第35話 【魔族来襲!黒き牙の尖兵】
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前回の戦いからしばらくは平和な日々が続いた。
だが、、朝霧のなか、村を囲う森の奥から、“何か”が近づいて来ていた。
鳥たちの鳴き声が止み、獣たちは森を離れ、風が妙に静かになる。
、、それは、自然が“異物”を拒絶するような空気だった。
(レオルさま、森が……変です)
早朝、村の見張り台から戻ってきたポポが、不安げに何かを訴える。
(森が……静かすぎるよ。動物たちも逃げてるようで)
「やっぱり、、来たな!」
ポポの慌てぶりを見て、レオルの表情が引き締まる。
昨日までのほっこりとした空気は、もうどこにもなかった。
温泉の湯気も、食事の余韻も、戦場に変わりゆく村の気配に溶けていく。
「全員、戦闘準備を。バンザイ、東門に。セラとミルは西へ。エルフィナは迎撃。ルーナは遊撃!ノアとポポは村の中の守りを!」
「了解ッ!」
「任せて!」
「……やるしか、ないですね」
(はい、ポポ、がんばる……!)
全員が即座に動き出した。
誰一人として怯えず、自分の役割を理解していた。
この村での日々が、彼らを確実に“仲間”にしていた。
そのとき、、
バキィッ!!
森の樹々を薙ぎ払うような衝撃音とともに、漆黒の影が村の外へ現れた。
、、それは、“人ではない”何かだった。
全身を黒い外殻に包まれ、獣のような体躯を持ちながら、背中には骨のような翼を生やしている。
瞳は赤く、言葉は持たず、ただ殺意と呪詛のみを纏っている。
「やっぱり来たな!…魔族……!」
レオルが睨みつける。
「いや…、“魔族の尖兵”だな」
ノアが冷静に告げる。
「魔族本体が来る前に、偵察と破壊を担う下位個体よ……けれど、それでもこの世界の理からは大きく外れてる。手を抜くと危険よ」
「なら、全力で止めるだけだ!」
レオルの背後に“創造の紋章”が輝く。
「[創造][展開・因果歪曲陣]!」
空間がねじれ、足場が変化する。
地面が罠のように変わり、黒き獣を絡め取ろうとする。
だが、、、
グシャッ!
魔族の尖兵は地面ごと砕き、そのまま突進してきた!
「……思ったより硬いな!」
「[創造]じゃ止まらないのか……?!」
即座にレオルは空間を歪め、自身の位置を後方へと転移。
だがその隙に、魔族は村の柵へと肉薄する!
「させませんっ!!」
前に出たのは、ミル。
「[雷撃魔導陣・斬雷]ッ!!」
炸裂する雷撃が魔族を打ち据えるが、外殻を焼くだけに留まる。
「ッ……耐久、ありすぎっ!」
そこへ、セラの氷矢が飛ぶ。
「狙うは、関節!」
氷が関節部に突き刺さり、一瞬だけ魔族の動きが止まる、、その隙をバンザイが見逃さない。
「ひゃっほっー!隙ありっっ[双牙連斬・轟牙陣]っ!!」
両手の剣が光り、魔族の外殻を裂いた!
血のような黒煙が噴き出し、魔族がようやく呻き声をあげて後退する。
「いける……! あと一撃!」
「レオル、今よ!」
ノアが叫ぶ。
レオルは前に出て、拳を構えた。
「[神創][崩壊撃・白神掌]!」
振り下ろされた拳が、魔族の核を打ち砕いた。
黒い身体が崩れ、地に還っていく。
「ふぅ……なんとか、倒したか」
村の空気が、少しずつ静けさを取り戻す。
しかし。
「……あれは、尖兵にすぎないわ…」
ノアがぽつりと呟いた。
「これから“本隊”が来る。魔族は、人の理も、神の法も通じない。すべてを喰らう“混沌”よ」
レオルは空を仰ぎ、強く拳を握る。
「俺の想像の範囲内!なら、俺たちの村が“世界の希望”になるまでだ」
仲間たちも、それに頷いた。
続