表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

172/196

第43話【ミルとノアの“図書館争奪戦”!?静けさを巡る女の戦い】

見て頂きありがとうございます。励みになりますので、良かったらブックマーク、評価、コメントよろしくお願いします。


 、、朝のアルシェリア。

 澄んだ空気と共に、村の中心にある【叡智の図書館】が、ゆるやかにその扉を開いた。


 ギィィィ……


「ふふん。今日も一番乗り〜、っと♪」


 扉を押し開け、軽やかに入ってきたのは、獣耳を揺らす賢族のモフモフ少女、、ミル。

 村の知識担当であり、アルシェリアの博識番長とでも言うべき存在だ。


 手に抱えているのは、分厚い魔導書。

 彼女が近頃ハマっているのは、【失われた古代術式】の研究。古代魔法と現代魔法の礎となる理論体系を、いちから紐解くという壮大なプロジェクトに夢中なのだ。


「さて、今日は古代アニマル語の“共鳴印”について調べてみようかな……♪」


 ミルは図書館の奥、いつもの窓際の席に座ると、魔導式のランプに火を灯し、静かにページをめくった。


 パラリ……。


 パラリ……。


 、、、その至福の時間は、わずか2ページで終わりを告げた。


バァン!!


「ふぅ、本日も記録更新、開館から27秒で入館完了です」


 吹き飛ぶような勢いで飛び込んできたのは、、

 記録者•ノア。


 ピンク色の長髪が空気を切り裂き、右手にはいつもの魔導ノート、左手には謎の機械装置。

 満面の笑顔で、彼女はミルの静寂をぶち壊した。


「……はっ?はぁぁぁぁ??」


「おはようございます。ミル!今日もいい研究日和ですね。さて、今日は図書館の空間構造をちょっと拝借して、“次元の歪み”を再現してしまおうかと思います…!」


「……はぁぁぁ!? ちょ、ちょっと待ってノア!?

  図書館ってさ静かに本を読む場所ですよね!?

 そもそも空間構造をいじるって何をする気ですか!?」


「ミル…安心して。ちゃんと事前に“可能性の道筋”を20パターン書き出してきましたから!」


「んー?それ、一つも安心材料になってませんからね!?」


◇ ◇ ◇


 【叡智の図書館】

 、、それは、知識と静寂の殿堂。

 だが今、その平穏は記録者ノアの“研究魂”により、戦場と化していた。


 ミルは立ち上がり、ノアの腕を引っ張って入口まで戻そうとする。


「ノア!今日はどうしても集中したい日なんです!せめて午後からに、、、」


「午後?ダメです、ダメです。私、午前中の方がひらめきが来るタイプなんですよ」


「ちょっ!もうっ、聞いてませんよ!! それに“図書館で次元をいじくりながら実験する”って、正気の沙汰じゃないです!」


「いいえ!ミルは頭いいけど、ちょっと堅すぎます。

 もっとこう、ふにゃふにゃっ〜っと、脳みそ柔らかくしないと新しく発見できないこともありますよ!」


「あーもうっ!私は“ふにゃふにゃ”じゃなくて“しっかり”を選びます!!」


◇ ◇ ◇


 やがて、ドタバタの騒ぎを聞きつけて、ひとりの青年が図書館にやってくる。


「おーい、ふたりとも。朝っぱらからなに揉めてんだ?」


 現れたのは、アルシェリアの創造主、、

 レオルだ。


「レオル!!ちょっと聞いてよ!!ノアがまた図書館を実験場にしようとしてて、、、!」


「待ってレオル!私の話も聞いてほしい!ミルったら、“叡智”って言葉にこだわりすぎてて、ちょっと柔軟性がなさすぎます!」


「うーん……どっちも分かる気がするなぁ……」


 レオルは顎に手を当て、少し考えてから、にっこりと微笑んだ。


「じゃあさ、今日は図書館を“二部制”にしようよ。

 午前中はミルの静寂タイム、午後はノアの自由研究タイム。これでどうだ?」


「ううう……妥協案ですけど……レオルの提案なら、受け入れざる得ないんだけどさ、、」


「私の次元の研究は午前のが捗るのですか、、レオルの提案ならば仕方ないですね、、」


 レオルは微笑み、、

「ふたりとも納得してくれて、ありがとう!」


 こうしてまさかの“タイムシェア図書館”制度が誕生したのだった。


◇ ◇ ◇


 、、、午後。


 ミルの静かな研究時間が終わると、図書館内は一変する。


 ノアが何やら小型スピーカーを持ち込み、軽快な音楽を流しながら、浮遊魔導球を展開。何やら空中に方陣を描いている。


「よしよし、次元座標、特異点99……。

 ふふふ、今日は“逆位相空間”を可視化してみようっと!」


「ノアっ!? それ、絶対図書館でやっちゃダメなやつ!!」


 遠くから、ミルの悲鳴が響く。


「大丈夫です。村外れに転送結界貼ってますし、エネルギー源も自家製です」


「そういう問題じゃありませんっ!!」


◇ ◇ ◇


 一方、図書館の外では、、、


 レオルが軒下のベンチに腰かけて、静かにココアをすすっていた。


 隣には、ふきんを肩にかけたバンザイが座り、村人たちの朝食の片付けを終えていた。


「あははっ!村長!なんだかにぎやかになってきたな☆」


「あははっ!まっ、図書館がドッカンいかない限り、平和なもんだろ!」


 ふたりは並んで笑い空を見上げる。

 澄んだ青空。吹き抜ける風。遠くで聞こえる笑い声。


 レオルはふっと目を細めて、呟いた。


「なぁ、バンザイ?……こんな日常が、また戻ってきたんだな」


「おうよ。ありがてぇことだよな!これも全部、“創造主レオル”様々ってな!」


「ふふっ!俺一人じゃ無理だって……

 でも、ただいまアルシェリアって感じだよ!」


 レオルが呟くと、夕暮れの光が図書館の窓ガラスを金色に染め上げる。


 今日もまた、平和で賑やかな一日が、そっとページを閉じようとしていた。



            続

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ