
続