第53話 【ルーナとミルの、小さなふたり旅】
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アルシェリアの朝、、
陽射しはやさしく、空気は澄みきっていた。
「あっ……今日は、本の返却日だったわね〜」
図書館の前でミルが立ち止まる。
両腕には分厚い書物の束。ルーナはその隣で、静かにその様子を見つめていた。
「ミル、重いのか?少しだったら持ってやってもいいけど」
「い、いえ、だいじょうぶだよ〜、、筋力には……そこそこ、、自信があるんですから☆」
ふとした沈黙。だが、気まずさはない。
彼女たちは“静か”という共通点のもと、じんわりとした信頼を築いてきていた。
「……心配してくれてありがとう。ルーナ☆」
「べっ、別に心配してなんかないよ、、ふん、でも次は頼めよ」
◇ ◇ ◇
図書館での返却を終えたあと、ミルが言った。
「ねぇねぇ、ルーナ。このあと時間あったら……ちょっと、付き合ってもらっていいかしら?」
「んっ?付き合う……?別に暇だからいいけど…」
「この近くに、“幻の薬草”が自生してるって村の人から聞いたんだけど…ちょっとだけ、足を伸ばしてみたいんだよね〜☆」
「わかった…私が護衛してあげるよ」
ミルは小さく笑った。
「あははっ!心強いわ。さすが元・暗殺者さん☆」
「うっ……。それはもう、元だから…」
◇ ◇ ◇
ふたりは草原を歩き、森を抜け、小さな丘を越えていく。
ミルが時折ノートを取り出してはメモをし、ルーナはその背を静かに守る。
そんなルーナの手には、いつのまにか木の枝で編んだ小さな虫よけチャームが。
「……ルーナ、それ、いつの間に……?」
「さっき落ちてた枝で作った。ミル、虫に刺されるの、嫌そうだったから、、いや!本当は自分のために作ったんだけどねー!」
「……っ……ふふっ☆」
ミルの頬がほんのり染まり、微笑む。
「ありがとうね。……そういうところ、ほんと優しいんだよね〜、ルーナって☆ツンデレさんだけど」
「うっ、うるさい。でも……そうなのかな?」
「うん。たぶん、自分ではその優しさに気づいてないだけだよ☆」
ルーナは、少しだけうつむいて笑った。
◇ ◇ ◇
やがて、小さな崖のふもとにて、、、
「あー!あったわ! これよ、これ!
《夜明け草》!」
淡い紫色の花をつけた草。夜明けと共にしか咲かない、幻の薬草。
ミルが駆け寄る。しかし、、その時、、
「え……っ!? 足場が……!」
ぐらり、と岩が崩れる。彼女の身体がふわりと宙に浮いたその瞬間、、、
「ミルっ!」
ルーナが一瞬で影を伸ばし、ミルの身体を引き寄せた。
冷たい影の糸が、やさしくミルを抱きとめる。
「……ルーナ……」
「だいじょうぶ。びっくりしただけ」
「ありがとう……ほんとに、ありがとう……」
ミルはその胸に顔を預けるようにして、小さく呟いた。
「ふふふ……ルーナって、やっぱりかっこいいわね」
「そうか?」
「ええ。どこか、孤高の黒騎士みたいだよ」
「……騎士って、それじゃミルがお姫様ってこと??」
「えっ……!? あ、あ、そうかも……ね?今の状況ならね」
「ふふっ!なら、ちゃんと私が守ってあげてもいいよ」
「~~~っ、や、やっぱりかっこいいんですけど……!」
ミルは赤くなりながら、照れ笑いを浮かべた。
◇ ◇ ◇
帰り道。
ふたりは静かに村へ戻る。
「……ねえルーナ。今日はありがとう。ほんとに」
「気にするな、、私も……楽しかった」
「たまには、またふたりで出かけようね〜☆」
「……うん、どーしてもって言うなら、、いいけど」
ふと、ミルが何かを思い出したように言った。
「あ。そうそう。今日、もうひとつ薬草を採ってきたの。疲労回復に効くのよ。夜にでも、レオルにお茶でも出してあげましょうか?」
「あっ……じゃあ、私も料理手伝うよ!何かあったら大変だからな」
「ふふ。ほんとにもう……完璧な騎士さまだね」
「ふんっ!うるさいよっ! 、、ふふふ」
ふたりの笑い声が、夕暮れのアルシェリアに溶けていった。
◇ ◇ ◇
そしてノアの記録。
「“ルーナとミル、小さな旅の記録。
現在の信頼度•92%”……ふふ、尊いですねぇ~」
続