第58話 【バンザイの“お料理教室”、まさかの弟子入り志願!?】
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アルシェリアの昼下がり、、
陽射しがじんわりと食堂の庭を照らす。
バンザイは、まな板の上で野菜をリズミカルに刻んでいた。
ふと、気配を感じて振り返る。
そこに立っていたのは、、、
漆黒のマントを纏った未来のヴェロニカ。
「……バンザイ…」
「おう、また珍しい客人だな!どうした。
まさか、現在の昼飯を狩りに来たとか言うんじゃないだろうな?」
「違います。……是非…わたしに“料理”を教えてくれないか?」
その一言に、包丁を握る手がピタリと止まる。
「……は?」
仮面の下の真剣な瞳。
冗談ではない、と一目でわかる“本気”の頼みだった。
「お前さん……料理に興味なんてなさそうだったじゃねぇか」
「……未来の世界で、自分の手で“何かを創る”という選択肢が、いかに貴重かを学びました。
それに、、、」
彼女は一瞬だけ、視線を逸らし、
ぽつりと、しかし確かに言葉を続けた。
「レオルに……お弁当を作ってみたくて。
その、、未来を救ってくれたお礼に…」
「ふふっ……なるほどなぁ」
バンザイは頬をかいて、小さく笑った。
「動機がデカすぎて、断れねぇじゃねぇかよ☆」
我にまかしとけ。バッチリ仕込んでやるよ!」
◇◇◇
ヴェロニカ弟子入り宣言、そして“修行開始”!
「じゃあ今日から、俺の弟子ってことでしごいてやるよ」
「……全身全霊で、お応えします」
“弟子入り”の儀式と称して、バンザイはヴェロニカにエプロンを渡す。
だが、、、
「なんだ?……この、ひよこの刺繍は?」
「あははっ!初心者用だ。俺も昔着てた」
「ふふ……なら、受け入れるとしよう」
仮面の下で、ヴェロニカの表情が微妙に崩れた気がする。
◇◇◇
そしてバンザイの“料理修行”、、地獄の初日
包丁トレーニング、、
「まずは包丁の使い方からだ。指は巻き込むなよ?」
ヴェロニカは静かに包丁を構える、、が。
ザクッ! ゴリッ!パァァァン!!
「おいぃぃぃ!ニンジンが粉砕されてるぞ!」
「はっ?!……無意識に“急所狙い”が発動したようですね…」
「くぉらぁ〜!戦場のクセが出てんじゃねぇ!!」
◇◇◇
卵割りチャレンジ、、
「次は卵だ。いいか?そ〜っと、、コン、ってな」
コン、コン、ゴン、、バシャッ!!バリバリバリ!
「むむっ!……空間ごと割ってしまいましたね」
「ぬおっっっ!!卵割るだけで別空間と繋いじゃったら、料理に向いてねぇから!!」
◇◇◇
塩加減センスゼロ、、
「次は味付けだ。塩はな、優しくぱらっと振るんだ」
ヴェロニカ、塩を構える。
「塩の結界、展開!!」
ザーッ!(塩の嵐)
「くぅおのぉぉぉぉ!!なにが“結界”だ!それじゃ塩田だ!!」
◇◇◇
何度失敗しても、ヴェロニカは決して諦めなかった。
手元が不器用でも、味覚センスがズレていても、彼女の動きには“誠実さ”があった。
「……お前、やる気だけは一人前だな」
バンザイがつい呟く。
「料理とは、刃では斬れない“何か”を創る行為なのですね…」
「まぁ、そういうこったな☆」
バンザイは腕を組みながら、心の中で思う。
(こいつはまだ“愛情ってやつの乗せ方”を知らねぇ。けど、そういう奴が作る飯ほど、味が染みるんだよなぁ)
◇◇◇
夕暮れ時、、
何度も何度も失敗を重ねて、ようやくヴェロニカが自力で卵焼きを完成させた。
形は不格好、色もムラがある。
でも、、、それは確かに、彼女の手で“創った”一品だった。
「……完成しました」
「よし、これが“お前の味”だ!」
ヴェロニカは丁寧に卵焼きを木箱に詰める。
それは“ただのお弁当”ではなく、彼女が選んだ“誰かのために創る”という生き方の証だった。
◇◇◇
夜、レオルが家に戻ると、仮面の少女が立っていた。
「あれっ?ヴェロニカじゃん?どうした?」
「……レオル。これを、召し上がってほしいんだが…」
静かな声で差し出された小さな包み。
「んっ?お弁当?」
「……わたしの“初陣”です」
レオルが一口、卵焼きを食べると、、、
しょっぱい。でも、どこか優しくて、頑張った味がした。
「うんっ!美味しいよ、ヴェロニカ」
その瞬間、仮面の奥で、彼女の表情がほのかに緩んだ。
「……次は、もっと上手く作ります」
レオルは笑って答える。
「あははっ!うんっ!じゃあそのときは、みんなで一緒に食べよう!」
その言葉に、ヴェロニカは静かに、しかし確かに頷いた。
◇◇◇
翌朝、食堂ではバンザイがふんぞり返って笑っていた。
「よぉ、師匠と呼べ、師匠と」
「……パンダ師匠。次は“煮物”を教えてください!」
「おっしゃぁぁぁ!!おらっ!かかってこい!」
こうして、アルシェリアには、、
“無表情だけど情熱全開な料理修行生”が誕生したのだった。
続
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