第26話 【王都の影と、神の系譜】
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「……これで、観測結界の初期陣は完成っと」
ミルとセラが構築した魔導陣を、レオルの[創造]が補強する。
村の周囲には、見えない結界のようなものが張り巡らされ、これから王都の干渉を感知し、逆探知するための仕組みが整えられていた。
「まさか、こっちから“王都”を監視するとはね。ふふっ、やるじゃない」
エルフィナが感心したように呟く。
「受け身でいる必要なんてないさ。向こうはすでに“動いている”。次に仕掛けてくるのは……おそらく、“神権機構”直属の戦闘部隊だろう」
レオルはそう断言した。
「“神権機構”……?」
セラが聞き返す。
「あぁ、王都の裏で信仰を操ってる連中。
表向きは“神の代理人”だけど、実際は“神核を持つ者”を排除してきた歴史がある」
「じゃあ、レオルは……」
「“その対象の筆頭”だ」
静かに告げられた言葉に、場が凍る。
「神核を持つ存在。それは“神の残滓”を宿した特異個体、、つまり、神に近すぎる存在。
神権機構にとって、俺は“秩序を脅かす異端”なんだ」
「でもさ、神の力って、別に悪いことじゃないよね? レオルはそれで、たくさんの命を救ってきた」
ミルが真っ直ぐにそう言った。
「ああ、ありがとう。でも……それは“神の力”の使い方を知ってる俺だから、だ。
それに、強すぎる力は他者から見たら脅威だからな…」
レオルは静かに続けた。
「問題は、“神核”そのものに眠る“意志”の存在。
神権機構はそれを恐れてる」
「意志?」
バンザイが眉をひそめる。
「そう。俺に宿っている“神核”は、“かつての神”の断片。しかもそれは完全に滅びたわけじゃない」
その瞬間、村の空に一筋の光が走った。
それは天に向かって浮かび、白く発光する“円環”となって上空に留まった。
「これは……?」
空に浮かぶその光輪は、まるで“神の印”そのものだった。
「今、俺の[創造]は進化の段階に入った。
そして、、“神の系譜”へとつながり始めている」
レオルの背中に、微かに光る紋章が浮かぶ。
、、それは、かつての神々の系譜に連なる証。
「レオルが、、……“神の後継者”ってこと?」
ルーナの声が震える。
「……ああ、かつて人とモンスターと神が共にあった時代。その時代に神として存在していた“者”がいた。俺の“神核”は、たぶんその一部だと思う…」
「じゃあ……この村を育てていくことで、“神”としての力が目覚めていく?」
「そうなる可能性は高い」
だからこそ、、王都は“今”のうちに潰しに来る。
まだ完全に覚醒していない今こそが、最も隙がある。
、、その夜。
レオルは村の丘の上で、空に浮かぶ光の輪を見つめていた。
(この力の意味を、改めて考えないとな……)
「レオル!」
背後から、エルフィナが現れた。
「観測紙の発信元を、追跡したわ。
どうやら“東の王都外周”、、“星見の塔”って場所に通信の基点がある」
「星見の塔……王都でも、上級術士と預言者しか入れない場所だな、、」
「ええ。そこに、次の“使者”が待機してる。
王都と、直接交渉するために派遣される“対話の者って名乗ってたわ」
エルフィナが差し出したのは、また一枚の紙だった。
【次回観測交信予定:三日後。王都・星見の塔、対話の門にて。観測者識別:B05対応】
「つまり、俺たちに“選ばせよう”ってわけか」
行くのか、行かないのか。
交渉の道を取るのか、戦うのか、、
レオルはゆっくりと拳を握る。
「行くしかない。交渉でも、威圧でもいい。“俺たちの存在”を知らしめるために」
「一人じゃ行かせないよ。私たちもついていくわよ」
エルフィナが笑った。
「私たち皆、レオルの力に守られてきた。
そのレオルが、たった一人で“神の運命”を背負うなんて、、そんなの、違うもの」
「ありがとう、エルフィナ……」
レオルは静かに空を見上げる。
星は明るく、村の未来を照らしていた。
(神の力なんて関係ない。俺は、、この村を守る。
それだけだ)
続