第52話 【王都を創る者】
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アルシェリアでののんびりした朝。
レオルのもとに、王都から一通の手紙が届いた。
、、、差出人は、エルフィナ王女。
「至急、レオルの力を借りたい」と丁寧な文字が並ぶ。
レオルは手紙を読み終えると、、
「王都に行ってくるよ」と仲間たちに告げ、レオルは少しだけ旅支度をした。
◇ ◇ ◇
馬車で揺られること約半日、、
久々に訪れた王都は、以前と変わらず大きく、人々の声と騎士たちの足音が交差する場所だった。
けれど、、その裏に、何か疲れた空気も漂っている。
「……やっぱり、まだまだ戦の爪痕がまだ残ってるんだな…ってほとんど俺たちがやっちゃったんだけどな…」
石畳の割れ目、崩れかけた街灯、閉じられたままの店舗。
王都は今、新たな時代を迎えようとしていた。
◇ ◇ ◇
王宮の奥、バルコニーから街を見下ろしていたエルフィナが、振り返る。
「あっ?来てくれたのね、レオル」
その声は、どこかほっとしていた。
「おー!来たよ!頼みって……王都のことか?」
エルフィナは「うんっ!」とうなずいた。
「新しい時代の王都を、あなたの“創造”で形にしてほしいの。本当は自分たちで直していこうと思ってたんだけど、中々進まなくてね…王都の人々に、ここに未来があるって示したいのよ」
レオルは少しだけ考え、そして笑った。
「任せろって!オレにできること、全部やるよ!
ただ…イメージと違うってクレームはなしだぞー!」
◇ ◇ ◇
まずは市場。
瓦礫が残っていた商店街の跡地に、レオルは手をかざす。
「[創造]、、《陽光の市》」
ぽう、と光が広がり、そこに現れたのは、木の温もりを感じさせる屋根付きの通りと、清らかな水路のある広場。
子どもたちの笑い声が、どこからか聞こえてくる。
「よしっ!完璧!」
◇ ◇ ◇
次に求められたのは、騎士団の再訓練施設。
「[創造]、、《風の演習場》」
砂埃を防ぐ風の魔法結界を備えた施設が出現。
訓練のたびに起きていた苦情が解消され、団長が思わず感涙する。
◇ ◇ ◇
市民の安らぎの場も、、
「[創造]、、《星の庭園》」
夜になると自然に灯る魔石ランタンのある公園。
恋人たちがさっそくベンチに座り、こっそり手をつなぐ。
◇ ◇ ◇
夜、、、
創造の手を止め、レオルは王宮の一室で休もうとした、、
そこに、エルフィナがふと入ってきた。
「レオル。……ありがとう。今日は、久しぶりに街が笑ってた気がするわ♪」
エルフィナは少し照れながら、でもまっすぐに言った。
「わたしは、、これからこの国を、レオルと一緒に守りたいって思ってる」
「……うん」
レオルは優しく微笑んで、言葉を返す。
「じゃあ、もう少しだけ創ろうか。王都の未来を!」
◇ ◇ ◇
数日後、、、
王都の姿はがらりと変わった。
市場はにぎわい、演習場では騎士たちが汗を流し、公園では市民が歌を口ずさむ。
そして、、
中央広場の中心には、レオルが最後に創造した《未来の塔》がそびえ立つ。
「レオル……これは?」
エルフィナが塔を見上げて聞いた。
「この国が、ここから空へと昇っていけるようにって願いを込めて創ったんだ。オレなりの祈り、かな」
エルフィナはそっと微笑む。
「うんっ!レオルの祈り、受け取ったわ」
風が吹く。
かつて戦火に包まれた王都に、ようやく穏やかな時間が訪れる。
その礎を築いたのは、、
かつての“モンスター”、今は“創造主”レオルだった。
◇ ◇ ◇
夜、王都の宿でレオルが寝ようとすると、、
「おーい、布団に誰かいるなー?」
布団の上で熟睡しているエルフィナが、なぜかぴったりとレオルの布団にくっついて寝ていた。
「いや〜……これはこれでハプニング?王女がここにいちゃまずいだろ?」
苦笑しつつ、隣にベッドを創造するレオル。
「おやすみ、エルフィナ」
その声に、彼女は寝言のように、静かに笑った。
◇ ◇ ◇
エルフィナに別れを告げ、馬車に揺られて帰るレオル。
またアルシェリアに帰って、のんびりとした日々が待っている。
王都の空にも、ちゃんと希望の星が輝いていた。
続