第23話 【村に迫る“調律”の真実と、新たな決意】
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戦いの夜が明けた。
黒い裂け目は完全に閉じ、調律騎士団の残骸も霧散していた。村の周囲には[創造]された光壁がまだ薄く残り、レオルはそれを見つめながら肩を落とす。
「……結界の維持、これ以上は無理か、、、。
けど……よく守りきったな」
村は無事だった。誰も欠けることなく、生きて朝を迎えた。
「おはよう! レオル!」
明るく声をかけてきたのはミル。朝日を浴びて、耳がぴくぴく揺れている。
「お前、もう元気になったのか?」
「当然! 村を守る“副村長”だもんねっ!」
その言葉に、レオルもようやく笑うことができた。
他の仲間たちも集まってくる。
バンザイは昨夜の大鍋を片づけ、セラは周囲の氷を溶かしながら、ルーナは警戒の残る目で森を見つめていた。
「……奴ら、また来る可能性あるわ」
「ああ。特に“あいつ”、、調律騎士団の指揮官。
あの時言ってたな、“神核の断片”って」
レオルは、昨夜の言葉を思い出していた。
「貴様の創造の力。やはり“神核の断片”……。だが未完成」
「神核って、神そのものの力……だよね?」とセラが尋ねる。
「うん、でもレオルは“半神”だよね? なのに、核が“未完成”って……どういうこと?」
「んー!……俺自身、まだ分からない。だけど、、」
レオルは空を見上げる。
「“完成”したとき、きっとこの世界に何かが起きる気がする。神の力が、目覚めるだけじゃ済まなかったりして…」
皆が静かになる。
だがそんな沈黙を破ったのは、ふわりと届いた“花の香り”だった。
「この匂い……森の奥から?」
ミルがくんくんと鼻を鳴らす。
そのときだった。
「レオルッッ!」
見張り台から声が響いた。エルフィナが手を振っている。
「森の縁に“誰か”がいるよ! でも……姿がぼやけて、はっきりしないっ!」
全員が一斉に顔を上げた。
レオルはすぐさま仲間に指示を出す。
「俺が行く。ミル、セラ、エルフィナは待機。ルーナ、影からついてきてくれ」
「了解」
「了解!」
そしてレオルが森の縁に辿り着くと、、
そこには、ふわりとしたピンクの髪を揺らす少女が、木の根元に腰かけていた。
淡く発光するようなその姿は、まるで幻のようだった。
「また……見てたのか」
レオルが静かに言うと、少女は目を開ける。
その瞳には、銀の輪が浮かんでいた。
「ふふふ、あなたを観察してると言ってるでしょ…
あなたは、進み始めた。創造の“本質”へと」
「お前、誰なんだ……?」
少女は微笑んだ。
「私は記録者。かつて神に仕え、今は“神々に抗う者”に力を与える者」
「神々に抗う……?」
少女の言葉は穏やかだが、どこか不吉な響きを持っていた。
「レオル。あなたが得た力は、まだ“序章”にすぎない。あなたが創るものは、、いずれ世界そのものを変える可能性を持つ」
「それは……俺が、神の敵になるということか?」
少女は首を振る。
「選ぶのは、あなた。けれど、“創る”ということは、必ず何かを“壊す”ことにもつながる。それを忘れないで」
そう告げると、少女の姿はゆっくりと霧散していった。
残されたのは、地面にぽつんと咲いた一輪の“神花” 伝説に語られる、神の居場所にしか咲かない花だった。
「……まさか、お前が“神界”と関係してる存在だとしたら……」
レオルはそれを手に取り、ゆっくりと村へ戻っていった。
村では皆が彼の帰りを待っていた。
レオルが少女との話しを村のみんなにした。
「レオル、これから、どうするの?」
ミルが問いかける。
レオルは小さく笑って、言った。
「まずは村を強くする。防衛の見直し、魔力供給の確保、そして……“神の敵”が来ても負けない拠点を創る」
それは、これからの戦いの始まりを告げる宣言だった。
続