第50話 【レオル、創造の午後】
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今日もアルシェリアは、穏やかな朝を迎えた。
青空の下、緑の草原が風に揺れ、鳥のさえずりが響く。
レオルはいつものように、静かに村を歩き始めた。
「さてと、今日も、、の〜んびりと歩いてみるか」
特に目的もなく、ただぶらぶらと村を一周。
でもそれこそが、レオルにとって何より贅沢な時間だった。
◇ ◇ ◇
まず最初に訪れたのは、子どもたちが遊ぶ広場。
「レオルー!見て見てー!魔法で風船飛ばしたの!」
「おー、すごいな!へへっ!俺もやろ!見てろよ〜」
レオルは笑いながら、ふわっと手をかざす。
瞬間、空に浮かぶカラフルな風船の群れが現れる。
「わぁあぁぁぁあああ!!」
「はははっ!それで遊びな!でも空までは飛んでくなよ~!」
「「「はーい!」」」
笑顔を残し、レオルはまた歩き出す。
◇ ◇ ◇
次は、畑にてミルとセラに遭遇。
「レオル〜☆ちょうど良かったわ。新しいスコップが欲しいんだけど、、」
「じゃ、創ろうか。丈夫で軽いやつ」
手をかざし、魔力が風のように走る。
瞬く間に、柄の長いスコップが現れた。
「相変わらずすごいね……軽いのに、持っただけで頑丈さが伝わってくるよ!」
「ありがと、レオル。……あなたの“創造”って、本当に不思議だわ。物じゃなくて、“思い”が宿ってるように感じるもの」
「はは!そう言ってもらえると、照れるな」
◇ ◇ ◇
さらに歩くと、ノアとファルが読書していた。
「やあ!レオル☆今日は“何もしない日”じゃないのかい??」
「んー!基本何もしたくはないんだけど……
頼まれて創造はしてるけどね〜♪あははっ!」
「ふふ、では記録しときます。“レオル、今日も創造している”」
「んっ?……それ、いつもじゃ?」
ファルはレオルをじっと見つめて、静かに言った。
「君の“創造”には、誰かを守ろうとする設計がいつもある。……それが、僕は好きなんだよね☆」
「……ありがとな、ファル」
◇ ◇ ◇
市場ではバンザイが叫んでいた。
「レオルぅぅぅ!!いい所にきたなっ!
パン焼き窯が壊れたァァァ!!魔力過多で爆裂したァァァ!!」
「バンザイ…それ、絶対にディアボラの焼きそばの残熱だろ……」
「たぶんな……」
レオルは片手をあげ、ふわっと“新しいパン窯”を創造した。
ただの窯ではない。中に火の精霊が宿る、“ふわふわパン専用”窯。
「うおおおおお!!! こいつでパン焼き放題だァァァ!!」
「嬉しそうだな!ま、食いすぎんなよ~!」
◇ ◇ ◇
こうして、村を一周しながら、レオルは今日もたくさんの“笑顔”を創造していた。
夕暮れ。空が茜色に染まり、レオルはひとり、山の奥へと向かう。
「ん〜!たまには、静かなひとりの場所もいいよな☆」
森を抜け、小さな丘の上で立ち止まる。
そして、そっと空間に手をかざした。
魔力が舞い上がり、大地が優しく震える。
湯気が立ちのぼり、石造りの囲いと、木の脱衣所が現れる。
「[創造]•《ひとり温泉》、完成っと☆」
服を脱ぎ、湯に浸かる。
じわ~っと、体がほぐれていく。
「ふぅ……最高だ……」
目を閉じて、星の瞬きを感じる。
ただ湯の音と、虫の声と、風のささやきだけが傍にあった。
◇ ◇ ◇
しばらくして、、、
月が高くなった頃、レオルは温泉を後にして、自室へ戻る。
「さてと、寝るか〜……ん?」
部屋の扉を開けると、、
「すぅ……すぅ……ふふ、いい匂い♡気持ちいい……♡」
そこには、ディアボラがレオルの布団で大の字になって寝ていた。
「……なんで?俺の布団に…?」
布団を占領し、完全に“レオルの香り”に包まれてご満悦の様子。
「……ったく。好き勝手しやがって」
けれどその寝顔は、子どものように無防備で、なんだか愛おしい。
レオルは苦笑しながら、そっと手を空間にかざす。
、、隣に、もう一枚のベッドが現れた。
彼はそちらに潜り込み、ふわっと布団を被る。
「……おやすみ、また明日、ディアボラ」
ディアボラは、寝言のように呟いた。
「むにゃ〜……レオル〜♡……爆裂焼きそば、褒めてくれてありがとぉ……」
「ふふっ……夢の中でもかよっ」
レオルは目を閉じ、ゆっくりと眠りに落ちていった。
◇ ◇ ◇
ノアの記録ノートが、月明かりの下、風で開かれる。
《レオル、本日創造したもの•13点》
《うち、人の笑顔•多数》
《今日の睡眠位置•ディアボラのとなり(非公式)》
ページの隅に、さりげなく書かれた言葉。
《“彼は今日も、平和を創造していた”》
アルシェリアの夜は静かに、更けていく、、、。
続