第64話 【未来からの来訪者 《警告》】
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朝のアルシェリアは、穏やかだった、、
緑の風が草原を撫で、村の広場ではディアボラが洗濯物と格闘し、、
セラがリリムと一緒に庭に水やりをしている。
ミルは木の陰に紛れて静かに本を読み、ノアは日向ぼっこしながら記録帳を開いていた。
「今日ものんびり、平和だねぇ……」
レオルがのびをしようとした、、その瞬間。
ズズズッ……と、空間がひしゃげるような感覚が、村全体に走った。
「レオル」
“誰か”が呼ぶ声がする。
振り返ると、そこには、、、
赤と黒の軍服を纏ったゼクス・ヴェルアイン。
漆黒のマントと仮面の女、ヴェロニカが立っていた。
「よう。久しぶりだな、レオル」
「おう!ゼクス、ヴェロニカ!どうした??」
「レオル…みんなを集められるか?」
彼らの足元に、未来の残滓が微かに漂っていた。
◇◇◇
村の集会場に集まった仲間たち。
ゼクスとヴェロニカは、静かに語り始めた。
「君たちが創り上げた“アルシェリア”は、確かに理想郷だ。
だが……このまま拡大し続ければ、いずれ“世界の均衡”が壊れる」
「んっ?それは……どういう意味だ?」
レオルが尋ねる。
「簡単な話だ」
ゼクスは空を指差す。
「お前たちの“創造”は強すぎる。
新しい村、町、ダンジョン、挙句の果てには“神”まで仲間にした。
……その力は、未来の方向を歪め始めている」
ディアボラが爆乳を揺らして勢いよく立ち上がる。
「ちょっ、ちょっと待ってよ!それって、あたしたちが悪いって言うの!?
みんなが楽しく暮らせる場所を作って、何がいけないのよ!」
ヴェロニカが静かに首を振った。
「貴方たちの行いは、何一つ間違っていない。
でも……“強すぎる光”は強い影を生む、、、
それだけで世界を歪めてしまうのです」
“平和”は、均衡の上に成り立っている。
その均衡を無意識に崩しているのが、アルシェリアの存在、、、ということだった。
ミルが眉をひそめる。
「それじゃ、私たちはどうすればいいの?
レオルが創造を止めればいいの?」
「止めるんじゃない」
ゼクスが首を振る。
「“別れる”んだ、、
君たちが、それぞれの場所で、それぞれの未来を歩むことで、、
力は分散し、未来は“新たな均衡”を保てるようになる」
ルーナが静かに呟く。
「つまり、あんたたちが言いたいのは……みんなで一緒に居続けるのが、一番危険ってこと?」
「そうだ…」
ヴェロニカが頷く。
「君たちが、この村に全てを集中させ続ければ、、
世界がそれに耐えられなくなる」
沈黙が落ちる。
誰もが、言葉を失っていた。
、、、そんな中で、レオルが口を開いた。
「ゼクス、ヴェロニカ、、
その未来ってのは……“絶対”なのか?」
ゼクスの表情がわずかに緩む。
「“このまま”なら、ね」
「あははっ!なら、答えは決まってる」
レオルが笑った。
「俺たちで考えるよ。
ここまで一緒に歩いてきた仲間だ。
“未来”がどうなるかなんて、みんなで決める」
ディアボラががばっとレオルに寄りかかる。
「そうよ!あたしだって、簡単にみんなと“バイバイ”なんて言わないわ♡!」
ファルが肩をすくめ笑う。
「あはは!ま、こうなると思ってたけどね☆」
ノアがパタパタと手帳をめくりながら記す。
「“未来からの警告”……でも“アルシェリアの人々は簡単には折れない”……っと」
ゼクスは、そんな彼らを見て、苦笑した。
「……まぁ、君たちならそう言うと思ってた。
僕たちも未来は君たちに任すことしかできない…」
ヴェロニカが最後に一言だけ残す。
「貴方たちが導く未来を、私たちは記録しに来た。
私たちは“ただの観測者”。
でも、願わくば……良い結末を」
そうして二人は、未来の残滓を残しながらその場を後にした。
◇◇◇
その夜、みんなそれぞれで星を見上げて、未来を考えていた。
そしてレオルは、村の高台で星空を眺めていた。
「あっ♡レオルぅ~~、いたわね〜♡!」
ディアボラが追いかけてくる。
「未来がどうとか、バラバラがどうとかさ……
あたし、ちょっと怖いわよ」
レオルは苦笑しながら、ディアボラの肩を抱く。
「大丈夫だよ。みんなが居る。
そして……俺には、こんな状況だから、お前に伝えたいことがあるんだ」
ディアボラの耳がピクリと動いた。
「え、えええ!? な、なによそれっ!真剣な顔しちゃって…」
「それは、、、ふふっ!“明日”言うよ」
「ちょ、ちょっとぉぉぉ!? レオルのいけずぅぅぅ♡!!」
そんな賑やかな声が、アルシェリアの夜に響いていく。
でも確かに、彼らの“未来”は、静かに動き始めていた。
続
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