第39話 【告げられた審判と、魔族軍の影】
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朝霧がまだ大地に残る時間。
村の外れにある小道に、異様な気配が立ち込めていた。
エルフィナが警戒しながら弓を構え、ルーナが影の中から進む。
「……あれは?」
道の真ん中に打ち立てられていたのは、真紅の杭。そして、その杭に括りつけられていたのは一枚の“黒布”。
布には、禍々しい紋章が刻まれていた。
《アザル魔族国 第二戦王“緋骸より、半神レオルへの審判を告げる》
《七日以内に神核を引き渡し、村を解体し立ち去ること。さもなくば、魔族軍をもって殲滅する》
《これは“審判”である。拒めば、交渉の余地なく戦争と見なす》
「……宣戦布告、か」
レオルが布を手に取り、低くつぶやく。
「“審判”だと……?」
バンザイが集会所で拳を握る。
机には布と共に、複数の魔族紋章が並んでいた。
それは、魔族の“戦王”たちが同意の下で出す“戦争宣言”の証。
「第二戦王“緋骸”……本気だな」
セラが静かに目を伏せた。
「“緋骸”……かつて魔族の中でも最も苛烈で、破壊を好む狂戦士。理屈では止まらない存在」
「……あのディアボラとは、対極にいるような奴か」
レオルが呟くと、ノアが頷く。
「そう。ディアボラは面白さとバランスを見て動くけれど、“緋骸”は純粋な“破壊”を信奉している。
魔族の中でも、彼が動くときは“侵略戦”と同義」
「つまり、待っていても滅ぼされるだけってこと、、」
ミルの声が震える。
重い沈黙の中、レオルが口を開いた。
「選ぶしかないな…、、ここを守るか、捨てるか?」
皆の視線が、彼に集まる。
「ふふっ、悪い…だが俺は、もう決めてるよ」
レオルが拳を握り、ゆっくりと立ち上がった。
「ここは、俺たちの村だ。神の力でも、魔族の軍でも、勝手に壊させないっっ!」
「……うん!」
ミルが立ち上がる。
「わたしも、ここが“居場所”だよ! 絶対に、渡さない!」
「同じく!!」
エルフィナが力強く言う。
「かつて王都に居場所を失った私が、初めて“帰る場所”と呼べたのがここなのだから」
「……仕方ないなぁ、また殺るか、、」
ルーナがニヤッとして、髪をくくり直す。
「まぁ、私が育てた影の通路、簡単に踏み荒らされたくないし? “守って殺る”に決まってるでしょ」
セラも静かにうなずき、、
「私も……仲間と過ごしたこの村を守りたい。私たちで、この村を“砦”にしましょう」
バンザイが豪快に笑う。
「はははっ!じゃあ決まりだな! レオル、そろそろ“あれ”を出してくれよ。……ダンジョンの改修、進めるぞ!」
その日の午後、、、
レオルたちは再び《始まりのダンジョン》の最奥に降り立った。そこは、創造の力で半ば拠点化された迷宮。
だが今後は、この場所を“防衛拠点”に進化させる必要があった。
「[創造]•[深層図面展開]……!」
レオルのスキルが輝き、ダンジョンの構造図が空間に現れる。
「うわぁ、なにこれ……また凄くなってる…」
ミルが目を丸くする。
ダンジョンは複雑に入り組んだ迷宮と、各階層に異なる属性が宿る特殊構造。最下層には、ノアが定住する小さな観測空間も存在する。
「ここを、、“村の地下砦”に改造する」
レオルの提案に、全員がうなずいた。
[創造]の力が唸りを上げ、ダンジョンの壁が変形し、結界と機構が組み込まれていく。
魔族との戦争は避けられない。
ならば、俺たちは戦うのではなく、、
「“守りながら、未来を選ぶ”」ために動き出す。
そして、七日後に迫る“緋骸”との激突を前に、
村は、変貌を遂げていく。
続