第16話 【謎の旅商人と“契約の指輪”】
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村を拡張し、ダンジョンを少しづつ拠点化してから数日が経った。
村には活気が出始め、皆がそれぞれの役割を見つけ、協力し合っている。
今日も平和な一日になる、、かと思っていた。
その日、レオルは森の外れで何やら異質な気配を感じた。
「んー?……誰かいるな」
警戒しつつ進むと、一本の大木の下で、赤い天幕を張った小さな馬車と、それに寄りかかるようにしてひとりの女性がいた。
長い銀紫の髪。異国の雰囲気をまとう薄紫の衣装。妖艶とも神秘的ともいえる美しさだが、その目は商人特有の計算高さを隠してはいない。
「やぁやぁ、これが噂の“神の村”かしら?
初めまして、放浪の商人“リルメア”と申しますわ」
「旅商人、ね……こんな未開の地に珍しいな。
俺はレオルだ」
「ふふっ、私、嗅覚には自信があるの。成り上がる場所って、案外こういう辺境に転がってたりするものでしょう?」
レオルは彼女の目を見て、一目で“只者ではない”と感じた。
だが敵意はない。ならば、警戒しつつも情報を得るのが得策だ。
「こんな辺境まで何を売りに来た?」
「ふふ、見る目あるわね〜。
今回は“契約”を結ぶ品を持ってきたの」
そう言ってリルメアが取り出したのは、小さな箱。その中には精緻な模様の金属の指輪が六つ、並んでいた。
「これは“契約の指輪”。絆を結ぶ者同士が互いに認め合うことで、魂のつながりを強化するアイテムよ」
「絆の強化、だと?」
「ええ。信頼が高まればスキルの精度も上がるし、場合によっては“共鳴スキル”なんて現象も……うふふ、面白いでしょう?」
レオルは箱を見つめた。
これは……まさに、創造スキルにある「信頼と居場所によって成長する」の条件と噛み合う。
「一ついくらだ?」
「お代はけっこう。ただし……村がもっともっと面白くなったら、また商売しに来ていいかしら?」
「好きにしたらいいよ…でも、お代はちゃんと払うぞ!」
「ふふふっ…お代はいらないって言ってるでしょ…
では…また…」
そう言って、リルメアは指輪を渡し、ウィンクを残して姿を消した。
本当に、風のような女だった。
村に戻ったレオルは、指輪のことを仲間たちに伝えると……
「えっ、それって一緒に指輪つけるってこと!? 結婚!? え!?」
「こ、これは試練です……信頼スキルの実験のため、私が最初に……!」
「ふ、ふん!誰がアンタと絆なんか……でも一応、試してあげてもいいわよっ!」
ミル、セラ、エルフィナ、そしてツンデレ、ルーナまで、なぜか誰もが“最初の契約”を狙ってきた。村が一瞬だけ修羅場と化す。
「いや、落ち着け!全員順番に試すから!」
「「「え~~~~~!?」」」
そんな大騒ぎの末、最初に指輪をつけたのは、腹ぺこで最初の仲間であるミルだった。
スッと、指輪が光を放つ。
【スキル•共鳴リンクLv1】
・パートナーとの距離に応じて、感覚の共有と支援が可能
・スキル使用時、パートナーの行動速度をわずかに強化
「わわっ、なんか頭の中が……レオルと、つながってる感じ……!」
「……すげぇな。ほんとに“絆”の力だな」
その夜、皆が自分の順番を待ちつつ、契約の仕組みについて語り合った。
バンザイはスープを振る舞い、ルーナは
「別に……絆なんていらないけど」と言いつつ、気になる様子で指輪を見つめる。
その光景を、リルメアは遠くの丘から望遠鏡で眺めていた。
「ふふふ、やっぱり面白いわね……あなたたち。
きっと“あの子”の退屈も、紛らわせてくれるかしら」
そうつぶやくと、風とともに彼女の姿は消えた。
この指輪が、新たな力の扉を開くとは、まだ誰も知らない。
続