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第25話 【観測される村と、忍び寄る王都の影】

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 「……《観測開始。対象:神核所持個体。識別番号B05。王都観測局 第三眼》」


 その紙を、レオルはしばらく無言で見つめていた。


 高度な魔術文字と、異常なまでに緻密な陣式。

間違いない、これは“王都の魔導技術”によって生み出された《観測紙》だ。


「レオル、これ……どういうことなの?」


 ミルが不安げに顔をのぞき込む。


「この紙は、王都観測局って組織が使う“記録装置”だろ。俺たちの村……いや、俺の存在そのものが監視対象になったってことだろうな…」


「じゃあ……王都が、ここを見張ってるってこと?」


 セラが眉をひそめ、そっと氷の羽を広げる。


「そうだな…しかも《第三眼》……この組織は“神核の覚醒”や“加護の乱用”を危険視している連中だと思う。最悪の場合、、、」


「殲滅対象になる、ってわけ」


 ルーナが淡々と口にする。


「正直言って、騎士団より厄介だな。あいつらは“加護の使用”じゃなく、“存在そのもの”を消しに来る」


「こりゃもう、戦争の準備かねぇ……?」


 バンザイが木の下で腕を組み、煙草をふかすような仕草をした。


 そんな仲間たちのやり取りを聞きながら、レオルは視線を紙から空へと向ける。


 空に、ほんのわずかな“裂け目”がある。


 まるで、こちらを覗く第三の目のように。


(完全に目をつけられた。今までは未開地の隅だったが……)


「これからは、向こうから“本格的に”仕掛けてくる」


 レオルの言葉に、村全体の空気が引き締まる。


 その時だった。


「レオルっ!」


 丘の上から駆けてきたのは、エルフィナだった。


「森の端で、見知らぬ人物を発見。観測紙と同じ紋章を持っていたわ!」


「もう来たのか……!」


 レオルは即座に指示を出す。


「全員、待機。俺とルーナ、バンザイは現場へ急行する」


「了解ッ!」


 村の西端。草木に紛れるようにして立っていたのは、灰色のローブに身を包んだ“異形の来訪者”だった。


 その顔は仮面で覆われ、肌は蒼白で人間離れしていた。


「……神核個体、直接確認」


 その人物は、まるで感情のない機械のように呟く。


「お前が、観測紙の送り主か?」


 レオルが問うと、仮面の男はわずかに頷いた。


「我ら王都観測局・第三眼。記録と観測を司る機関。君の存在は、、特異点と断定された」


「観測だけで済む話か? 次に来るのはどうせ“排除部隊”だろう」


「……可能性は、否定できない」


 仮面の奥の瞳が、冷ややかに光った。


「だが、我々はただの“目”だ。決定を下すのは、、

上層。王都評議会と、その背後にある“神権機構”」


(やっぱりか……。この世界は、俺たちの存在を脅威と見てる)


「レオル、こいつ、、どうする?サクッと料理しちゃう?」


 バンザイが二刀の柄に手をかける。


「待て。こいつは“戦闘員”じゃない。あくまで観測者だ」


「その通り。私は情報を伝え、判断材料を回収するために来ただけ。君たちの選択によって、王都の対応も変わる」


 レオルは深く息を吐いた。


「選択、ね……」


 その夜、村の広場に全員が集められた。


 レオルは、観測者の言葉と、王都が動き出した意味を全員に伝える。


「逃げるか、戦うか。あるいは、“王都と交渉する”という道もあるかもしれない」


「でも、交渉って言っても、向こうは“神の敵”としてこっちを見てるんでしょ?」


 ミルが心配そうに言う。


「……それでも、無策で潰されるのは嫌だ」


 レオルは静かに答えた。


「ここには、皆の夢がある。家があって、畑があって、笑い声がある。誰にもそれを壊させない」


 その言葉に、誰も異を唱えなかった。


 そして、、、。


「よし、村の周囲に“観測結界”を設置しよう。逆にこっちから“王都”の動きを記録する!」


「おお、それなら俺が……っと、レオル、あんた“創造”で結界、作れるか?」


「ああ、やってみる価値はある」


「私も協力するわ。氷の感知陣なら、侵入者もすぐに分かる」


「影の通路を使って、ルートの確保もできる」


「では、わたくしは王都との交渉資料でもまとめてみようかしら」


 仲間たちが次々と提案を始める。


 レオルは笑った。


「そうだ。どんな敵が来ようと、俺たちの村は“前を向く”」


 空を見上げると、例の裂け目はすでに消えていた。


 だが、、その向こうには、確かに何者かの“目”があった。


(来いよ、王都。“俺たちの本気”、見せてやるよ)




            続

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