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第32話 【崩れゆく神殿、蘇る名】

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 魔界の再創造から一週間。

 アルシェリアと魔族世界は、穏やかな交流とまどろみの余韻に包まれていた。


 この日も、村の朝はいつものように静かに始まった。

 炊き立てのパンの香りが漂い、子どもたちの笑い声が木立を抜けていく。

 セラは洗濯物を干し、バンザイは朝から大鍋で煮込みを始め、ファルは井戸端で村人と雑談していた。


 そんな日常の中で、、、

 レオルはひとり、村の外れにある畑にいた。


 

 その時、、、いつもの空の“端”が、砕けた。


 

 「……っ!?」


 世界が“鳴った”。

 レオルの五感に、言葉にできないほど異質な“異音”が突き刺さる。

 鳥たちが一斉に飛び立ち、空が震え、雲が逆流した。


 次の瞬間、空の構造そのものが剥がれ落ち、、

 現実の“天井”が見えた。


 それは、“神界”と“この世界”を隔てる透明な境界、、《座標層》の崩壊だった。


 

「こっ、、これは……!」

 ミルが真っ青な顔で叫ぶ。


「上位座標の崩壊……神界が、世界の“上”から降りてくる!?」


 ノアが即座に解析を始め、紙に次々と数式を書き殴る。

「違う……これは座標落下じゃない。“何か”が神界の中枢を砕いて、下へと干渉してきてる……!?」


 

 村中が揺れた。

 風もなく、音もないのに、空間そのものが悲鳴を上げる。


 そのとき、、神殿の奥にある、レオルの“創造の座”が、異常反応を示した。


 神の核である《始まりの祈り》が、勝手に再生を始めたのだ。


 《創造主レオルへ。この記録は“黄昏の時”への予言である》

 《旧き神々が封じた“原初の創造者”が、再び目覚める》

 《その名は、、【ネミア•オルド=アール】、、》

 《創造より前に生まれし破壊者。神すら恐れた始源の存在》


「……ネミア……?」

 レオルの表情が凍る。


「レオル…?知ってるの?」とセラが駆け寄って問うと、レオルはゆっくりと首を振った。


「いいや……でも確かに、俺の記憶の片隅に、、

 俺より前に“この世界”を創った者……

 いや、“創造そのもの”を形にした存在の名だ」


「それって……創造神の先代……?創造の始まり…?」

 ミルが呆然と呟く。


 そのとき、ファルの持つ観測紙が真っ黒に染まり、真紅の警告が浮かび上がった。


《警告•想定外存在、神界最上層より出現。

 現神系権限外より干渉を確認》


《対象は“創造そのもの”に対する再定義を開始。

 既存世界の“消去”が進行中》


 

 そして、空が音を立てて裂けた。


 裂け目から、一筋の黒い閃光が走る。

 

 それはあらゆる魔法防御も神性障壁も貫く、“概念そのものを切り裂く”一撃だった。


「くそっ……!」


 レオルは咄嗟に《時空断絶障壁》を張り、仲間を包み込む。


 空間が焼ける音と、意味を持たぬ光の洪水。

 大地が断層のように割れ、アルシェリアの神殿が、天の眼差しに曝される。


 

 黒き光の中から、“黄金の瞳”がギョロリと姿を現した。


 それは、星々を映す鏡のように冷たく、すべての存在を“評価”する眼だった。


 

 声が響き始める…。


『確認、、現創造主、レオル。

 神性継承不適格、、存在排除を実行する』


『我が名は、ネミア•オルド=アール。

 創造の原典にして、破壊の原点』


『神界第零階層、、、

 “神の外”より、干渉を開始する』


「うっわっ!……マジで来たわね……!」

 ディアボラが額に汗を浮かべながら身構える。


「神の外……それって、冗談じゃなくてこの世界の“外側”じゃないの……!?」


「こりゃ、思ってた以上にヤバイぞ……!」

 バンザイが包丁を握りながら戦闘態勢に入る。

 なぜか料理服のままだ。


「神も創造も、通じない相手ってことだよな……?」


 

 空から落ちる“断罪の柱”、、、


 その影が村を覆った瞬間、グロリアとディアボラが前に出る。


「魔界の厄災、グロリア=エイン。炎雷を統べる魔界最悪の厄災者として、宣言するわ!この新しい世界を壊そうとするものはぶっ潰す!!」


「あははっ♡こちら爆乳魔王ディアボラ! 

アルシェリア、レオル愛好会の誇りにかけて、神だろうがぶっ飛ばすッ!!皆殺しだよ〜♡」


 二人の胸元から、超高圧魔雷と神炎が立ち上がる。


 レオルはひとり、空を見上げて言った。


「あぁーあ、、また戦いだ……

 こっから先は、“神の創造を超える戦い”になるな」


 

 神々の黄昏•ラグナロクが、いま静かに、、始まった。



            続

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