第42話 【ただいま、アルシェリア。未来の彼方から、日常へ】
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あの戦いの日々が、まるで遠い夢だったかのように。
空は青く、雲は白く、風は優しく、、、
アルシェリアの大地は、レオルたちの帰還を何よりも静かに祝っていた。
「ふあぁぁ〜……やっぱり、この空気だよねぇ〜♡」
ディアボラが両手を空に掲げて、大きく伸びをした。
「空気っていうか……魔素濃度も安定してるし、なにより土が生きてる。やっぱりレオルの創造ってすごいよね☆」
ミルが足元の草を撫でるように触れ、土の匂いを確かめる。
「うん。やっぱり、帰ってきたんだね☆」
セラは村の中央、噴水のそばで腰を下ろし、陽光を浴びながら目を細めていた。
そこに駆けてきたのは、リリムだった。
「ディア姉ぇぇぇ〜!」
「おっとと、どうしたのリリム?」
「あのね〜、、こんなこと言っちゃダメってわかってるんだけど…未来のごはん、すっごくまずかった!
あたし、バンザイのアルシェリアごはんがすぐ食べたいの!!」
「あははは、それなら行こう!きっともう、キッチンでバンザイが待ってるよ!」
バンザイの家では、ちょうど釜のふたが開かれ、湯気が立ちのぼっていた。
「ふふん、破滅の未来の意味のわかんねぇキノコなんかとは比べ物にならねぇからな。さぁ、食え食え!」
「うおおっ!?うまい!」「うめぇ……泣けてくる……」「ごはんって……ごはんってこんなに優しかったのか……」「バンザイ最高ぉぉぉ!!」
仲間たちが一斉にテーブルに並び、騒がしくも幸せな昼食が始まった。
◇ ◇ ◇
午後は、みんなバラバラに過ごしていた。
セラは森の小道をひとり歩き、ひんやりとした木陰を楽しみ、ルーナは屋根の上で昼寝をしていたが、カラスに頭を突かれて落ちそうになっていた。
エルフィナは新しい弓の調整をしながら、村の子供たちに弓術の基本を教え、ミルは図書館で、未来で得た知識の整理に追われていた。
ノアは静かにノートを開き、羽ペンを走らせる。
「記録……これが私の役目。でも、、ただ記録するだけじゃない、よね」
ほんのりと頬を染めながら、ふと村の風景を眺める。
ファルはというと、例によって木の上にいた。
「ふぅぁぁー!うん!平和がいちばん。でも僕は関係ない。うん、柄じゃないし……って言ってるのに、なんでお弁当持って来てるんだい?リリム!」
「だって、ファルもお腹空いてると思ったから〜♪」
「あはは……ちょっとだけ……食べてやっても、いいけどさ☆」
リリムはすっかり、村の中心に溶け込んでいた。
とくにディアボラにはもう完全に懐いており、、
「姉」「妹」のような姉妹の仲に。
グロリアの胸にのって昼寝したり、ゼルダに悪戯を仕掛けたり、
イシュとおそろいの服を着て村を歩いたり、、
今までで得た絆が、日常に根付いていた。
◇ ◇ ◇
日も暮れて、、、
温泉でくつろぐレオルの背中に、誰かがぴょこんと飛び込んできた。
「うひゃ〜〜〜やっぱりここの温泉が世界一ぃぃぃぃっ♡!!」
「ディアボラか。はは、未来帰りで疲れてたからな」
「今日もさ、全員で入ろうよ♡!宴しよう宴!未来の話も、今の話もさ!」
その言葉を聞きつけて、続々と湯けむりの中へ現れる仲間たち。
セラ、ミル、エルフィナ、ノア、ルーナ、ファル、リリム、ディアボラ、そして、、、
「みんなと入るお風呂……嫌いじゃない」とぽそりと呟くゼルダまでもがやってきた。
「あははっ!!……そうか。なら、今日は宴だ!」
温泉の端には料理が並び、湯に浸かりながら乾杯が始まる。
「未来を救った英雄たちに、、乾杯っ!!」
どこからともなく、バンザイが酒樽を持って登場し、全員でどんちゃん騒ぎ。
空を見上げれば、満天の星が、、、
未来を、そして今を祝福するように瞬いていた。
◇ ◇ ◇
夜が深まるにつれ、湯のぬくもりと共に、笑い声も静かになっていく。
でも、その笑顔は消えなかった。
「……ただいま、アルシェリア」
レオルの言葉に、誰もが頷いた。
そしてレオルたちの物語はまた、スローライフへと戻っていくのであった。
続