第29話 【魔界に蠢く禁忌の影】
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魔界の東部に位置する、荒廃した大地。
そこはかつての大戦で焦土となった“黒の裂け谷”と呼ばれる地。
現在その一帯を統べているのは、魔族の別国家、、
《冥王領》
もともとイシュやグロリアたちの故郷とは異なる分派であり、、
古より封印されし“災厄”を、国家の抑止力として密かに温存していた。
その中心地、黒の祭壇にて、、、
「……成功は近い。大災厄ヴェズル•ダールは、我らが支配する」
高位魔族のひとり、深紅の冠クラウナが冷たく笑う。
彼らは、滅びかけた冥王領を再興すべく、、
忌まわしき力を解放し、“かつての魔族の栄光”を取り戻そうとしていた。
「我らが真の魔族たる証明を、見せるときだ」
「創造主とやらが平和を唱えようとも……弱者の幻想よ」
地下に眠る“災厄の心核”が、脈動を始めていた。
◇ ◇ ◇
その頃のアルシェリア。
まだ、穏やかな日々のなかにあった。
「ねえねえレオルー。ダンジョンの新層って、まだ広がってる?」
ミルが朝食を食べながらレオルに訊く。
「ああ。創造の余波か、地脈が自然に広がって、最下層近くに未知の空間が生まれたみたいだな」
「ほうほう、それはまた……ロマンだな」
バンザイが湯気立つ味噌汁を啜りながら笑った。
だが、その話題の最中、、
ダンジョン管理のクリスタルが、突然赤く明滅した。
「これは……侵入者の反応!? しかも、魔族の力反応が混じってる!」
セラが駆け寄って声を上げる。
「なに!? 魔族が勝手にダンジョンに入ったのか?」
「いえ……これは違う。反応が、濁っている……」
ノアが目を細め、記録結晶を起動する。
表示された映像には、、、
アルシェリアのダンジョン第15層で、黒い瘴気に包まれた魔族のようなものが、、
理性のない咆哮を上げながら、ダンジョンの壁を喰らう様子が映っていた。
「こいつ……魔族か? いや、何かが……混ざってる」
レオルの言葉に、ミルが呟く。
「これは……古文書にあった、“魔力暴走体”かもしれないよ!?」
「いわば、封じられた魔族の死体を、禁呪で蘇生させたような存在、、、」
「ちっ!あいつら……蘇らせたのか」
イシュが、低く呟いた。
「まさか?……冥王領が、、?魔界を終わらせるつもりか!」
グロリアが苦い顔をして言う。
その時、空が裂けた。
「空間断層!? 魔界から直通の、次元ゲートです!」
ノアの叫びと同時に、数人の魔族が転移してくる。
「イシュ様!お願いです……助けてください!
アルシェリアの皆さんも助けてください!」
傷だらけの魔族の少女が、膝をついて叫ぶ。
「冥王領が、“災厄”を目覚めさせたんです!
このままじゃ…… アザル=ラグナは…!」
「おっしっ!了解。みんな、準備するぞ」
レオルは立ち上がる。
「ダンジョンで暴れてる奴も、魔界からの災厄も……
全部止めなきゃな!」
「そうだね」セラが微笑み、氷の杖を構える。
「わたしの村は、わたしが守る」
「ふふ。ようやく“本番”だな」
ゼルダが口角を上げる。
「ディアボラ……リリムは置いていけ」
イシュが静かに告げた。
「今度は、私が“魔族の責任”を果たす番だ!」
「いやいやいや、わたしもリリム行くよ!」
ディアボラが拳を鳴らす。
「だってさ、なんだかんだ言って、魔界はうちらのふるさとでしょ〜?そこやられちゃうと…皆殺しにしたくなっちゃうじゃん♡ねっ!リリム♡」
リリムも紫炎のオーラを出して準備万端で頷いた。
こうして、アルシェリア代表隊は再び結成された。
行き先は、、魔界。
仲間の地。だがそこに待つのは、栄光ではない。
過去の罪と、忘れられた災厄。
そして、、、
「レオル…」
ノアがそっと囁いた。
「……今回は、ただの戦いではないかもしれないよ。もし目覚めた災厄が“神の遺産”に触れているなら、、」
「ははっ、、また神核……か」
レオルの眼が、光を灯す。
「だったら、創造主としても見届ける義務があるな。
“新しい魔界”を……築けるかどうかも含めてな」
続