第34話 【帰還、そして癒やしの湯けむり】
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戦いの終わった王都から離れ、レオルたちは、静かに歩を進めていた。
神核の震えも、記録者ノアの気配も、今は感じない。
ただ、風が優しく背中を押し、まるで「帰っておいで」と語りかけているようだった。
「はぁ〜……やっと帰れるんだね……」
セラが心底ホッとしたように息をつく。
「うむ、我の肉体もそろそろ癒しが必要だ。温泉……温泉が待ってるぞぉぉぉ!!」
バンザイがふんふんと鼻を鳴らす。
「気のせいでしょ〜、まだ匂うわけ……あ、本当に匂うね!」
ミルもくんくんと空気を嗅ぎ、笑った。
そして、、村の門が見えた。
(レオルさまーっ!)
小さな影が駆けてくる。
「ポポ!」
そのモフモフに、レオルの顔がほころぶ。
ポポは転びそうになりながらも、真っ直ぐ走ってくる。
変わらぬ笑顔で、でもその目には小さな涙が光っていた。
(みんな、帰ってきてよかったぁ……!)
ぎゅっとレオルの腰にしがみついたポポに、仲間たちも優しい目を向ける。
「ポポ、お前……」
(うん。村はね、ちゃんと守ったよ! 森の精霊さんとも協力して、誰も入れなかったもん!)
「お留守番ありがとうな!ポポ」
レオルが頭を撫でると、ポポはくすぐったそうに笑った。
その日の夕方、村の温泉施設には、湯けむりと笑い声が満ちていた。
「極楽…極楽…これはまさに、神の恵み〜♡……」
セラが雪の羽根と大きな胸をふわふわと湯に浮かべながら、幸せそうに目を閉じる。
「ふ、ふぁぁぁ、、な、なんか……戦いの疲れが一気にぃぃ……」
ミルは髪をまとめてタオルを乗せて、ほんのり頬を赤らめていた。
エルフィナとルーナも、手足を広げて
「あぁぁぁ… 気持ちいぃぃぃ」と疲れを癒した。
ミルがジーッとセラの胸を見る、、、
「んっ?どーしたの?ミル?」
「いやっ…そんなに“浮くんだなぁ”って思って…」
セラが自分の胸元を見て、顔を赤くして
「んっ!ミルの…ばか…っ」と言って、ブクブクと泡を出しながら温泉に沈んでいった。
一方、男湯では、、、
「おぉぉぉ〜! 肩が、腰が……ほぐれていくぅ〜〜っ!」
バンザイは両手両足を湯船に広げ、まるで溶けるようにふにゃふにゃ、毛がペターに。
「はぁ、やっぱ村の温泉が一番だな〜!レオル!」
「そうだな!バンザイ!」
レオルが湯に浸かりながら空を見上げると、横からノアの声が聞こえた。
「……やっと、ちゃんと休める時間がきたんだね…」
「ん。ノアってこっち?…よくわかんないけど、無理はするなよ!てか、温泉入れるんだな!」
「うん、ありがとう。私、まだ全部“記録”を止められたわけじゃないけど……でも、“人の仲間”になってみたいって思えたから…」
ノアは肩まで湯に浸かり、空を仰いだ。
その横顔は、ただ“普通の少女”のようだった。
その夜。
(レオルさま、こっち来て!)
ポポに手を引かれて、村の広場へ。
そこには、手作りの宴席が用意されていた。
焼いた魚、香ばしいパン、ミルが用意した薬草スープ。
そして、バンザイ特製の肉まん。
「ふふっ、みんなでお祝いだね。お疲れ様!レオル」
ミルの言葉に、レオルは小さく笑った。
「ふふっ!みんなもお疲れ様!」
その一言が、村の空に染み渡った。
その夜、レオルはひとり、村の丘に立つ。
遠くを見つめて、呟く。
「……でも、きっともうすぐ、新しい敵が来る」
空を舞う一羽の黒い鳥が、不穏な影を落としていた。
魔族。
その言葉が、胸の奥でざわめいた。
「どうせ来るんだろ…?来いよ……この村を、仲間を、絶対に守ってみせる」
レオルの瞳は、戦士の光を帯びていた。
続