第49話 【祭りだ!バンザイだ!アルシェリア夏の陣!!】
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アルシェリアの空に、夏が来た。
照りつける陽射しと、湧き上がる入道雲。
畑ではトマトが真っ赤に実り、子どもたちは川辺で水をかけ合って笑っている。
そんなある日、村の中心で、、、
「おーい!みんな!聞いてくれ!!」
パンダ族の戦士•バンザイが、広場の真ん中で叫んだ。
「今回の夏祭り!このバンザイが、責任もって開催するぞォォ!!」
「「「おおおお~~!!」」」
村中から歓声があがる。
「というわけで……準備、全部やるぞォ!!みんな手伝えェェェェェ!!」
「「「ええええ~~~っ!?!?」」」
◇ ◇ ◇
祭り開催決定から三日後、、
バンザイは祭り会場〔予定〕の広場で、汗だくになりながら設営をしていた。
「こ、この提灯は……こっちの柱にくくって……ヨッ……て、落ちたァァァ!!」
ガラガラガッシャーン!!
「大丈夫?バンザイ、手伝うわ」
ミルが足場を整え、影からルーナも忍び寄る。
「足元が甘いな…パンダ!命が惜しければもっと慎重に動け…隙を見せたら、、わかるな!パンダ」
「助けるのか脅すのかハッキリしろぉぉぉい!!」
そこへノアが屋台の図面を持ってきた。
「かき氷屋、射的屋、スライム金魚すくい、あと“爆裂焼きそば”は……ディアボラが担当するそうです」
「爆裂!? ディアボラ!?
それだけはやめろォォォ!村が滅ぶぞ!!」
◇ ◇ ◇
数時間後、村人たちも加わり、、
会場はにぎやかな“祭りの街道”へと姿を変えていた。
レオルは提灯に魔法の灯りを灯しながら、バンザイの背中に声をかける。
「本当に、バンザイが中心になってるんだな。すごいじゃん!」
「ま、我は何でも屋だからな。戦いも、飯作りも、……祭りもな!」
「ふふ、かっこいいね。バンザイ☆」
セラが微笑みながら浴衣姿で現れた。
「おおっ!? セラの浴衣、可愛いな……って、えっ、なんだこの破壊力は……!?」
バンザイは鼻血を噴きそうになりながら天を仰いだ。
◇ ◇ ◇
そして夜、、
ついにアルシェリア夏祭り、開幕!!
「ようこそ、年に一度の“笑顔の祭典”へ!みんな楽しんでけぇぇぇぇい!!」
バンザイの号令とともに、花火が夜空に咲いた。
ドォォォォーーーン!!
紫と金色の花火が、空に大輪を描く。
子どもたちはスライムすくいで歓声を上げ、
大人たちは酒場屋台で盛り上がり、
そして、レオルはディアボラが爆裂せずに焼いた焼きそばを絶賛していた。
「これ……普通にうまいな!?」
「ふふふっ、料理修行の成果よ!!隠し味に“爆乳”入れてますから♡!」
「あははっ!どうやってだよっ!!」
◇ ◇ ◇
そんな中。
バンザイは一歩、屋台の列から離れた丘の上にいた。
村全体を見下ろしながら、ひとり手を腰に当てる。
「ふふふっ!……いい眺めだ!完璧だっ!」
そこに、静かに誰かが近づいてくる。
ファルだ。
「バンザイ〜☆祭り楽しいね〜、、
でもさ、、バンザイなぜ“祭り”を?」
「……」
バンザイは空を見上げた。
「昔、俺の故郷にはな……村なんてなかった。
ただ、戦場と、空腹と、別れと、孤独の連続だった」
「……」
「でも、ここに来てわかったんだ。“誰かと笑う時間”ってのは、最強の魔法なんだってよ」
「……それを、他のみんなにも?」
「そういうこった!祭りはな、心のエネルギーチャージだ」
バンザイはファルの頭をぽんと撫でた。
「お前も今日は、拒絶モードじゃなくて、“笑顔モード”だぜ?」
ファルは少しだけ頬を緩めた。
「あははっ!……了解。笑顔、モード・オン☆
、、なんてね!」
「あはは!よし、いい子だ!」
◇ ◇ ◇
そして夜も更け、、、
祭りの終盤、レオルの魔法で空中に“光の短冊”が浮かぶ。
村人たちが書いた願いが、星のように光を放ち、空へ舞っていく。
《ずっとこの村で暮らせますように》
《大切な人と笑い合えますように》
《次も爆裂しませんように(byディアボラ)》
そして、、、
《みんなが、腹一杯で幸せでありますように》
「バンザイ、これお前が書いたのか?」
「……ああ、そうだよ。へへっ、照れるぜ」
その背中に、レオルが軽く拳を当てた。
「最高の祭りだよ。バンザイ!」
「おう!ありがとうよ!!じゃあ来年はもっと盛大にやるぞォォォ!!」
夜空に最後の大花火が咲いた。
ドォォォォォンーー!!
アルシェリアの夏は、まだまだ熱い。
◇ ◇ ◇
ノアがまたこっそり記録帳に書き込む。
《バンザイ、夏祭り成功•感動度95%》
《アルシェリア住民の幸福度、現在•最高潮》
その横で、ディアボラがかき氷を食べてむせながら呟いた。
「この幸せ……爆裂しそう……♡!」
「ディアボラ…?胸がかき氷でびしょびしょだけど…」
、、、ふたりの大笑い。
でも、爆裂しない夏祭り。
それが、アルシェリアの日常だった。
続